28 / 77
第28話 力の解放
しおりを挟む戦いが始まった。
魔術師と剣士では、こちらが不利だ。
いくら魔術が強力でも、発動までに時間がかかる。
対して剣士は身体能力が高く、油断すれば瞬く間に懐に飛び込まれてしまう。
戦いを左右するのは、いつだって相性だ。
だが、相性では到底超えられないものがある。
それは実力の差だ。
ロベリアはラインハルよりも強い。
地面を蹴り、聖剣を振り上げるまでの動作など、簡単に捉えることができた。
「……ふん」
普通に避ける。
間抜けな顔をするラインハル。
かなりのスピードを出したつもりなのだろうが、こんな簡単に避けられるとは思っていなかったのだろう。
「はあ!」
勢いを殺さずの二撃目。
さすがに回避する暇はないので、硬質化した腕で軌道をずらした。
「おらあああ!」
荒々しい声で叫んでいたが、届かない。
ほとんどの攻撃は空を切り、俺への致命傷にはならなかった。
剣術の腕は上級を遥かに凌ぐものだが、やはり足りない。
今までラインハルは数々の試練を潜り抜けてきた。
しかし、それは仲間たちがいたからこそだ。
一人では何もできまい。
「剣を下ろせ。貴様如きが俺に敵うはずがないだろ」
「くっ……断る!」
事実を突きつけても、ラインハルの猛攻は止まらない。
喋るだけ。そんな単純なことすら容認できないのか、この主人公は。
そろそろ面倒になってきた。
攻撃を避けながら、【凶悪《イーヴィル》な鎖《チェーン》】(腐食効果なし)で奴の両腕を拘束する。
「ぐっ! なんだこれは!」
「貴様の仲間をやったのは俺ではない。ゾルデア自身が暴走を起こし、ジェイクがそれを止めようとして相討ちになったのだ」
「そんな……都合のいい話を信じろというのか?」
「ならば直接本人たちに聞け。すぐに分かることだ」
「あんな状態なんだぞ!? 二度と目を覚まさない可能性だってあるのに!」
信じられないといった顔を向けられる。
周りの団員たちも、俺がジェイクらを貶したと思ったのか、ブーイングが飛び交う。
いや、ジェイクなら目を覚ますさ。
仲間ならそれぐらい信じろよ、なあ、ラインハル。
「俺はお前とは戦わない」
「罪から逃げるのか、この卑怯者!」
聖剣が眩い光を放ち、鎖を断ち切った。
聖剣の力か。やはり手ごわい。
黒魔術に匹敵する代物だ。
瞬きをした瞬間、右の視界で血が飛び散った。
右肩を切られたのだ。
感心している暇はなかった。
「へっ……俺を舐めるなよ」
勇ましい自信。
やってやった感に満ち溢れた表情だ。
これは手も足も出ない強敵にようやく一撃を入れ、流れが変わる展開だ。
「はあああ!」
先ほどとは比べものにならないスピード。
避けるのがやっとだった。それでもラインハルは引かない。
不屈の精神で食らいついてくる。
なぜ、話を聞かない……。
どうして信じてくれないんだ……。
正義感に溢れた主人公なら、ロベリアを理解したっていいじゃないか。
それは俺が――
「……なのか」
「?」
「……俺がロベリアだからなのか!? 悪役だからなのか!?」
もういい。偽りの勇者に手加減など馬鹿らしい。
俺を信じないのなら、否定し続けるのなら、壊してやる。
貴様も、ここにいる仲間どもも、一人残らず壊してやる。
制限《リミッター》をかけていた黒魔力を解放する。
空が曇り、大地が揺れ、この場にいるすべての存在を畏怖させる。
禍々しい力だ。肉体だけでなく精神すら蝕まれそうだ。
だが、俺も覚悟ができたよ、ラインハル。
――言葉ではなく、力で納得させてやる、主人公《ラインハル》。
25
あなたにおすすめの小説
落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!
たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。
途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。
鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒!
素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。
裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件
エース皇命
ファンタジー
前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。
しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。
悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。
ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました
ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公
某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生
さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明
これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語
(基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる