親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

文字の大きさ
171 / 190
第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編

第170話 熊谷からのメッセージ

しおりを挟む
 朝食を終え、後片付けを済ませた俺はテントの隅に置いてあるスマフォを手に取った。

 通知を確認すると、熊谷から冒険者アプリ経由でメッセージが届いているのに気づく。

『よぉ風間、配信見たぞ。相変わらず楽しそうだな』

『ありがと。ただ、最近ちょっと視聴数が伸び悩んでてさ』
『ふむ、そうか。なら――』

 そこで一旦メッセージが区切られ、数秒後に続きが届く。


『ギルドの裏通りにある冒険者通り、行ってみたことあるか?』
『冒険者通り?』

 そのワード、なんとなく記憶にある気がするが、行ったことはないな。

『名前は聞いたことあるけど、行ったことはないな』
『そうか。だったら一度は行ってみてもいいかもな。あそこは装備や道具だけじゃなくて、モンスター用のアクセサリとか、ネタに使えそうなアイテムもいっぱいある。配信のネタ探しにも良いかもだぞ』

 なるほど、冒険者通りか……考えたことなかったけど、確かに良さそうかも。

『情報ありがとう。ちょっと興味湧いたよ』
『おうよ! あと、冒険者通りで売ってる焼きチーズドッグ、あれマジで美味いからな!』
『食い物の話かよ(笑)』

 思わず吹き出してしまった。熊谷らしい一言だ。けど、熊谷の情報はありがたい。

「ハルさん、何かあったの?」

 スマフォを見ていた俺に、食器を片付け終えた秋月が声をかけてきた。彼女の隣ではモコとゴブが張り切って洗い物の手伝いをしていた。ゴブは泡まみれになりながらも、どこか得意げな表情をしている。

「いや、熊谷からメッセージが来てさ。冒険者通りってとこ、配信のネタに良さそうだって」
「冒険者通り? あ、私も色々調べてて見たことあるかも。ギルドの裏通りにあるっていうお店が集まってる場所でしょ?」
「そうそう。色んな道具やらアクセサリやら売ってるらしい」
「へぇ~面白そう。私も行ってみたいな」

 秋月の瞳がキラリと輝く。どうやら興味津々のようだ。秋月も冒険者になったことだし、一緒に行っても不自然ではないよな。

 そのとき、マールが何やら得意げにラムの頭に草の冠をのせていた。モグも真似して自分の頭に枝を刺してポーズを取っている。

「ワンワン!」
「ピキィ~♪」
「モグ~!」
「マァ~♪」
「ゴブゥ~!」

 俺たちの話そっちのけで、モンスターたちは謎のコスプレ遊びに夢中らしい。

「じゃあ今度、時間ある時に一緒に行ってみるか。ついでに焼きチーズドッグってのも食べてみたいし」
「うん、楽しみ♪ 皆にもお土産買ってこようね」
「ワンワン!」
「ピキィ!」
「ゴブ!」
「マァ!」
「モグゥ!」

 俺たちの話が聞こえていたのか、皆も興味津々なようだな。モンスターバトルの事もあるし、役に立つものも揃っているかも知れない。

 こうして俺たちの新しい目的地――冒険者通りへの訪問が、次なる小さな楽しみとして心に刻まれた。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

ダンジョン配信ですよ、我が主 ~いや、貴女が配信したほうが良いような~

志位斗 茂家波
ファンタジー
…ある日突然、世界中にダンジョンと呼ばれる謎のものが出現した。 迷宮、塔、地下世界…そして未知のモンスターに、魔法の道具等、内包する可能性は未知数であり、世界は求めていく。 とはいえ、その情報がどんどん出てくれば、価値も少しづつ薄れるもので…気が付けば、一般向けに配信者が出てきたりと、気軽な存在になっていた。 そんな中である日、小遣い稼ぎとして配信を始めて行おうとしたとある少年が、ダンジョン内で巡り合ってしまった…魔法の道具…もとい、何故かメイドの彼女との運命が、世界を混沌へ堕としこむのだが…

なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?

名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」 「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」 「それは貴様が無能だからだ!」 「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」 「黙れ、とっととここから消えるがいい!」  それは突然の出来事だった。  SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。  そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。 「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」 「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」 「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」  ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。  その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。 「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

小さなフェンリルと私の冒険時間 〜ぬくもりに包まれた毎日のはじまり〜

ちょこの
ファンタジー
もふもふな相棒「ヴァイス」と一緒に、今日もダンジョン生活♪ 高校生の優衣は、ダンジョンに挑むけど、頼れるのはふわふわの相棒だけ。 ゆるふわ魔法あり、ドキドキのバトルあり、モフモフ癒しタイムも満載! ほんわか&ワクワクな日常と冒険が交差する、新感覚ファンタジー!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。 遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら 自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に スカウトされて異世界召喚に応じる。 その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に 第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に かまい倒されながら癒し子任務をする話。 時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。 初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。 2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

処理中です...