不遇スキル「わらしべ長者」で殺せぬ勇者 〜魔力ゼロでも無双します〜

カジキカジキ

文字の大きさ
44 / 57

検証の検証

しおりを挟む
 日が暮れて、太陽の光が入らなくなった部屋の中では蝋燭の光だけが室内を照らし、二人の男の影が壁に大きく写し出されていた。
 二人の男は顔を突き合わせ、その日取ったメモを見返しながら話し合っている。

「アベル君の、この詠唱と今までの詠唱では強さは三倍、さらに想像力でイメージを増すとさらに二倍以上の差が表れた訳だが……」

「しかも、最適要素で無い属性でも効果が出ています」

「もしこの詠唱を、前線にいる全ての兵士に覚えさせる事が出来れば。人数はそのままでも攻撃力が三倍から六倍にも上げられる事になる」

「その為には、あの詠唱を全員に覚えさせなければならない訳ですが……」

「それだけでは無いぞ! 今日のは言っても初級魔法の詠唱だ。これが、中級や上級魔法でも同じ事になるのなら、簡単に試す事も出来ないぞ」

 今日の実験を思い出した二人は、興奮して思わず話し声が大きくなる。しかし、大きな問題がある事を思い出し二人の顔が苦虫を噛み潰したようになる、それもそうだ。
 中級魔法の威力は初級魔法の五倍以上、上級魔法になるとその十倍ほどの威力になるが、更に上乗せされるとなれば試す場所はそう多く無い。

「それよりも、この結果をまずは学園長に話して今後の方針を決めてもらわねば」

「今日はもう遅いですから、学園長の元には明日の朝一番に伺う事にしましょう。それと、アベルに教える魔法なんですが……」

 二人の話しは、蝋燭が燃え尽きるまで終わる事は無かった。

◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆

 翌朝、詠唱の文字を書いた紙を持ち。出来るだけ早い方が良いだろうと先生の研究室へと向かっていた僕は、窓の外にガリレオ教授がフラフラ歩いている姿を見つけた。
 職員寮に帰っているのかな? と、あまり気にもせずジルヌール先生の研究室へと急ぐ。

「先生ー! ジルヌール先生、アベルです!」

 扉の外から呼び掛けても返事がない。

 ジルヌール先生も学園内の先生達が住む職員寮に部屋を持っているけれど、殆ど戻らず研究室で寝泊まりしている。
 と言うか、授業時間以外でこの部屋に居ない時を見た事がない。

「せんせーい? 開けますよ」

 開いてないよね、と思いながら扉のノブに手を掛けると、簡単にノブが下がって扉が開いた。

「先生?」

 部屋の中を覗くと、いつもの様に本と書類まみれの部屋の奥のソファーと言う定位置に、うつ伏せで突っ伏して寝ているジルヌール先生の姿があった。

 足元に散らばっている書類や本を避けながら、ジルヌール先生の近くへと進み。

「先生、昨日の詠唱を書いてきたのですけれど」

 そう言うと、まるでばね仕掛けの人形のようにガバッと起きてきて僕が手に持っていた紙を奪い取る。

「……」

 ジッ、と紙に書かれた文字を見つめる先生。

「やはり……読めんな」

 昨日イヅミも言っていた通り、先生達はこの文字を読めない。
 古代語の研究をしている教授先生に見て貰うと言っていたので、取り敢えず先生に紙を渡して僕は教室へと戻って行った。

◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆
 
 アベルが持ってきた詠唱を書き込んだ紙を受け取ったが、やはり私には読めないものだった。
 対応する現在の詠唱と並んで書いてあったので、昨日試した「Breeze」や「Bullet」は分かるが、他の魔法の文字については読めない。

 出来る事なら、何故アベルがこの詠唱を知っているのか、何故この文字を読めるのか、それも追求して聞いてみたい所だが……。
 
 今はこの詠唱を他の学生にどうやって教えるか、昨日手伝って貰った上級部二年のアルフレッド君は素質がありそうだったな。
 彼だと二年生だから実戦に即したこの詠唱を知っていても問題ない、D寮といえ寮長と言う立場も経験しているので人を纏めるのも上手いだろう。

「おっと、もう時間か」

 考え事をしていたら、約束していた時間が近づいていた。アベルから受け取った紙を持ち研究室を出ると、学園長の部屋へ向けて急ぎ足を進めた。

 ・
 ・
 ・

 コンコンコン!

「学園長、ジルヌールです!」

 返事を待って部屋へと入ると、そこには既にガリレオ教授の姿があった。
 明け方に別れたばかりだと言うのに平気そうな……いや、よく見ると目の下にクマがある。
 きっと高級なポーションでも飲んでやり過ごしているのだろう。

「すみません、こんな早い時間に押し掛けてしまって」

 学園長の机の前まで進み、謝罪した後に要件を伝えようとした所。

「構いませんよ、要件についてもガリレオ教授から聞いています。何でも、今までの数倍の効果を発揮する詠唱が発見されたとか? それが事実なら戦況に大きく影響を与える事になりますが、先ずは先生方の意見を聞かせて頂きましょう」

 それからガリレオ教授の説明が始まり、私はアベルが持ってきた詠唱の文字が書かれた紙を学園長に見せて新しい詠唱の可能性を大いに語った。

 一通り二人の熱の籠った説明が終わると。

「ふーむ、そこまで魔法の威力が上がるとなると、訓練場どころか学園内でも試すのは難しくなりますね」

「やはり学園長もそう思われますか。ですので、学園長から騎士団に掛け合って頂いて、南門の外にある演習地の使用許可を貰って欲しいのです」

 学園長は顎に手を当てて少し考え込むと。
 
「ふーむ、いきなり演習地は難しいだろうな。騎士団から誰かを呼んで、最初は学園の訓練場でこの詠唱の凄さを見て貰ってからと言うのではどうだろうか?」

「そうですね、では騎士団への連絡はお願い致します。こちらは学生に話しをつけておきますので」

 学生と聞いて学園長が驚いた顔をするが。

「私が魔法を使って見せても『大魔法使い』だから当然と思われてしまうだけです。普通の学生だからこそ効果があると思われます」

「確かに。では、私は騎士団に連絡を取って日取りを決めるから。ジルヌール君は当日魔法を披露する学生に目星を付けておいてくれよ、くれぐれも失敗なんてしないように」

「分かりました」

 学園長は学生に目星等と言うが、まだ詠唱に成功しているのは二人しか居ないのだ、それに一人は上級部とは言え一年なので、当日魔法を披露出来る学生は一人だけ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...