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errare humanum est
tredecim
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サイラスの表情が曇る。
「それは困ったな……。あんたやと、大人しく言うこと聞いてくれんやろ?」
「それ以前に、今の状態では無理です」
「そうなんか……。これからどないすんのや?」
天弥の表情は変わらず、特に困っている様子も見られなかった。
「なんとかなるんじゃないですか? 元に戻るまで、知られなければ良い訳ですし」
天弥が立ち上がる。
「なんかあったら言ってや。助けてもろた礼はするで」
「あれは……」
サイラスも立ち上がる。
「助けてくれたやろ? 俺を見捨てて一人で逃げることだって出来たやろ?」
「それでは、貸しを一つということで」
「そやな」
遠くで自分を呼ぶ声が聞こえ、天弥は声がした方向を見る。
「先生が探しとるで」
「そうですね」
天弥がため息を吐く。以前の思う通りに動いてくれる状況なら歓迎するが、今は違い、どう扱って良いのか悩む。
「天弥!」
院内を探し回ったであろうことはすぐに理解できた。
「早かったですね」
差し出された大きめの紙袋を受け取った。
「姉に頼んだから大丈夫だと思うが……」
不安を浮かべながら、天弥の様子を伺う。
「これ、どう見たって女もんとちゃうの?」
紙袋の中身を覗き込んだサイラスの発言で、この場に居たことを知る。
「無事だったのか?」
驚きの表情を向ける。
「もしかして、死んだって思われとったん?」
「いや……」
状態を見る限り、全身に火傷があるのはすぐに理解できた。もう、動けるということは見た目ほど大したものではなかったのだろうと安堵した。天弥のことしか目に入っておらず、置き去りにしてしまったことを今更ながらに後悔をした。
「俺も、退院するときは先生に服を頼んでもええか?」
「悪いが、サイズとか分からないので無理だ」
「さよか」
元々、期待をしていた訳ではないため、あっさりと引き下がる。
「じゃあ、迎えが来たので戻ります」
サイラスに告げ天弥は背を向ける。
「ほな、またな」
自分の病室へ向かい、サイラスも足を踏み出した。
「着替えたら帰るのか?」
横を歩く天弥に尋ねる。
「そんなに、家に帰って欲しいのですか?」
少し、苛立つような声だった。
「帰りたくないのか?」
「そういう訳ではありませんが」
天弥がどう思っているのかは分からないが、未成年である以上、保護者の元へ帰すべきだと考える。
「なら、送って行く」
そう口にした途端、無表情な天弥の表情に不安を覚えた。送り届けた後、また消えてしまうのではと思えてならないのだ。
「分かりました」
天弥としては、今の状況では斎が居るのが望ましく、素直に提案を飲むことを了承する。
「そういえば、二人でどこへ行っていたんだ?」
「ちょっと南極へ行っていました」
「そうか」
推測が確信に変わった。そして、普段の天弥は示してしまったのだ。この本来の天弥と同じことが出来るということを。
「これから、どうするんだ?」
「学校へ行って普通に過ごしますよ」
今の状態では、それが一番、無難と思われる返答をした。
「もちろん、週末はデートしてくれますよね?」
「それは困ったな……。あんたやと、大人しく言うこと聞いてくれんやろ?」
「それ以前に、今の状態では無理です」
「そうなんか……。これからどないすんのや?」
天弥の表情は変わらず、特に困っている様子も見られなかった。
「なんとかなるんじゃないですか? 元に戻るまで、知られなければ良い訳ですし」
天弥が立ち上がる。
「なんかあったら言ってや。助けてもろた礼はするで」
「あれは……」
サイラスも立ち上がる。
「助けてくれたやろ? 俺を見捨てて一人で逃げることだって出来たやろ?」
「それでは、貸しを一つということで」
「そやな」
遠くで自分を呼ぶ声が聞こえ、天弥は声がした方向を見る。
「先生が探しとるで」
「そうですね」
天弥がため息を吐く。以前の思う通りに動いてくれる状況なら歓迎するが、今は違い、どう扱って良いのか悩む。
「天弥!」
院内を探し回ったであろうことはすぐに理解できた。
「早かったですね」
差し出された大きめの紙袋を受け取った。
「姉に頼んだから大丈夫だと思うが……」
不安を浮かべながら、天弥の様子を伺う。
「これ、どう見たって女もんとちゃうの?」
紙袋の中身を覗き込んだサイラスの発言で、この場に居たことを知る。
「無事だったのか?」
驚きの表情を向ける。
「もしかして、死んだって思われとったん?」
「いや……」
状態を見る限り、全身に火傷があるのはすぐに理解できた。もう、動けるということは見た目ほど大したものではなかったのだろうと安堵した。天弥のことしか目に入っておらず、置き去りにしてしまったことを今更ながらに後悔をした。
「俺も、退院するときは先生に服を頼んでもええか?」
「悪いが、サイズとか分からないので無理だ」
「さよか」
元々、期待をしていた訳ではないため、あっさりと引き下がる。
「じゃあ、迎えが来たので戻ります」
サイラスに告げ天弥は背を向ける。
「ほな、またな」
自分の病室へ向かい、サイラスも足を踏み出した。
「着替えたら帰るのか?」
横を歩く天弥に尋ねる。
「そんなに、家に帰って欲しいのですか?」
少し、苛立つような声だった。
「帰りたくないのか?」
「そういう訳ではありませんが」
天弥がどう思っているのかは分からないが、未成年である以上、保護者の元へ帰すべきだと考える。
「なら、送って行く」
そう口にした途端、無表情な天弥の表情に不安を覚えた。送り届けた後、また消えてしまうのではと思えてならないのだ。
「分かりました」
天弥としては、今の状況では斎が居るのが望ましく、素直に提案を飲むことを了承する。
「そういえば、二人でどこへ行っていたんだ?」
「ちょっと南極へ行っていました」
「そうか」
推測が確信に変わった。そして、普段の天弥は示してしまったのだ。この本来の天弥と同じことが出来るということを。
「これから、どうするんだ?」
「学校へ行って普通に過ごしますよ」
今の状態では、それが一番、無難と思われる返答をした。
「もちろん、週末はデートしてくれますよね?」
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