87 / 236
suggestio veri, suggestio falsi
tres
しおりを挟む
今回の事で、天弥と斎をセットで確保しなくてはならなくなってしまった。激しく気が滅入り心の中でため息を吐く。
サイラスの様子を見て斎は、何か不本意な状況にでもなっているのかと考える。
「そうか」
聞いたところで答えるわけでもなしと、その話題を終える。とりあえず優先すべきは、今、自分が置かれている状況をどうするかだ。
「そんなことより先生、退院させて貰えそうなんか?」
いきなり変えられた話題に、斎は思わずジッとその顔を見つめる。一瞬、なぜ自分が今おかれている状況を知っているのかと思ったが、サイラスなら有り得ると考える。
「さあ……」
実際、何の痛みもなければ傷跡もない。当初、どの程度の状態だったのかは分からないが、一週間かそこらでこの状況というのは、さすがにおかしいと思う。医者が不審を抱いているのもよく分かる。
「ま、そうやろな……」
サイラスが何かを考え込む。
「それについては、こっちでなんとかするわ」
意外な言葉に、思わず面食らう。昨夜の事といい、一体何がどうしたのかと思い悩む。これは、今自分に起きている状況と、何か関係があるのか思索する。
「何が目的だ?」
疑問が口を吐いて出る。
「んー、勘違いされても仕方がないんやけど、俺、先生の敵とちゃうで」
その言葉に、敵でなければ何なのかと、思わず問い詰めたくなる。目的も行動も正体も、何も分からない相手なのだ。疑うのは当然である。とはいえ、サイラスに関してだけであれば、根っからの悪人ではなさそうに思える。
「敵じゃなかったら何だというんだ?」
答えるはずはない、そう思いつつもつい質問を投げかけてしまう。
「そやな……、味方ともちゃうし……」
サイラスは拳を顎に当てながら考え込む。
「なんやろな?」
何なのかは、自分が知りたいのだ。味方でないのは確かだが、だからといって敵だという、単純なものでもなさそうだ。
「まーあれや、俺も色々と複雑なんや」
そう言うと、サイラスは椅子から立ち上がる。
「お邪魔やと思うし、そろそろ帰るわ」
サイラスはドアへと向かい、ドアノブに手を掛けようとした時、前触れも無くそれが開く。そこから、まだ少し赤い目をした天弥が顔を覗かせた。天弥は、目の前に立つサイラスに視線を向ける。
「そや、先生」
サイラスは手を伸ばし、天弥の肩を抱き寄せる。
「さっき俺ら、恋人同士に間違われたんやで」
そう言いながら、面白そうに斎に視線を向ける。だが、特に斎の様子に変化はない。面白くない、そう思いサイラス言葉を続ける。
「お似合いやって言われたよな?」
今度は天弥に視線を向け、そう声をかける。天弥は困った表情をし、どう対応してよいのか分からずに、そのまま俯く。
「天弥」
斎に名を呼ばれ、天弥顔を上げると真っ直ぐにその声に向かった。サイラスの手が、空しく重力に引かれ落ちる。
「あほらし……」
駆け寄ってきた天弥を抱きしめると、斎はサイラスに視線を向けた。その様子に肩をすくめ、サイラスは二人に背を向ける。そしてドアノブに手をかけると、何かを思いついたかのように手をとめ、振り向いた。
「あー、先生、何か欲しいもんあるか?」
サイラスの様子を見て斎は、何か不本意な状況にでもなっているのかと考える。
「そうか」
聞いたところで答えるわけでもなしと、その話題を終える。とりあえず優先すべきは、今、自分が置かれている状況をどうするかだ。
「そんなことより先生、退院させて貰えそうなんか?」
いきなり変えられた話題に、斎は思わずジッとその顔を見つめる。一瞬、なぜ自分が今おかれている状況を知っているのかと思ったが、サイラスなら有り得ると考える。
「さあ……」
実際、何の痛みもなければ傷跡もない。当初、どの程度の状態だったのかは分からないが、一週間かそこらでこの状況というのは、さすがにおかしいと思う。医者が不審を抱いているのもよく分かる。
「ま、そうやろな……」
サイラスが何かを考え込む。
「それについては、こっちでなんとかするわ」
意外な言葉に、思わず面食らう。昨夜の事といい、一体何がどうしたのかと思い悩む。これは、今自分に起きている状況と、何か関係があるのか思索する。
「何が目的だ?」
疑問が口を吐いて出る。
「んー、勘違いされても仕方がないんやけど、俺、先生の敵とちゃうで」
その言葉に、敵でなければ何なのかと、思わず問い詰めたくなる。目的も行動も正体も、何も分からない相手なのだ。疑うのは当然である。とはいえ、サイラスに関してだけであれば、根っからの悪人ではなさそうに思える。
「敵じゃなかったら何だというんだ?」
答えるはずはない、そう思いつつもつい質問を投げかけてしまう。
「そやな……、味方ともちゃうし……」
サイラスは拳を顎に当てながら考え込む。
「なんやろな?」
何なのかは、自分が知りたいのだ。味方でないのは確かだが、だからといって敵だという、単純なものでもなさそうだ。
「まーあれや、俺も色々と複雑なんや」
そう言うと、サイラスは椅子から立ち上がる。
「お邪魔やと思うし、そろそろ帰るわ」
サイラスはドアへと向かい、ドアノブに手を掛けようとした時、前触れも無くそれが開く。そこから、まだ少し赤い目をした天弥が顔を覗かせた。天弥は、目の前に立つサイラスに視線を向ける。
「そや、先生」
サイラスは手を伸ばし、天弥の肩を抱き寄せる。
「さっき俺ら、恋人同士に間違われたんやで」
そう言いながら、面白そうに斎に視線を向ける。だが、特に斎の様子に変化はない。面白くない、そう思いサイラス言葉を続ける。
「お似合いやって言われたよな?」
今度は天弥に視線を向け、そう声をかける。天弥は困った表情をし、どう対応してよいのか分からずに、そのまま俯く。
「天弥」
斎に名を呼ばれ、天弥顔を上げると真っ直ぐにその声に向かった。サイラスの手が、空しく重力に引かれ落ちる。
「あほらし……」
駆け寄ってきた天弥を抱きしめると、斎はサイラスに視線を向けた。その様子に肩をすくめ、サイラスは二人に背を向ける。そしてドアノブに手をかけると、何かを思いついたかのように手をとめ、振り向いた。
「あー、先生、何か欲しいもんあるか?」
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる