apocalypsis

さくら

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quaecunque sunt vera

viginti tres

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「いや、なんでもあらへん」
 サイラスは崩れ落ちている絢子を見た。横にいる天弥とは比べ物にならない凡庸さだと思う。容姿も魅力も、そしてその身の内にあるものも。
「ほな、またなー」
 絢子を肩に担ぎ上げ、天弥に向かって声をかけた。
「荷物があって大変でしょう? 送りましょうか?」
「あー、遠慮しとくわ。高くつきそうやし」
 絢子を担いだまま、歩き出す。
「それに、足が無いわけやないし」
「そうですか」
 天弥は、サイラスの背中へと視線を向けた。
「そういえば、祖父は元気なのでしょうか?」
 突然の問いに、サイラスは足を止める。
「気になるんか?」
 サイラスの背中に、天弥は楽しそうな笑みを向ける。
「もちろんです。たった一人の肉親ですから」
 サイラスは、その言葉に思わず拳を握り締めた。挑発されているのは解っているが、どう考えても自分が不利だということも理解している。
「元気やで」
 震える声で答えると、サイラスは再び歩き出した。天弥はその背中を楽しそうな笑みを浮かべながら見送る。
 天弥は辺りを見回した。なぜ自分はここに居るのかと考える。部屋の窓から外を眺めていたはずだと、自分の部屋を見上げた。
 また記憶が飛んでいる。そう思うと不安に襲われ、慌てて家の中へと駆け込んだ。一体自分は何をしていたのか、他に誰かいたのかどんなに考えても思い出せない。
 部屋へと戻るとすぐにベッドの中へ潜り込み、膝を抱え込むように丸くなる。
「先生……」
 不安を紛らわそうと、何度も斎を呼び続けた。

 闇の中に居た。
 なぜ自分がそこに居るのか知らず、ただ生きることが総てだった。そこで生まれたのか、捨てられたのか、攫われて来たのか、真実は知らない。
 親もなく、名前もない。ただ生きるためだけに、何でもした。貴方が光を与えてくれるまで、それが総てだった。名前を与えられ、世界は喜びと光に満ちている事を知った。だから、貴方が望むならどんな事でも構わないと思った。例えそれが、身代わりだったとしても……。

 You give me light. Therefore, you are all of me.

 教室内がざわめいた。朝のホームルームの時間、担任の横に立つ金髪の男子生徒が笑みを浮かべた。
「Cyrus E Astorや、よろしうな」
 そう名乗るとサイラスは、天弥へと視線を向けた。視線が合い、天弥は小首を傾げる。昨日の放課後、斎と話していた人物のように思えた。
「せんせー! 俺、天弥の隣がええんや」
 いきなり天弥を指差し、サイラスが担任に向かって言った。
「昨日、仲良くなったんや。せやから、俺の席、天弥の隣にしてや」
 いつ仲良くなったのかと、天弥は考え込む。考え込んでいるうちに、慣れない留学生活に考慮したのか、担任はサイラスの席を天弥の隣へと決めてしまった。
 天弥は、相手が入れ替わった右隣の席を見る。すぐに、サイラスも視線を向けてきた。
「俺、教科書まだやから、見せて欲しいんやけど」
 天弥は思わず頷く。
「おおきに」
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