親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第四章 モンスターバトル編

第176話 作物を査定してもらった

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 モンスターのみんなも交えた畑での収穫風景を配信したら、視聴者の反応はなかなか良かった。
 チャット欄も盛り上がっていて、コメントで「かわいい!」とか「その野菜どこで買えますか?」なんて声が次々と飛んできた。

 おかげで視聴数も少し持ち直したようで、秋月もほっとした表情を浮かべていたな。とはいえ、いつまた飽きられて視聴者が離れていくかはわからない。だからこそ、次に見せるネタは常に考えておかないといけないだろう。

 そんなふうに秋月と相談したり、道場での鍛錬に励んだりしているうちに、グラヴィス姉弟から連絡が届いた。

 以前から話していたモンスターバトルの件で、ついに時間が取れたらしい。金曜日の午後に合流して一緒に行くことが決まった。

「それなら午前中にギルドに行こうかな。作物も見てもらいたいし」
「それなら私も一緒に行きたい」
「ワンワン♪」
「モグゥ♪」
「ピキィ♪」
「マァ~♪」
「ゴブゥ♪」

 秋月の言葉に、モンスターたちも声を揃えるように嬉しそうな鳴き声を上げた。最初に収穫した分は、色々と調理したりジュースにして飲んだりして、もうとっくに食べきってしまった。けれど畑は順調で、その後もまた立派な実りが得られている。

 そんなわけで、金曜日となり秋月の運転で俺たちはギルドに向かった。

「おお! 来たか! うほほぉ! 相変わらず最高の愛らしさではないか!」

 畑で採れた作物を査定してもらっている間、俺たちは小澤マスターの部屋に招かれていた。
 扉を開けた瞬間からマスターの大声が響き、モコたちを見た途端、満面の笑みで駆け寄ってきた。

「モフモフ! ぷるぷる! あぁ、目の保養だ……!」

 大きな手でモコとモグの頭をわしゃわしゃ撫で、ラムを優しくすくい上げ、ゴブを肩に乗せ、マールの頭をそっと撫でてやる。相変わらず、モンスターたちへの愛情が溢れすぎている。

「ところで畑で取れた作物は、どうだった?」
「はい。今査定をお願いしてますが、状態もよくて“素晴らしい”と褒めてもらえたので、ちょっと期待してます」
「そうかそうか! いや、それは楽しみだ!」

 俺たちはそのまま歓談になり、近況を尋ねられたので、配信が順調だと伝えた。

「おう! 確かに視聴者が増えているようだな! かくいう俺も――モンチャンにドハマりしているぞ!」

 モンチャン。秋月がつけたチャンネル名だ。
 まさか小澤マスターまで見てくれていたとは思わなかった。

「えっ……本当に見てくださってるんですか?」
「ハッハッハ! 暇さえあれば必ず見てるぞ! 癒やしがここにあるからな!」

 マスターは朗らかに笑いながら、力こぶを見せつけるように腕をぐっと曲げてみせた。気を使っているのではなく、心から楽しんでくれているのが伝わってきて、俺もつい笑みをこぼした。

「それにしても、最近は放置ダンジョンでの生活がメインなようだな。冒険者としての活動はどうなんだ? 山守さんも、冒険者になれたのだろう?」
「はい。確かに登録は済んだんですが、まだ本格的な活動は……。今は道場で鍛えているところです」
「そうかそうか! 冒険者たるもの、まずは体が資本だからな。鍛えるに越したことはない!」

 そう言って満足そうに頷く小澤マスター。その視線が今度は俺に向けられる。

「それにしても……風間、お前も随分と引き締まってきたじゃないか」
「えぇ。山守家の道場にも通わせてもらって、かなりしごかれましたから」
「ハッハッハ! なるほどな! あそこは冒険者にも人気で、厳しいと評判だからな!」

 マスターの豪快な笑い声が部屋に響く。

「まぁ、このところは色々と危ないこともあったからな。日々の鍛錬は欠かせないが、やっぱり実戦経験も積んでおいて損はないぞ」
「考えておきます。……そういえば、ダンジョン探索とは別ですが、モンスターバトルには興味があって。近々登録しようと思ってるんです」
「なに!? モンスターバトルだと!? しかも、この子たちが出場するのか?」
「え、えぇ……もし試合するなら、そういうことになりますね」
「なんてことだ! そんな試合があるなら、俺は仕事を抜け出してでも見に行かねば!」
「いや、お願いしますから仕事が休みのときにしてください!」

 本気でやりかねない小澤マスターに、俺は慌てて制止した――
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