201 / 236
alea jacta est
viginti
しおりを挟む
「なにか来ます……」
天井を見上げ、天弥はなにかの来訪を告げる。もし、知識があれば、このときに訪れるものの名を斎に告げていただろう。
「ハスターか?」
神の名など知らない天弥には答えられなかった。
「僕……どうすれば良いですか?」
「オーガスト・ダーレスが神に属性を付けた。元々あったのか、後付なのかは知らないが……」
それでも、南極での様子を見る限り、あながち間違いでもない気がするのだ。
「だから、風の神に敵対する神を呼ぶ」
「はい」
おそらく、南極のときとおなじなのだろうと、天弥はそれだけを理解した。
「呪文は俺が言う」
だが、まだ少し斎に迷いがある。いくら東京湾の真ん中とはいえ、確実に周囲に被害が出るだろう。街中で無かったことだけが救いだった。
「南極を選んだのはお前なのか?」
「いえ。サイラスくんが、一番、被害が少なそうだって決めました」
「そうか」
南極か北極なら被害は少ないだろう。北極ではなく南極に決めたのは火の神を呼ぶからだったと推測できた。南極は大陸であるが北極はただの氷の塊のため、場合によっては水位に影響があるかもしれないと判断をしたと思われる。火の神が居ないのなら、南極か北極が良かったのだが、さすがに今から場所を変更してもらうことは出来ないだろう。斎は覚悟を決める。
「天弥。他になにか召喚するときに決まりごとや必要なものはあるか?」
「他には何もなかったと思います」
自分のことだというのに、他人事のように答える様子に不安はあるが、他に選択肢が無かった。
「分かった。呼ぶのはクトゥルー水の神だ」
「はい」
答えた声が少し強張っていた。緊張をしているのがすぐに分かった。
「呪文は、Ph’nglui mglw’nafh Cthulhu R’lyeh wgah’nagl fhtagnだ」
「ふ? んぐーむぐ? あれ? 続き……なんでしたっけ?」
小首をかしげ、考え込むような表情を浮かべる天弥を、斎は見つめた。
「前はどうしたんだ?」
「サイラスくんが、ゆっくり短い言葉を言ってくれて、それを続けていたら出来たみたい?」
それでも可能なのかと斎は目から鱗が落ちたような気がした。
「なら、ゆっくり短く区切って言うから、それに続いてくれ」
天弥が頷く。それを見て斎は、あまりにも簡単に神を呼べることに、現実感が沸かない。とは言え、20年以上の歳月を費やしているのだから、当の本人たちには簡単とは言えないのだろう。
「Ph’nglui」
「ふんぐるい……?」
「mglw’nafh」
「むぐるーなふ」
一応、なんとか続いて言えているようだが、これで大丈夫なのか不安が募る。
「Cthulhu」
「くとるー」
斎が天弥を見つめる。召喚には、正確な呪文が必要なのか、それとも呪文はそこまで正確でなくても良いのか分からず、少し困惑をする。しかし、正確な呪文は斎にも分からないのだ。
「R’lyeh」
「るるいえ」
「wgah’nagl」
「うがふなぐる?」
次で最後だと、斎は不謹慎にも逸る気持ちを落ち着かせた。
天井を見上げ、天弥はなにかの来訪を告げる。もし、知識があれば、このときに訪れるものの名を斎に告げていただろう。
「ハスターか?」
神の名など知らない天弥には答えられなかった。
「僕……どうすれば良いですか?」
「オーガスト・ダーレスが神に属性を付けた。元々あったのか、後付なのかは知らないが……」
それでも、南極での様子を見る限り、あながち間違いでもない気がするのだ。
「だから、風の神に敵対する神を呼ぶ」
「はい」
おそらく、南極のときとおなじなのだろうと、天弥はそれだけを理解した。
「呪文は俺が言う」
だが、まだ少し斎に迷いがある。いくら東京湾の真ん中とはいえ、確実に周囲に被害が出るだろう。街中で無かったことだけが救いだった。
「南極を選んだのはお前なのか?」
「いえ。サイラスくんが、一番、被害が少なそうだって決めました」
「そうか」
南極か北極なら被害は少ないだろう。北極ではなく南極に決めたのは火の神を呼ぶからだったと推測できた。南極は大陸であるが北極はただの氷の塊のため、場合によっては水位に影響があるかもしれないと判断をしたと思われる。火の神が居ないのなら、南極か北極が良かったのだが、さすがに今から場所を変更してもらうことは出来ないだろう。斎は覚悟を決める。
「天弥。他になにか召喚するときに決まりごとや必要なものはあるか?」
「他には何もなかったと思います」
自分のことだというのに、他人事のように答える様子に不安はあるが、他に選択肢が無かった。
「分かった。呼ぶのはクトゥルー水の神だ」
「はい」
答えた声が少し強張っていた。緊張をしているのがすぐに分かった。
「呪文は、Ph’nglui mglw’nafh Cthulhu R’lyeh wgah’nagl fhtagnだ」
「ふ? んぐーむぐ? あれ? 続き……なんでしたっけ?」
小首をかしげ、考え込むような表情を浮かべる天弥を、斎は見つめた。
「前はどうしたんだ?」
「サイラスくんが、ゆっくり短い言葉を言ってくれて、それを続けていたら出来たみたい?」
それでも可能なのかと斎は目から鱗が落ちたような気がした。
「なら、ゆっくり短く区切って言うから、それに続いてくれ」
天弥が頷く。それを見て斎は、あまりにも簡単に神を呼べることに、現実感が沸かない。とは言え、20年以上の歳月を費やしているのだから、当の本人たちには簡単とは言えないのだろう。
「Ph’nglui」
「ふんぐるい……?」
「mglw’nafh」
「むぐるーなふ」
一応、なんとか続いて言えているようだが、これで大丈夫なのか不安が募る。
「Cthulhu」
「くとるー」
斎が天弥を見つめる。召喚には、正確な呪文が必要なのか、それとも呪文はそこまで正確でなくても良いのか分からず、少し困惑をする。しかし、正確な呪文は斎にも分からないのだ。
「R’lyeh」
「るるいえ」
「wgah’nagl」
「うがふなぐる?」
次で最後だと、斎は不謹慎にも逸る気持ちを落ち着かせた。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる