婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー

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わなわな震える私を、ヴァン教授は穏やかな表情で、まるで親戚の子供でも見るような目で見ています。実際親子ほども歳が離れているわけですが、私と付き合いたいとは本気なのでしょうか。
(・・・・・・いや)
胸が破裂しそうに鼓動が早く打っていました。私はぐるぐると脳みそを回転させます。
(多分この人、・・・・・・というか、“こういう人”が言う“交際”というのは、私が考えているようなのと同じではないのだわ)

険しい顔をしている私を見てどう思ったのか知りませんが、ヴァン教授は聞いてもいないことをぺらぺらしゃべってきます。
「ちなみに私はもう大昔に妻とは死別していて独り身だからその辺の心配はない。定期的に会っている女性は数人いるが、君のためなら彼女らとはもう会わないと約束してもいい」
「ええと、ヴァン教授」
すぅ、はぁと一度深呼吸をし、私はしっかりと教授の目を見ます。
「せ、せっかくのお誘いですが・・・・・・。お断りしますわ」
「君は自分で気づいていないかもしれないがとても価値ある女性だ」
ヴァン教授は全くめげずにぐいぐい迫ってくるではありませんか。めっちゃ強い。朗らかで人の良い紳士にしか見えなかったのに、こんな人だったとは本当に驚きです。
「もしかして、世間で言ういわゆる結婚適齢期までに同世代の男性と出会い、苦労しながらも一生共にするのが正解と思っていないか?長い人生、それだけが歩むべき道ではない。夫となる人物が、その後どんどん上がり調子で出世をしたり、成熟していくとは限らない。現に君は今、婚約者にひどく振り回されてるじゃないか。マーリンくんはあの年齢の割にはとても優秀な研究者であることは間違いない。しかしこの世界で大成するのはほんの一握りだ、そうだろう?ちょっと回り道と思えるかもしれないが、結婚前に一度色んな世間の見識を知っておくのもいいかもしれないぞ。ついでに年上の男の金で贅沢もできる。悪い話じゃないと思うがなあ」

「私は、そういったものを望んではいません」

思ったより自分の口調がきっぱりしていたのに、自分で驚きました。
正直に告白します。ヴァン教授の誘いに、ちょっとぐらっと来てしまったのは事実です。マーリンと上手くやっていく自信がないと思ったばかりですし。確かに教授の言うとおり、これから若手研究者として苦労するであろうマーリンと一緒にいるよりは、すでにそれなりの地位を築いているヴァン教授のところで優雅に生活するほうがいい人生かもしれません。
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