不遇スキル「わらしべ長者」で殺せぬ勇者 〜魔力ゼロでも無双します〜

カジキカジキ

文字の大きさ
54 / 57

戦場

しおりを挟む
 アルフとジルヌールが最前線に到着すると、戦況は膠着状態になっていた。
 最後に勇者が放った魔法で、魔族側にも結構な被害が出ていた為だ。

 そのタイミングで、勇者と共にいた聖女に回復魔法の詠唱を教えようとしたアルフ。
 その時、魔族の攻撃が再開されピンチに陥る。

 以前、アベルに出会ったイザベッラもこの戦場にいた。今回の戦闘の指揮を取っているのがイザベッラだったのだ。

「勇者がいると聞いたのに、全然出て来やしないじゃないか、怖くなって逃げ出したのかい。お前達、構わないから魔法をドンドン撃ちな!!」

 轟々と鳴り響く魔法の炸裂音、剣と金属の様に硬い皮膚がぶつかり合う音、兵士と魔物の怒鳴り声。

 その騒がしい中にあって、イザベッラの耳にある詠唱の言葉が飛び込んで来た。

meteorめてお

 その詠唱の意味を理解した瞬間。イザベッラは、人間どもは全員死を覚悟して無茶苦茶な作戦に出て来たのだと思った。

 その魔法は、天高くから幾つもの巨大な隕石を飛来させ、大気の摩擦で真っ赤に燃え上がりながら大地に衝突、真下にいた者は押し潰され、周囲にいる者もその破片と衝撃で甚大な被害を巻き起こすと言うもの。

 正直、この戦闘範囲にいる魔物や人間は全て死んでしまう威力のものだ。
 イザベッラも自身の生命力には自信があったが、その巨大殲滅級魔法には死を覚悟した。

 が、いつまで経っても天を震わす轟音が響いて来ない。不思議に思って空を見るが、皮肉にも清々しい程の青空が広がっていた。

 そして気付く、戦場が異常なまでに静かな事に。

 先程まで、お互いの魔法が飛び交っていた筈の戦場に一つの魔法も飛んでおらず。
 他の魔物や部下達が狼狽えうろたえていたのだ。

「どうした! 魔法を撃て!」

「恐れながらイザベッラ様! 魔法が発動致しません!」

「何だと!?」

 イザベッラも試しに上級魔法を詠唱するが、発動する気配が無かった。

「イザベッラ、退いてくれないか?」

 その時、イザベッラの耳に「退け」と言う声が聞こえてきた。戦場を横切りながら歩いてくる人の姿、その姿を見た瞬間『やはりな』と納得し「これは、お前の仕業か?」と聞いていた。

「早く退かないと、弱い魔物は苦しみ始めているぞ」

 イザベッラの言葉には答えないまま、辺りの魔物を指差す人物。ハッとしてイザベッラが周囲を確認すると、確かに戦闘力に劣る個体が苦しみ始めているのが見られた。

「俺が魔法の詠唱をすると、魔法は発動されず因子のみ消費されるんだ、さっきのメテオをもう一度やったらどうなるか、お前なら理解出来るだろ?」

 イザベッラは一瞬で青ざめた、さっきのメテオならば確かに大量の因子が消費されて魔法が発動しないのも当然だ。
 それがもう一回詠唱されるとなると因子がさらに大量に消費され、因子を体内に取り込めなくなった魔物は苦しみ、動けなくなってしまうだろう。
 さらには自分たちですら動けなくなってしまう可能性もある」

 そこまでを考え、この人間の意図を見抜いたイザベッラが大声で叫ぶ!

「全員退け! 今日はここまでだ!」

 ・
 ・
 ・
 
 魔物達が引き上げていく。

 魔法の一斉攻撃が見えたアルフが、もうダメだと覚悟した瞬間、飛んで来ていた魔法が全て消えてしまった。
 何が起こったのか理解する間も無く、気がつくと魔物達が退いて行く姿が見えた。

 取り残された戦場に、二人の人物の姿が見える。
 彼ら? がアルフたちを助けてくれたのだろうか?

 こちらに向かって歩き始めた人物に、兵士の一人が立ち塞がる。何言か言葉を交わすと、兵士は何かを受け取って走り去っていった。

 またその人物が歩き始める、だんだんと近づいてくるその姿を見ているうちに、アルフの目から何故か涙が溢れてくる。

「アベル!」

 以前に見たのと変わらない、飄々とした顔でアルフに気が付いたアベルがいつもの笑顔で答える。

「あれ?! アルフ先輩? 何でこんな所に居るんですか?」

 何でもない事のように戦場の真ん中を歩いて来ておいて、こんな所だなんて、アベルらしい。

「学園は卒業して兵士になったんだよ、それよりも勇者が怪我をして大変なんだ。
 聖女に新しい詠唱を教えようとしていた時に魔族の襲撃に襲われて、死にそうな目に合ってたところだったよ」

 勇者と聞いてアベルの顔色が変わった。

「勇者って、テツが!?」

 慌てて勇者がいるテントへと走り出すアベル。

 アルフもアベルに付いて走りだすが、隣にいるニヤを見て少しホッとしてしまった。

「テツ!?」

 テントの中には怪我人がたくさん並んでいた。勇者の他にも第二王子やその他にもたくさんの兵士が。
 軽傷の者は軽く手当てをしてすぐに戦場に復帰する。ある程度重めで治療が必要な者は前線基地まで連れ帰られる。
 それ以外で此処に残されているのは、かなり重症か亡くなった者のみ。

 アベルはすぐに勇者の元に近寄りたかったが、流石に身元の知れない人間を近寄らせる者は居なかった。

「まて!、その人物は関係者だ、通してくれ!」
 
 そう声を掛けてくれたのはジルヌール先生だった、先生もアベルの姿を見て少しだけ安心した顔を見せていた。

「先生も、何で此処に?」

「私は今、軍務局所属の少佐だ、新しい詠唱を最前線の兵士に教える為にアルフ准士官と共に来ている」

「アルフが准士官!?」

 アベルが驚いたようにアルフの顔を見る。
 
「それで勇者の容態は?」

 アルフが勇者に付いている看護兵に聞くと、さっきから聖女が魔法の詠唱をしているが、発動しなくて困惑していると言う話しだった。

 それを聞いたアベルの話では、アベルが大魔法を使った事でこの辺りの因子がかなり減ってしまい、魔法の発動が不安定になっていると言う事。
 基礎魔法くらいなら使えるが、上級魔法のハイヒールは発動しないのだろうと言う事。

 その事を伝えると、アベルが上級ポーションを取り出して怪我人に使って貰うようにと看護兵に渡す。

 すぐにテツと第二王子にも上級ポーションが使れて、勇者テツの命も取り留めた。隣に寝かされていた第二王子も、見た目の傷は何とか治ったようだ。

 これで二人とも前線基地まで移動させられると言う事になり、アベル達も一緒に付いて前線基地まで戻る事になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...