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emitte lucem et veritatem
septendecim
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ずっと絢子の為に総てを捧げてきたが、今、新たに想う相手がいる。これからは、天弥を一途に想い、その総てを差し出すのだろう。
最後に会った時に絢子は、斎が自分以外の誰かのものになるのは嫌だと、まるで呪いでもかけるかのようにその口から搾り出した。最後の願いが叶わなかった事を、神楽は素直に喜んでしまう。やはり、弟は可愛いのだ。幸せになって欲しいと願う。
斎は目を覚ますと辺りを見回した。自分の部屋ではない、どこか別の場所だというのは認識できたが、それがどこなのかが分からない。暗い室内は、斎の視力ではどのような様子になっているのか判断が出来ずにいた。
上半身を起こし、僅かに確認できる範囲で、メガネを探す。すぐにベッドサイドの台か机だと思われるところに置かれているのを見つけ、メガネをかけた。改めて、辺りを見回す。
そこは、病室だと思われる場所で、斎以外は誰も居らず、なぜか明けられている窓から、月の光が差し込んでいた。
次に、自分に繋がれている管を辿り、点滴を見つめる。その薬品名を読み、それがオキサセフェム系の抗生物質であることを理解する。なぜ、抗生物質が投与されているのかと考え、記憶を辿る。
混乱する記憶を整理していると、いきなりドアが開き、誰かが部屋へと入って来る気配を感じた。慌てて視線をドアへと向ける。夜目にも鮮やかな金色の髪が目に映る。
「目、覚めたんか?」
驚きの表情と共に、サイラスが口を開いた。そして、そのまま開けられたままの窓へと向かう。
「先生、一週間も目を覚まさへんから、心配したで」
斎はさらに考え込む。サイラスは、手にしたコーラ飲料のペットボトルの蓋を開け、口に含んだ。
「怪我は? 痛まないんか?」
その言葉に、斎の記憶が掘り起こされた。絢子と思われる人物に、理解の範疇を超えた現象とそれによる痛み、自分の腕の中にいた天弥と記憶が明確になる。
「天弥は!?」
意識が無くなったあと、天弥はどうなったのか、不安に駆られ尋ねる。
「無事やで、傷一つあらへん」
答えを聞き、斎は胸を撫で下ろす。その様子にサイラスは、斎の行為は無駄だったと思うのだが、それを口にはしなかった。斎が庇わなくとも、天弥は傷一つ負う事はなかったのだ。
「せやけど、先生が目を覚まさへんから、ずっと泣いとったで」
斎の脳裏に天弥の泣き顔が浮かび、胸が痛む。深く考え込んで落ち込んでいることは、簡単に予想が出来る。
「学校へは行っているのか?」
「天弥? 一応来とるけど、心ここに在らずって感じやな」
手にしたペットボトルの蓋を閉めながら、答えた。
「そうか……」
斎にとっては、つい先ほどまで天弥と一緒にいたのだが、天弥にとっては一週間という時間が過ぎている。その間、どう過ごしていたのかと激しく気に掛かる。
「それより、傷、痛まないんか?」
先ほども同じ事を聞かれた。何か突っ張るような感じはするが、特に痛みはない。後は、何か危険を知らせる時のような、首の後ろがチリチリとする感触が微かに続いているだけだ。何度も聞くほどの状況だったのだろうかと考える。
「特に痛みはない」
最後に会った時に絢子は、斎が自分以外の誰かのものになるのは嫌だと、まるで呪いでもかけるかのようにその口から搾り出した。最後の願いが叶わなかった事を、神楽は素直に喜んでしまう。やはり、弟は可愛いのだ。幸せになって欲しいと願う。
斎は目を覚ますと辺りを見回した。自分の部屋ではない、どこか別の場所だというのは認識できたが、それがどこなのかが分からない。暗い室内は、斎の視力ではどのような様子になっているのか判断が出来ずにいた。
上半身を起こし、僅かに確認できる範囲で、メガネを探す。すぐにベッドサイドの台か机だと思われるところに置かれているのを見つけ、メガネをかけた。改めて、辺りを見回す。
そこは、病室だと思われる場所で、斎以外は誰も居らず、なぜか明けられている窓から、月の光が差し込んでいた。
次に、自分に繋がれている管を辿り、点滴を見つめる。その薬品名を読み、それがオキサセフェム系の抗生物質であることを理解する。なぜ、抗生物質が投与されているのかと考え、記憶を辿る。
混乱する記憶を整理していると、いきなりドアが開き、誰かが部屋へと入って来る気配を感じた。慌てて視線をドアへと向ける。夜目にも鮮やかな金色の髪が目に映る。
「目、覚めたんか?」
驚きの表情と共に、サイラスが口を開いた。そして、そのまま開けられたままの窓へと向かう。
「先生、一週間も目を覚まさへんから、心配したで」
斎はさらに考え込む。サイラスは、手にしたコーラ飲料のペットボトルの蓋を開け、口に含んだ。
「怪我は? 痛まないんか?」
その言葉に、斎の記憶が掘り起こされた。絢子と思われる人物に、理解の範疇を超えた現象とそれによる痛み、自分の腕の中にいた天弥と記憶が明確になる。
「天弥は!?」
意識が無くなったあと、天弥はどうなったのか、不安に駆られ尋ねる。
「無事やで、傷一つあらへん」
答えを聞き、斎は胸を撫で下ろす。その様子にサイラスは、斎の行為は無駄だったと思うのだが、それを口にはしなかった。斎が庇わなくとも、天弥は傷一つ負う事はなかったのだ。
「せやけど、先生が目を覚まさへんから、ずっと泣いとったで」
斎の脳裏に天弥の泣き顔が浮かび、胸が痛む。深く考え込んで落ち込んでいることは、簡単に予想が出来る。
「学校へは行っているのか?」
「天弥? 一応来とるけど、心ここに在らずって感じやな」
手にしたペットボトルの蓋を閉めながら、答えた。
「そうか……」
斎にとっては、つい先ほどまで天弥と一緒にいたのだが、天弥にとっては一週間という時間が過ぎている。その間、どう過ごしていたのかと激しく気に掛かる。
「それより、傷、痛まないんか?」
先ほども同じ事を聞かれた。何か突っ張るような感じはするが、特に痛みはない。後は、何か危険を知らせる時のような、首の後ろがチリチリとする感触が微かに続いているだけだ。何度も聞くほどの状況だったのだろうかと考える。
「特に痛みはない」
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