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alea jacta est
triginta
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「キス……してください……」
今にも消えそうな声が聞こえた。
「天弥……?」
先ほど、意識を失った天弥が目を開けていた。確認するまでもなく、これは本来の天弥であることが分かる。
「限界を超えて僕の力を使おうとするから……」
ゆっくりと天弥の視線が動き、斎を見る。
「後ひと息なのだから、僕が引き継ぎますよ」
「大丈夫なのか?」
斎の顔には憂いが浮かぶ。
「あまり大丈夫ではないので、キスしてください」
「天弥……じゃなく、由香子さんは?」
一番の不安を向ける。
「無事です」
返事を聞き、斎は安堵のため息を吐く。そして、すぐに天弥と唇を重ねた。身体の奥底まで、全てを引きずり出されるような感覚に、思わず膝をつく。それでも、天弥の身体は離さずになんとか支え、共に床に崩れ落ちた。
「ありがとうございます」
天弥はつらそうに右手を挙げる。
「まったく……人の身体で無茶はしないで欲しいですね」
神々を取り巻く闇が収束する。それに比例するかのように、天弥の身体が闇に包まれる。
「先生、お願いがあります」
「なんだ?」
「何を聞いても、母のことは嫌いにならないでください」
難しい願いをされるが、斎が返す言葉は一つだった。
「もちろんだ」
もうすでに、ここまでに色々と知った。まだあるのだろうが、それは天弥の本当の父親のこと、羽角と胡桃沢の望みぐらいだろう。だが、今までの情報で、どちらも予想は付いている。
「ありがとうございます」
礼を述べると同時に、天弥を取り巻く闇に変化が訪れる。例えるのなら、闇が光っているような、形容しがたいものだった。二柱の神は闇に飲み込まれ、闇は急速に収縮する。
「成功……したのか?」
「はい……」
力なく答える様子に、斎は天弥の様子を観察する。どれだけの負担がかかったのか、怪我などは無いのか、不安で仕方がなかったのだ。
「おぉ! 天弥くんじゃの? 覚えとるかの?」
「覚えていますよ」
嫌そうな口ぶりを胡桃沢に向けた。
「さっそくじゃが、我々の望みを叶えてくれんかのぉ? もうすぐ羽角も来るじゃろう」
なぜ、今、この状況でそのようなことを口にするのか斎には理解できなかった。
「教授……今は……」
「嫌です」
斎の言葉を遮るように、天弥ははっきりと拒否を伝えた。
「あなた方は、母に何をしたか分かっていますよね? 全て知っている僕が、そのあなた方の望みを叶えると思ってるのですか?」
胡桃沢の表情が困惑に変わる。
「それが使えないのなら、また作れば良い」
羽角の声が聞こえてきた。
「作ればいい?」
まるでなにかの道具のような言い方に、斎が怒りを覚えた。
「そうだ。時間はかかるが、次は自我など持たせなければ良いのだ」
「無理ですよ。僕が阻止します」
羽角は忌々しげに天弥へ視線を向ける。
「道具に自我など必要ないというのに……」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、羽角は隣にいるサイラスになにかを耳打ちした。サイラスが頷いた。羽角は目配せでもするかのように胡桃沢へ視線を向ける。それを合図に、三人は揃って斎たちに背を向け歩き出した。
今にも消えそうな声が聞こえた。
「天弥……?」
先ほど、意識を失った天弥が目を開けていた。確認するまでもなく、これは本来の天弥であることが分かる。
「限界を超えて僕の力を使おうとするから……」
ゆっくりと天弥の視線が動き、斎を見る。
「後ひと息なのだから、僕が引き継ぎますよ」
「大丈夫なのか?」
斎の顔には憂いが浮かぶ。
「あまり大丈夫ではないので、キスしてください」
「天弥……じゃなく、由香子さんは?」
一番の不安を向ける。
「無事です」
返事を聞き、斎は安堵のため息を吐く。そして、すぐに天弥と唇を重ねた。身体の奥底まで、全てを引きずり出されるような感覚に、思わず膝をつく。それでも、天弥の身体は離さずになんとか支え、共に床に崩れ落ちた。
「ありがとうございます」
天弥はつらそうに右手を挙げる。
「まったく……人の身体で無茶はしないで欲しいですね」
神々を取り巻く闇が収束する。それに比例するかのように、天弥の身体が闇に包まれる。
「先生、お願いがあります」
「なんだ?」
「何を聞いても、母のことは嫌いにならないでください」
難しい願いをされるが、斎が返す言葉は一つだった。
「もちろんだ」
もうすでに、ここまでに色々と知った。まだあるのだろうが、それは天弥の本当の父親のこと、羽角と胡桃沢の望みぐらいだろう。だが、今までの情報で、どちらも予想は付いている。
「ありがとうございます」
礼を述べると同時に、天弥を取り巻く闇に変化が訪れる。例えるのなら、闇が光っているような、形容しがたいものだった。二柱の神は闇に飲み込まれ、闇は急速に収縮する。
「成功……したのか?」
「はい……」
力なく答える様子に、斎は天弥の様子を観察する。どれだけの負担がかかったのか、怪我などは無いのか、不安で仕方がなかったのだ。
「おぉ! 天弥くんじゃの? 覚えとるかの?」
「覚えていますよ」
嫌そうな口ぶりを胡桃沢に向けた。
「さっそくじゃが、我々の望みを叶えてくれんかのぉ? もうすぐ羽角も来るじゃろう」
なぜ、今、この状況でそのようなことを口にするのか斎には理解できなかった。
「教授……今は……」
「嫌です」
斎の言葉を遮るように、天弥ははっきりと拒否を伝えた。
「あなた方は、母に何をしたか分かっていますよね? 全て知っている僕が、そのあなた方の望みを叶えると思ってるのですか?」
胡桃沢の表情が困惑に変わる。
「それが使えないのなら、また作れば良い」
羽角の声が聞こえてきた。
「作ればいい?」
まるでなにかの道具のような言い方に、斎が怒りを覚えた。
「そうだ。時間はかかるが、次は自我など持たせなければ良いのだ」
「無理ですよ。僕が阻止します」
羽角は忌々しげに天弥へ視線を向ける。
「道具に自我など必要ないというのに……」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、羽角は隣にいるサイラスになにかを耳打ちした。サイラスが頷いた。羽角は目配せでもするかのように胡桃沢へ視線を向ける。それを合図に、三人は揃って斎たちに背を向け歩き出した。
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