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veritas liberabit vos
viginti unus
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天弥は斎から視線を逸らすかのように俯くと、自分の唇に軽く指を置いた。重ねあった唇の感触を思い出し、あの口付けは告白の返事だと思って良いのだろうかと考える。斎から、告白に対する明確な答えは返ってこなかったため、口付けの意味をどう捉えてよいのか分からなかったのだ。
斎は、助手席で黙って俯いている天弥の様子を確認した。先ほど、昼休みから変なのだと言った。それは、それまで斎の事を特に意識していなかったということになる。昼休みからということは、普段の天弥は何らかの形であの天弥に影響を受けているのだと思われる。
そもそも、あの別人のような天弥は何なのか。単純に思いつくのは、天弥に遊ばれているということだが、普段の天弥の性格からそれは考え難い。仮にそうであったとしても、男が男を誘惑することに得があるとも思えない。次に考えられるのは解離性同一性障害、いわゆる多重人格だが、専門家ではないため判断がつかない。
思考を巡らしているうちに駅が近づき、家路を尋ねる。そして天弥の示す通りに、車を走らせた。
「結構、近所だったんだな」
一軒の家の前で車を止め呟く斎の言葉に、天弥は小首を傾げた。
「近所って……?」
車から降りる斎に天弥も続く。
「俺の家」
斎の返事に、天弥は嬉しそうに笑みを浮かべた。それを見て、天弥の傍に移動した斎はその頭を軽く撫でる。
「今度、遊びに来るか?」
その言葉に天弥は、驚きと喜びが交じり合った複雑な表情で斎を見上げた。
「いいんですか?」
天弥はうるさく騒ぐ心臓を抑えるかのように、抱え込んでいる斎の鞄をさらに強く抱きしめた。
「休みの日は殆ど家にいるから、構わない」
「はい」
自分の気持ちは受け入れて貰えたと思っても良いのか、それとも、ただの生徒として招かれているのか天弥には分からなかったが、それでも斎に少しでも近づけるのは嬉しい事だった。
「じゃあ、また明日な」
別れの挨拶に、天弥は抱きかかえていた鞄を名残惜しそうに差し出した。斎はそれを受け取り、助手席へ放り投げると運転席へと向かう。
ドアの取っ手に手をかけた瞬間、強烈な生臭さが斎の鼻をつく。すぐ横を、襟を立てたトレンチコートに、鍔の広い帽子を目深に被った男がすれ違っていった。まだ夏というわけではないが、それなりの暑さがあるという中、異様とも思える姿の男を、振り返り確認する。
それらの出で立ちに強烈な生臭さ、そして少し上下に跳ねるような歩き方に、斎の中に一つの言葉が浮かぶが、そんなはずは無いとその考えを振り払うかのように、軽く頭を振った。あれも、創作の中の生物であり、現実に存在しているものではない。そして斎は、思い浮かんだ名前をまた記憶の中に埋もれさせる。
斎は天弥へと視線を移した。
「家に入れ」
本に引き続き、創作世界を思わせるものを目の当たりにして、訳の分からない妙な不安を少し感じた。しばしの沈黙の後、天弥は頷き玄関へと向かう。そして、ドアの前で立ち止まると振り返った。それを見て斎は、天弥に向かって軽く手を上げる。すぐに、嬉しそうに手を振り替えしてきた。
天弥が家の中へ入るのを確認した後、斎は車へと乗り込んだ。すぐにバックミラーを確認してみたが、先ほどの男の姿はすでに無かった。それに安堵した斎は、車を発進させ帰路をたどる。
斎は、助手席で黙って俯いている天弥の様子を確認した。先ほど、昼休みから変なのだと言った。それは、それまで斎の事を特に意識していなかったということになる。昼休みからということは、普段の天弥は何らかの形であの天弥に影響を受けているのだと思われる。
そもそも、あの別人のような天弥は何なのか。単純に思いつくのは、天弥に遊ばれているということだが、普段の天弥の性格からそれは考え難い。仮にそうであったとしても、男が男を誘惑することに得があるとも思えない。次に考えられるのは解離性同一性障害、いわゆる多重人格だが、専門家ではないため判断がつかない。
思考を巡らしているうちに駅が近づき、家路を尋ねる。そして天弥の示す通りに、車を走らせた。
「結構、近所だったんだな」
一軒の家の前で車を止め呟く斎の言葉に、天弥は小首を傾げた。
「近所って……?」
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「俺の家」
斎の返事に、天弥は嬉しそうに笑みを浮かべた。それを見て、天弥の傍に移動した斎はその頭を軽く撫でる。
「今度、遊びに来るか?」
その言葉に天弥は、驚きと喜びが交じり合った複雑な表情で斎を見上げた。
「いいんですか?」
天弥はうるさく騒ぐ心臓を抑えるかのように、抱え込んでいる斎の鞄をさらに強く抱きしめた。
「休みの日は殆ど家にいるから、構わない」
「はい」
自分の気持ちは受け入れて貰えたと思っても良いのか、それとも、ただの生徒として招かれているのか天弥には分からなかったが、それでも斎に少しでも近づけるのは嬉しい事だった。
「じゃあ、また明日な」
別れの挨拶に、天弥は抱きかかえていた鞄を名残惜しそうに差し出した。斎はそれを受け取り、助手席へ放り投げると運転席へと向かう。
ドアの取っ手に手をかけた瞬間、強烈な生臭さが斎の鼻をつく。すぐ横を、襟を立てたトレンチコートに、鍔の広い帽子を目深に被った男がすれ違っていった。まだ夏というわけではないが、それなりの暑さがあるという中、異様とも思える姿の男を、振り返り確認する。
それらの出で立ちに強烈な生臭さ、そして少し上下に跳ねるような歩き方に、斎の中に一つの言葉が浮かぶが、そんなはずは無いとその考えを振り払うかのように、軽く頭を振った。あれも、創作の中の生物であり、現実に存在しているものではない。そして斎は、思い浮かんだ名前をまた記憶の中に埋もれさせる。
斎は天弥へと視線を移した。
「家に入れ」
本に引き続き、創作世界を思わせるものを目の当たりにして、訳の分からない妙な不安を少し感じた。しばしの沈黙の後、天弥は頷き玄関へと向かう。そして、ドアの前で立ち止まると振り返った。それを見て斎は、天弥に向かって軽く手を上げる。すぐに、嬉しそうに手を振り替えしてきた。
天弥が家の中へ入るのを確認した後、斎は車へと乗り込んだ。すぐにバックミラーを確認してみたが、先ほどの男の姿はすでに無かった。それに安堵した斎は、車を発進させ帰路をたどる。
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