17 / 33
17
しおりを挟む
一瞬良くない考えに取り付かれた頭をいかんいかんと左右に振り、私はちゃかちゃかと一つめのコンテナのチェックを終えます。
やってる間に気づいたのですが、これはうっかり倉庫全体のコンテナの量を見回して、“ああ~、ここまでやり終えたからあとはこのくらいかあ~”などと確認などしてはいけないやつです。そんなことしたらただでさえ途方もなくしんどい作業なのに、もっと心がどんよりしてしまいます。なるべく自分の両手の範囲だけ、手元だけを見ながらやるべきです。
しかしながら、箱を開け、中の物を出し、無心で宛名を見てまた元通りに直す、という単純作業をしていると、やはり気が滅入ってくるというもの。私は五つ目まで進んだところでうっかり自分に課した禁をやぶって、その場で大きく伸びをしてしまいます。
途端に目に入る灰色のコンテナの山、山、山。
「これ本当に全部中開けるの?正気~~~~~????」
ほらもー!こうなるのが分かってたのに~~!!!
自らの愚行を嘆きながら頭を手で抱えて反り返ると、数m離れたところでしゃがんで黙々と作業をしている我が婚約者、・・・・・・いえ、“元”婚約者の姿が目に入りました。そういえば、先ほど自宅で婚約破棄を言い渡されてからまだ三時間ほどしか経っていないのでした。本当に、今日と言う日は時が怒涛のように流れていきますね。
私は凝り固まった肩をポキポキ動かしながら、マーリンの元へ近づきます。
「あなた、前髪にめっちゃでっかいホコリ付いてますよ。ほらじっとして。取るから」
しかし、眉根をぐっと寄せたマーリンは伸ばした私の手から鬱陶しそうに顔を背け、自分で前髪の汚れを取ろうとします。
「全然取れてないですよ。ほらちょっとじっとしてってば。私が取りますから」
再度手を伸ばそうとすると、マーリンがジロリと私を睨むではありませんか。
「お前はいつもそうやって僕を子供扱いする」
「へえ?」
気が抜けた声が出てしまいます。てか、前髪にそんなホコリつけて凄んだところで全く迫力ないっつうのに。
なんのこっちゃと頭の中を疑問符だらけにしている私ですが、思えばこうやってマーリンが突拍子もないことを言い、私がきょとんとするというシチュエーションが、いつものマーリンのおしゃべりスイッチが入る流れなのでした。
「今日のことは完全に僕が悪いんだ。なのにお前、親切にもこんなところまでついてきておまけにこんな重労働まで進んでやって。なんだか僕が馬鹿みたいじゃないか」
「はい。そうですね」
澱みなく答えると、マーリンがギリリと奥歯を噛み締めます。
「ずるい。ずるいよ。僕はいっつもいっぱいいっぱいなのに。お前ときたらどこ吹く風。何かトラブルがあっても平気な顔で解決していくじゃないか」
「んんん?」
何やら話がよく分からない方向へと進んでいます。
「僕が悩んでうんうん言ってるときも、お前はいつも横で“大丈夫、心配ありませんよ”とか言って優しく微笑んでるし!」
「それは良いことなのでは?」
「お前は何も分かってない!」
マーリンはぷいっとそっぽを向き、とっとと自分の作業に戻ってしまいます。
「マーリン・・・・・・」
今までに味わったことのない感覚が私に襲来します。彼の我がままは今に始まったことではありませんが、何だかこれまでとちょっと様子が違う気がするのです。
やってる間に気づいたのですが、これはうっかり倉庫全体のコンテナの量を見回して、“ああ~、ここまでやり終えたからあとはこのくらいかあ~”などと確認などしてはいけないやつです。そんなことしたらただでさえ途方もなくしんどい作業なのに、もっと心がどんよりしてしまいます。なるべく自分の両手の範囲だけ、手元だけを見ながらやるべきです。
しかしながら、箱を開け、中の物を出し、無心で宛名を見てまた元通りに直す、という単純作業をしていると、やはり気が滅入ってくるというもの。私は五つ目まで進んだところでうっかり自分に課した禁をやぶって、その場で大きく伸びをしてしまいます。
途端に目に入る灰色のコンテナの山、山、山。
「これ本当に全部中開けるの?正気~~~~~????」
ほらもー!こうなるのが分かってたのに~~!!!
自らの愚行を嘆きながら頭を手で抱えて反り返ると、数m離れたところでしゃがんで黙々と作業をしている我が婚約者、・・・・・・いえ、“元”婚約者の姿が目に入りました。そういえば、先ほど自宅で婚約破棄を言い渡されてからまだ三時間ほどしか経っていないのでした。本当に、今日と言う日は時が怒涛のように流れていきますね。
私は凝り固まった肩をポキポキ動かしながら、マーリンの元へ近づきます。
「あなた、前髪にめっちゃでっかいホコリ付いてますよ。ほらじっとして。取るから」
しかし、眉根をぐっと寄せたマーリンは伸ばした私の手から鬱陶しそうに顔を背け、自分で前髪の汚れを取ろうとします。
「全然取れてないですよ。ほらちょっとじっとしてってば。私が取りますから」
再度手を伸ばそうとすると、マーリンがジロリと私を睨むではありませんか。
「お前はいつもそうやって僕を子供扱いする」
「へえ?」
気が抜けた声が出てしまいます。てか、前髪にそんなホコリつけて凄んだところで全く迫力ないっつうのに。
なんのこっちゃと頭の中を疑問符だらけにしている私ですが、思えばこうやってマーリンが突拍子もないことを言い、私がきょとんとするというシチュエーションが、いつものマーリンのおしゃべりスイッチが入る流れなのでした。
「今日のことは完全に僕が悪いんだ。なのにお前、親切にもこんなところまでついてきておまけにこんな重労働まで進んでやって。なんだか僕が馬鹿みたいじゃないか」
「はい。そうですね」
澱みなく答えると、マーリンがギリリと奥歯を噛み締めます。
「ずるい。ずるいよ。僕はいっつもいっぱいいっぱいなのに。お前ときたらどこ吹く風。何かトラブルがあっても平気な顔で解決していくじゃないか」
「んんん?」
何やら話がよく分からない方向へと進んでいます。
「僕が悩んでうんうん言ってるときも、お前はいつも横で“大丈夫、心配ありませんよ”とか言って優しく微笑んでるし!」
「それは良いことなのでは?」
「お前は何も分かってない!」
マーリンはぷいっとそっぽを向き、とっとと自分の作業に戻ってしまいます。
「マーリン・・・・・・」
今までに味わったことのない感覚が私に襲来します。彼の我がままは今に始まったことではありませんが、何だかこれまでとちょっと様子が違う気がするのです。
328
あなたにおすすめの小説
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ
しゃーりん
恋愛
聖女が代替わりするとき、魔力の多い年頃の令嬢十人の中から一人選ばれる。
選ばれる基準は定かではなく、伝聞もない。
ひと月の間、毎日のように聖堂に通い、祈りを捧げたり、奉仕活動をしたり。
十人の中の一人に選ばれたラヴェンナは聖女になりたくなかった。
不真面目に見えるラヴェンナに腹を立てる聖女候補がいたり、聖女にならなければ婚約解消だと言われる聖女候補がいたり。
「聖女になりたいならどうぞ?」と言いたいけれど聖女を決めるのは聖女様。
そしていよいよ次期聖女が決まったが、ラヴェンナは自分ではなくてホッとする。
ラヴェンナは聖堂を去る前に、聖女様からこの国に聖女が誕生した秘話を聞かされるというお話です。
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
貧乏伯爵令嬢は従姉に代わって公爵令嬢として結婚します。
しゃーりん
恋愛
貧乏伯爵令嬢ソレーユは伯父であるタフレット公爵の温情により、公爵家から学園に通っていた。
ソレーユは結婚を諦めて王宮で侍女になるために学園を卒業することは必須であった。
同い年の従姉であるローザリンデは、王宮で侍女になるよりも公爵家に嫁ぐ自分の侍女になればいいと嫌がらせのように侍女の仕事を与えようとする。
しかし、家族や人前では従妹に優しい令嬢を演じているため、横暴なことはしてこなかった。
だが、侍女になるつもりのソレーユに王太子の側妃になる話が上がったことを知ったローザリンデは自分よりも上の立場になるソレーユが許せなくて。
立場を入れ替えようと画策したローザリンデよりソレーユの方が幸せになるお話です。
ぐうたら令嬢は公爵令息に溺愛されています
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のレイリスは、今年で16歳。毎日ぐうたらした生活をしている。貴族としてはあり得ないような服を好んで着、昼間からゴロゴロと過ごす。
ただ、レイリスは非常に優秀で、12歳で王都の悪党どもを束ね揚げ、13歳で領地を立て直した腕前。
そんなレイリスに、両親や兄姉もあまり強く言う事が出来ず、専属メイドのマリアンだけが口うるさく言っていた。
このままやりたい事だけをやり、ゴロゴロしながら一生暮らそう。そう思っていたレイリスだったが、お菓子につられて参加したサフィーロン公爵家の夜会で、彼女の運命を大きく変える出来事が起こってしまって…
※ご都合主義のラブコメディです。
よろしくお願いいたします。
カクヨムでも同時投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる