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サイラスは慌てて立ち上がり、天弥の後を追う。教師が前方のドアから入ってくるのと同じタイミングで、天弥は後方のドアから教室を飛び出した。続いて、サイラスも教室を飛び出していく。教師の呼び声が背後で聞こえたが、サイラスは構わず天弥を追う。
もし、サイラスに好きだと言っていたのなら、それを斎が聞いていたとしたのなら、捨てられたという意味が分かる。記憶のない時、自分は何をしているのかと、今まで以上の不安が天弥の中で増す。
「ちょー待てや」
すでに生徒の姿が見当たらない、静かな渡り廊下でサイラスに腕を掴まれ、天弥は立ち止まる。
「いきなり、どないしたんや?」
天弥がゆっくりと振り向き、涙を堪えた瞳でサイラスを見る。
「僕、先生が好きなんです」
小さく呟くようにそう言うと、天弥は俯いてしまう。重力に引かれ、天弥の瞳から涙が零れ落ちる。
「知っとるで」
いつもと違う天弥の反応に、やはり土曜日に何かあったのかと考える。
「だから……」
最後まで言葉が続かず、天弥の瞳から涙が溢れ続ける。
「さっきのやったら、冗談や」
天弥は顔を上げた。伝い落ちる涙を拭いもせず、サイラスを見つめる。
「冗談……? 本当に?」
真っ直ぐに自分を見つめる天弥を、サイラスは見つめ返す。
「あれぐらいのやったら、いつも言っとるやろ?」
天弥は力なく頷く。
斎のために涙を流す天弥の綺麗な顔を、サイラスはジッと見つめた。男だと分かってはいても見惚れ、心を揺さぶられる。もし、天弥が女の子だったら、どんな事をしてでも自分のものにした。そうすれば、羽角を祖父と呼ぶことが出来る。間接的にではあるが自分の望みが叶うのだ。静かに手を伸ばし、サイラスは天弥を落ち着かせるようにその頭を撫でた。
自分を抑えられずに教室を飛び出してきたが、斎に何と言うつもりだったのかと考えると、天弥は打ち沈む。なぜ、自分は記憶が無くなるのか、無くなっている間に何をしているのか知りたいと切望する。
「何をしている?」
突然聞こえた声に、二人は同時に視線を向けた。
「先生……」
目の前の斎の姿に、天弥は驚いたように呟いた。
「先生こそ、何しとるん?」
サイラスは挑戦的な視線を斎に向ける。
「俺は、この時間は空きだ」
天弥が気になり、一目だけでもと思い教室へ向かっている途中だった。授業中のはずの天弥とサイラスの姿が、二つ上の渡り廊下に見え、慌ててここまで来た。たどり着くと、泣いている天弥の腕を掴み、その頭を撫でているサイラスの姿が、斎の目に飛び込んできた。
「で? 何をしていたんだ?」
斎の苛立ちが、痛いほど伝わってきた。
「構って欲しくて、ちょっとからかったら泣かせてしもうたんや」
「本当か?」
斎は天弥へと視線を移し尋ねる。天弥は静かに頷いた。一瞬の沈黙の後、斎が口を開く。
「とりあえず、今は授業中だ。教室に戻れ」
斎は平静を装いながら、目の前の二人へと声を掛ける。本当は、天弥の腕を掴むサイラスの手を、今すぐにでも振り払いたいという衝動を必死で押さえ込んでいるのだ。
もし、サイラスに好きだと言っていたのなら、それを斎が聞いていたとしたのなら、捨てられたという意味が分かる。記憶のない時、自分は何をしているのかと、今まで以上の不安が天弥の中で増す。
「ちょー待てや」
すでに生徒の姿が見当たらない、静かな渡り廊下でサイラスに腕を掴まれ、天弥は立ち止まる。
「いきなり、どないしたんや?」
天弥がゆっくりと振り向き、涙を堪えた瞳でサイラスを見る。
「僕、先生が好きなんです」
小さく呟くようにそう言うと、天弥は俯いてしまう。重力に引かれ、天弥の瞳から涙が零れ落ちる。
「知っとるで」
いつもと違う天弥の反応に、やはり土曜日に何かあったのかと考える。
「だから……」
最後まで言葉が続かず、天弥の瞳から涙が溢れ続ける。
「さっきのやったら、冗談や」
天弥は顔を上げた。伝い落ちる涙を拭いもせず、サイラスを見つめる。
「冗談……? 本当に?」
真っ直ぐに自分を見つめる天弥を、サイラスは見つめ返す。
「あれぐらいのやったら、いつも言っとるやろ?」
天弥は力なく頷く。
斎のために涙を流す天弥の綺麗な顔を、サイラスはジッと見つめた。男だと分かってはいても見惚れ、心を揺さぶられる。もし、天弥が女の子だったら、どんな事をしてでも自分のものにした。そうすれば、羽角を祖父と呼ぶことが出来る。間接的にではあるが自分の望みが叶うのだ。静かに手を伸ばし、サイラスは天弥を落ち着かせるようにその頭を撫でた。
自分を抑えられずに教室を飛び出してきたが、斎に何と言うつもりだったのかと考えると、天弥は打ち沈む。なぜ、自分は記憶が無くなるのか、無くなっている間に何をしているのか知りたいと切望する。
「何をしている?」
突然聞こえた声に、二人は同時に視線を向けた。
「先生……」
目の前の斎の姿に、天弥は驚いたように呟いた。
「先生こそ、何しとるん?」
サイラスは挑戦的な視線を斎に向ける。
「俺は、この時間は空きだ」
天弥が気になり、一目だけでもと思い教室へ向かっている途中だった。授業中のはずの天弥とサイラスの姿が、二つ上の渡り廊下に見え、慌ててここまで来た。たどり着くと、泣いている天弥の腕を掴み、その頭を撫でているサイラスの姿が、斎の目に飛び込んできた。
「で? 何をしていたんだ?」
斎の苛立ちが、痛いほど伝わってきた。
「構って欲しくて、ちょっとからかったら泣かせてしもうたんや」
「本当か?」
斎は天弥へと視線を移し尋ねる。天弥は静かに頷いた。一瞬の沈黙の後、斎が口を開く。
「とりあえず、今は授業中だ。教室に戻れ」
斎は平静を装いながら、目の前の二人へと声を掛ける。本当は、天弥の腕を掴むサイラスの手を、今すぐにでも振り払いたいという衝動を必死で押さえ込んでいるのだ。
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