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祖父から贈られた本を手にしたところまでは記憶にある。その次の記憶は、斎と抱き合いキスをしていた。身体が溶けてしまいそうなほどの快楽に、思考が真っ白になった。
もし、記憶の無い時の自分と斎に何か特別な関係があったとしたら、そう考えると天弥の心が不安を訴え始める。斎を想う時のような甘く切ない痛みではなく、全身の血液が一気に引き、激しい不安を訴えるかのように鼓動が大きく苦しくなる。
斎にとって、自分はどういう存在なのか。そう考えると、恐怖で身体が小さく震えだす。自分の考えを何度も振り払おうとしたが上手くいかず、放課後まで不安や恐怖と戦い続ける事になる。
斎は、授業を終えると職員室で早急に用を済ませ、真っ直ぐに教科室へと向かった。五時間目の天弥とサイラスの事は気になるが、それについて何かを問うつもりは無い。気にならないと言えば嘘になるが、そんな事で議論をして、天弥との貴重な時間を潰してしまう方が無意味だと思える。
教科室のドアに手をかけ、ゆっくりと開く。すでにいつでも学校を出られる状態で、天弥を待とうと考えていた。開いたドアの向こうにある姿を見つけ、斎は思っていたよりも早くホームルームが終わったのだと知る。
机の上に置いてあった本を手に取り、ページを捲るその端麗な姿に斎は見惚れる。ドアを閉めるとすぐに鍵へと手が伸びた。金属音と共に、部屋が密室になったことを確認すると、足を踏み出した。
「天弥」
名を呼ばれ、天弥はゆっくりと顔を上げ斎へと視線を向ける。手にした本を机に置き、妖美な微笑を斎へと向けた。距離が縮まると斎は震える手を伸ばし、一気に天弥の身体を抱き寄せた。
自分の心を奪った存在だと、一目で理解した。強く抱きしめられながら、天弥は両手を伸ばし、斎のメガネを外す。すぐに、お互いの唇が重なる。天弥は両腕を斎の首に絡めると、ゆっくりとその目を閉じた。
何度も自分を求める斎の唇に、天弥は総て応えていく。激しかった斎の口付けが落ち着きを見せだした頃、その唇は天弥の首筋へと移動していく。
「先生?」
艶のある天弥の声が、斎の耳をくすぐる。
「俺のものになるって約束だ」
斎は唇を離し、天弥の身体を抱き上げた。
「違いますよ。先生が僕のものなんです」
楽しそうに天弥が答える。
「どっちでも構わない」
天弥が自分のものだろうが、自分が天弥のものだろうが、今の斎にとってそれは、瑣末な事でしかなかった。
「今、ここでですか?」
ソファーの上に身体を置かれながら尋ねる。
「次、会える保証はあるのか?」
会えるという確実な保証があるのなら、それまで待つことは出来るかもしれない。斎自身、さすがにここでは気が引ける。
「分かりません」
天弥が答えると同時に、斎はその唇を自分の唇で塞いだ。天弥の唇を貪りながら、斎はそのワイシャツのボタンに手を掛ける。ボタンが一つ外れると、斎は天弥の唇を開放した。
今度は首筋に唇を落とし、次々と残ったボタンを外していく。
「et dimitte nobis debita nostra, sicut et nos dimisimus debitoribus nostris」
もし、記憶の無い時の自分と斎に何か特別な関係があったとしたら、そう考えると天弥の心が不安を訴え始める。斎を想う時のような甘く切ない痛みではなく、全身の血液が一気に引き、激しい不安を訴えるかのように鼓動が大きく苦しくなる。
斎にとって、自分はどういう存在なのか。そう考えると、恐怖で身体が小さく震えだす。自分の考えを何度も振り払おうとしたが上手くいかず、放課後まで不安や恐怖と戦い続ける事になる。
斎は、授業を終えると職員室で早急に用を済ませ、真っ直ぐに教科室へと向かった。五時間目の天弥とサイラスの事は気になるが、それについて何かを問うつもりは無い。気にならないと言えば嘘になるが、そんな事で議論をして、天弥との貴重な時間を潰してしまう方が無意味だと思える。
教科室のドアに手をかけ、ゆっくりと開く。すでにいつでも学校を出られる状態で、天弥を待とうと考えていた。開いたドアの向こうにある姿を見つけ、斎は思っていたよりも早くホームルームが終わったのだと知る。
机の上に置いてあった本を手に取り、ページを捲るその端麗な姿に斎は見惚れる。ドアを閉めるとすぐに鍵へと手が伸びた。金属音と共に、部屋が密室になったことを確認すると、足を踏み出した。
「天弥」
名を呼ばれ、天弥はゆっくりと顔を上げ斎へと視線を向ける。手にした本を机に置き、妖美な微笑を斎へと向けた。距離が縮まると斎は震える手を伸ばし、一気に天弥の身体を抱き寄せた。
自分の心を奪った存在だと、一目で理解した。強く抱きしめられながら、天弥は両手を伸ばし、斎のメガネを外す。すぐに、お互いの唇が重なる。天弥は両腕を斎の首に絡めると、ゆっくりとその目を閉じた。
何度も自分を求める斎の唇に、天弥は総て応えていく。激しかった斎の口付けが落ち着きを見せだした頃、その唇は天弥の首筋へと移動していく。
「先生?」
艶のある天弥の声が、斎の耳をくすぐる。
「俺のものになるって約束だ」
斎は唇を離し、天弥の身体を抱き上げた。
「違いますよ。先生が僕のものなんです」
楽しそうに天弥が答える。
「どっちでも構わない」
天弥が自分のものだろうが、自分が天弥のものだろうが、今の斎にとってそれは、瑣末な事でしかなかった。
「今、ここでですか?」
ソファーの上に身体を置かれながら尋ねる。
「次、会える保証はあるのか?」
会えるという確実な保証があるのなら、それまで待つことは出来るかもしれない。斎自身、さすがにここでは気が引ける。
「分かりません」
天弥が答えると同時に、斎はその唇を自分の唇で塞いだ。天弥の唇を貪りながら、斎はそのワイシャツのボタンに手を掛ける。ボタンが一つ外れると、斎は天弥の唇を開放した。
今度は首筋に唇を落とし、次々と残ったボタンを外していく。
「et dimitte nobis debita nostra, sicut et nos dimisimus debitoribus nostris」
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