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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第175話 新たな訪問者
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昼食を終えて、少しのんびりしていた時間だった。
魔根人参と陽熟実トマトの入ったオムライス――見た目にも鮮やかだったし、味もいつもよりしっかりしていた気がする。それだけじゃない。体の中がすっきりして、視界までくっきりしたような……あれはたぶん、例のトマトの効果だろうな。
「ワンワン!」
「ゴブゥ!」
モコとゴブもやたらテンションが高いな。モコはその場で武道の型までやり出しているし。確か魔根人参には一時的に筋力と反応速度を高める効果があったはずだし、その影響だろうか。
「ふぅ~……気持ちよすぎて寝ちゃいそう」
秋月がゴロンと寝転び、スマフォで撮ったばかりの動画を眺めながら笑う。モコたちもちょっと落ち着いてきたようで、皆と一緒にまったりしていた。
「ワン……ワン♪」
「ピキィ~」
「マァ……♪」
「モグゥぅ……」
「ゴブゥ……」
みんな、うつらうつらしながら横になったり、俺の足元に寄り添ったりして、完全にお昼寝モードに突入していた。
「でも、あのトマトと人参ってすごいよね。食べた後から目が冴えて、身体もポカポカするし」
「確かにな。さすがはダンジョン産の強化作物って感じだ」
話しながら、秋月がスマフォをタップしてニュースアプリを開いた。だが、ふと怪訝そうな顔を見せる。
「ん? 何かあったか?」
「……えっ、市長が逮捕されたみたい……。汚職容疑って、なんか意外かも」
秋月が目を丸くしてスマフォの画面を見せてきた。そこには、地元の市長が不正な献金を受けていた疑いで逮捕されたというニュースが載っていた。
「市長って、確か評判良かったよな?」
「うん。市民にも人気あったし、突然すぎて……なんだか信じられないね」
しばし画面を見つめる俺たち。どうやら市長の逮捕もあって、次の市長選の話題にも発展しているようだ。
「……ん?」
ふと、足音が近づいてくる気配。誰かがこっちに向かって来ている。
ダンジョンの入口から、きっちりとしたスーツに身を包んだ中年の男が現れた。落ち着いた表情、後ろには見覚えのある顔がいた。
「お久しぶりです。風間さん、山守さん」
「大黒さん……!」
俺がそう言うと、大黒 賢治が軽く頭を下げた。一緒に来た男性は知らない男で、黒いスーツに黒縁の眼鏡をかけた、どこか柔和な微笑みをたたえた男だ。
「ワン……」
「ピキィ……」
「モグ……」
「ゴブゥ?」
「マァ……」
気になるのはモコたちの反応だった。警戒するようにじりじりと距離を詰めることもなく、逆に離れるように身を引いていく。俺の足元に戻ってきて、じっと男を見上げていた。
初対面とはいえ、皆がここまでの反応を見せるのは珍しい気がする。
すると男は少し肩をすくめ、苦笑いを浮かべて言った。
「どうも、動物には懐かれない性質でしてね。私は大好きなんですけど」
言いながらも、それをまったく気にする様子もない。むしろ、長年そういう目に遭ってきたような、慣れた反応だった。
「私、黒霧 影二と申します。次の市長選に立候補を予定している者です。ご挨拶にうかがいました」
黒霧が笑みをたたえて挨拶してきた。市長に立候補か。そういえば賢治さんは議員の秘書という話だった。
つまり賢治さんが秘書をしている議員がこの黒霧というわけか。
「市長選に……って、あのニュースの件と関係が……」
「ええ、あのような形になってしまったのは残念ですが……市政の安定と改革のため、私も一歩を踏み出す覚悟を決めました」
秋月の反応に対して礼儀正しく、丁寧な口調。身のこなしにも隙はない。
「それと……以前うちの秘書がずいぶんとお世話になったようで。私からも、改めて感謝を」
そう言って深く頭を下げられた。おそらくダンジョン災害と大黒の件について言ってるんだろうな。
「――いえ、俺だけの力ではないし、仲間の皆がいたからこそ出来たことですよ」
「仲間ですか。その可愛らしいモンスターたちもですかな?」
「えぇ勿論。皆も大切で頼りになる仲間です。な?」
「……クゥ~ン」
「ピキィ……」
「マァ……」
「ゴブ――」
「モグゥ……」
う~ん、やっぱり皆の反応が微妙だな。ゴブに至ってはどこか睨むような視線を送っているし。
「ハハッ、なるほど。いやいや、秘書に聞いていた通りの人格者ですね。気に入りましたよ。また機会があれば、ぜひ色々と教えてください。このダンジョンにも興味がありますので」
黒霧はにこやかにそう言い、再び深く頭を下げて去っていった。
「突然来てしまって申し訳なかったですね」
「いえ。それにしても市長の件は驚きましたが、既に動き出していて随分と意欲的ですね」
「えぇ。先生は野心的な方で、勿論それは悪い意味ではないですよ。本気で市に貢献したいと考えていて、支持する方も多いのです」
賢治さんが熱弁する。仕事だからというわけではなく、秘書として本当に誇りに思っていそうなそんな言動だ。
「よろしければ、次の市長選、よろしくお願いします」
最後にそう言って頭を下げて戻っていった。確かに人あたりは良さそうな人だったな。
ただ、モコたちの様子がどうしても気になってしまう。動物に好かれないと言っていたけど、本当にそれだけだろうか?
多少気になりはしたけど、今は情勢を見守るしかないかな――
魔根人参と陽熟実トマトの入ったオムライス――見た目にも鮮やかだったし、味もいつもよりしっかりしていた気がする。それだけじゃない。体の中がすっきりして、視界までくっきりしたような……あれはたぶん、例のトマトの効果だろうな。
「ワンワン!」
「ゴブゥ!」
モコとゴブもやたらテンションが高いな。モコはその場で武道の型までやり出しているし。確か魔根人参には一時的に筋力と反応速度を高める効果があったはずだし、その影響だろうか。
「ふぅ~……気持ちよすぎて寝ちゃいそう」
秋月がゴロンと寝転び、スマフォで撮ったばかりの動画を眺めながら笑う。モコたちもちょっと落ち着いてきたようで、皆と一緒にまったりしていた。
「ワン……ワン♪」
「ピキィ~」
「マァ……♪」
「モグゥぅ……」
「ゴブゥ……」
みんな、うつらうつらしながら横になったり、俺の足元に寄り添ったりして、完全にお昼寝モードに突入していた。
「でも、あのトマトと人参ってすごいよね。食べた後から目が冴えて、身体もポカポカするし」
「確かにな。さすがはダンジョン産の強化作物って感じだ」
話しながら、秋月がスマフォをタップしてニュースアプリを開いた。だが、ふと怪訝そうな顔を見せる。
「ん? 何かあったか?」
「……えっ、市長が逮捕されたみたい……。汚職容疑って、なんか意外かも」
秋月が目を丸くしてスマフォの画面を見せてきた。そこには、地元の市長が不正な献金を受けていた疑いで逮捕されたというニュースが載っていた。
「市長って、確か評判良かったよな?」
「うん。市民にも人気あったし、突然すぎて……なんだか信じられないね」
しばし画面を見つめる俺たち。どうやら市長の逮捕もあって、次の市長選の話題にも発展しているようだ。
「……ん?」
ふと、足音が近づいてくる気配。誰かがこっちに向かって来ている。
ダンジョンの入口から、きっちりとしたスーツに身を包んだ中年の男が現れた。落ち着いた表情、後ろには見覚えのある顔がいた。
「お久しぶりです。風間さん、山守さん」
「大黒さん……!」
俺がそう言うと、大黒 賢治が軽く頭を下げた。一緒に来た男性は知らない男で、黒いスーツに黒縁の眼鏡をかけた、どこか柔和な微笑みをたたえた男だ。
「ワン……」
「ピキィ……」
「モグ……」
「ゴブゥ?」
「マァ……」
気になるのはモコたちの反応だった。警戒するようにじりじりと距離を詰めることもなく、逆に離れるように身を引いていく。俺の足元に戻ってきて、じっと男を見上げていた。
初対面とはいえ、皆がここまでの反応を見せるのは珍しい気がする。
すると男は少し肩をすくめ、苦笑いを浮かべて言った。
「どうも、動物には懐かれない性質でしてね。私は大好きなんですけど」
言いながらも、それをまったく気にする様子もない。むしろ、長年そういう目に遭ってきたような、慣れた反応だった。
「私、黒霧 影二と申します。次の市長選に立候補を予定している者です。ご挨拶にうかがいました」
黒霧が笑みをたたえて挨拶してきた。市長に立候補か。そういえば賢治さんは議員の秘書という話だった。
つまり賢治さんが秘書をしている議員がこの黒霧というわけか。
「市長選に……って、あのニュースの件と関係が……」
「ええ、あのような形になってしまったのは残念ですが……市政の安定と改革のため、私も一歩を踏み出す覚悟を決めました」
秋月の反応に対して礼儀正しく、丁寧な口調。身のこなしにも隙はない。
「それと……以前うちの秘書がずいぶんとお世話になったようで。私からも、改めて感謝を」
そう言って深く頭を下げられた。おそらくダンジョン災害と大黒の件について言ってるんだろうな。
「――いえ、俺だけの力ではないし、仲間の皆がいたからこそ出来たことですよ」
「仲間ですか。その可愛らしいモンスターたちもですかな?」
「えぇ勿論。皆も大切で頼りになる仲間です。な?」
「……クゥ~ン」
「ピキィ……」
「マァ……」
「ゴブ――」
「モグゥ……」
う~ん、やっぱり皆の反応が微妙だな。ゴブに至ってはどこか睨むような視線を送っているし。
「ハハッ、なるほど。いやいや、秘書に聞いていた通りの人格者ですね。気に入りましたよ。また機会があれば、ぜひ色々と教えてください。このダンジョンにも興味がありますので」
黒霧はにこやかにそう言い、再び深く頭を下げて去っていった。
「突然来てしまって申し訳なかったですね」
「いえ。それにしても市長の件は驚きましたが、既に動き出していて随分と意欲的ですね」
「えぇ。先生は野心的な方で、勿論それは悪い意味ではないですよ。本気で市に貢献したいと考えていて、支持する方も多いのです」
賢治さんが熱弁する。仕事だからというわけではなく、秘書として本当に誇りに思っていそうなそんな言動だ。
「よろしければ、次の市長選、よろしくお願いします」
最後にそう言って頭を下げて戻っていった。確かに人あたりは良さそうな人だったな。
ただ、モコたちの様子がどうしても気になってしまう。動物に好かれないと言っていたけど、本当にそれだけだろうか?
多少気になりはしたけど、今は情勢を見守るしかないかな――
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