最も嫌われている最凶の悪役に転生ー物語の主人公に殺されるエンドを回避するため善行を積みます!ー

灰色の鼠

文字の大きさ
49 / 77

第49話 君の味方であり続ける

しおりを挟む


 船内にも待ち構えている敵どもがいた。  
 やはりそのほとんどが精霊教団の連中だ。  

 俺を見た瞬間、顔色を変えて逃げ出す者もいれば、「神の恩恵を持つ我々なら勝てる!」と躍起になって襲いかかってくる者もいた。
 だが、片っ端から殺し回った。  

 主に上級の光属性魔術で攻撃してくるが、魔力障壁を貫通するほどの威力はない。  
 硬質化した皮膚にも届かない、火力不足の攻撃だ。  

「……ああ、神よ」  

 戦うことを諦め、神に祈り始める者もいた。だが、何の罪もない人間を殺すことを正当化する連中が信仰する神など、どうせろくでもない神だ。

 命乞いをしようが、家族がいると口にしようが、若かろうが、手を緩める気は一切ない。  
 泣きついて慈悲を求めても、踏みにじるだけだ。  

 殺戮、破壊、殲滅、破滅、死。  
 精霊教団と英傑の騎士団に相応しい、苦しませながら殺す方法で、次々と命を奪う。  
 いつしか、俺の通った道は死体の海と化していた。  

「……」  

 それでも足りない。  
 理想郷で流された血は、こんなものではない。  

 死にゆく人々や子供たちの絶望を想像するだけで、憎しみが膨れ上がる。  
 初めて大切なものを失い、ようやく「必要犠牲」の意味を見出せた。  

 邪魔な芽は、摘むしかない。  

「……?」  

 ある部屋にたどり着く。  
 そこには家具一つなく、何もない空間だった。なのに、人の気配がする。  
 隠れているのか?  

「はあああ!」  

 振り返ると、船の修理に使うような木の板を振り上げ、突進してくる少女の姿があった。  

 魔力を込めて魔術を放とうとした瞬間、その少女が連れ去られたエリーシャだと気づき、手を下ろした。  

「えっ、ロベリア……!」  

 エリーシャもこちらに気づいたのか、動きが止まる。  
 木の板で殴ったところで魔力障壁に弾かれるだけだが、彼女が怪我でもしたら大変だ。  

 ようやくエリーシャを見つけ出した。  
 俺は深く息を吐き、安堵する。  
 だが、両手が血で汚れていることに気づき、言葉に詰まった。  

 この戦いは、理想郷を襲った者たちへの報復のためだ。  
 だが何よりも、エリーシャを取り戻すための戦いだった。  

 エリーシャは震えていた。  
 殺戮の限りを尽くした俺を見て、震えていたのだ。  

「……」  

「……」  

 沈黙が訪れる。  

「人を大量に殺し、救いに来た」と告げたら、拒絶されるかもしれない。

 振り返ると、数えきれないほどの死体が転がっている。
 俺が奪った、命の海だ。

 エリーシャはどんな目に遭おうと、復讐を望むような子ではない。  
 だからこそ、失望されたのかもしれない。  
 こんな悪役に、助けられたくはないだろう。  

「……来てくれるって……信じてた……」  

「エリーシャ……?」  

 エリーシャの瞳から涙がこぼれ落ちていた。  
 何度拭っても止まらない、溢れる涙。  
 それを見て、ようやく気づかされた。  

「……きっと、来てくれるって、信じてたよ……ぐすっ」  

 彼女に近づき、そっと抱きしめる。  
 怖い思いをしたから震えていたのかもしれない。  
 俺は何を勘違いしていたんだ。  

 子供のよう に泣きじゃくるエリーシャの背中を、そっと撫でる。  

「すまない……待たせてしまった」  

 どうしても口下手になってしまう。  
 この世界の俺は、いつだってロベリアだからな。  
 それでも、どんなときでもエリーシャの味方でいることを誓う。  

 たとえ世界を敵に回したとしても――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公 某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生 さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明 これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語 (基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

処理中です...