184 / 190
第四章 モンスターバトル編
第181話 馴染みの皆と待ち合わせ
しおりを挟む
約束の日になり、俺たちは冒険者通りへ向かうことになった。
朝から秋月が迎えに来てくれて、いつものように彼女の運転で待ち合わせ場所へ向かう。
「本当いつも悪いな」
「大丈夫。私も一緒に行くんだし」
「ワンワン♪」
「モグ~」
「ゴブッゴブッ♪」
「マァ~♪」
「ピキッ♪」
後部座席ではモンスターたちが窓の外を覗き込み、耳やしっぽをぱたぱた動かしている。
新しい場所に行くことに胸を躍らせているのだろう。
「冒険者向きの道具を色々扱ってるらしいから、楽しみだね」
「そうだな。普通の買い物とはまた違うからな」
そもそも一般人が武器を買うことはできない。そこを特別に認められているのが冒険者通りだ。
もちろん、剣などを購入した場合はむき出しで持ち歩くわけにはいかない。収納具や魔法のかかった袋などに仕舞う必要がある。
そういえば香川さんも講習のときに魔法の袋を持参していたな。俺も一つは用意しておくべきかもしれない。
「興味はあるけど、予算は足りるかな」
「う~ん、どれぐらいするのか見当もつかないもんね」
俺の不安に秋月が苦笑する。ゴブリン騒動の報酬三十万円があるとはいえ、装備の値段なんて想像もつかない。
けれど、見て回るだけでも十分楽しめるはずだ。秋月が駅前の駐車場に車を停め、俺たちは駅前の広場へと歩いた。
「おお、待ってたぜ」
広場の中央にそびえる奇妙なオブジェを背に、熊谷が手を上げていた。
高さ三メートルほどの金属製。ねじれた円柱が途中で枝分かれし、先端は意味ありげに尖っている。見る角度によっては横顔のようにも、巨大な楽器の部品のようにも見える代物だ。
芸術家が「生命の躍動」をテーマにデザインしたらしいが、俺にはさっぱりわからない。
だが、その前に立つ熊谷はTシャツにジーンズというラフな格好で、妙に場違いなオブジェと対照的だった。
七月に入り、日差しも強まってきた。熊谷の軽装は理にかなっている。
「おお! 揃ってるな。全員プロテイン飲んできたか?」
「いや、飲んでないし……」
駅の出入り口から、タンクトップに短パン姿の中山が姿を現す。鍛え上げられた腕をこれでもかと見せつけ、開口一番の言葉がこれ。ぶれないな、ほんと。
「あぁ! もう揃ってる! ごめんね、待った?」
駆け寄ってきたのは愛川だ。涼しげな半袖ブラウスにロングスカート姿で、走ったせいか頬が上気している。
俺と秋月が「大丈夫」と答えると、安堵したように微笑んだ。
「はぁ、今日かなり暑いよね。もう少し薄着でも良かったかなぁ」
愛川がハンカチで首元を押さえながら言うと、秋月が小さく肩をすくめた。
秋月は七分袖のシャツにデニムという落ち着いた服装。少し暑そうだが、きっちりした性格がよく出ている。
俺自身は半袖のTシャツに軽めのジャケット。日差しは暑いが、カバンの肩紐が擦れるのを避けたくて羽織ってきた。
それにしても薄着か。確かに駅前の通りを歩く女の子の中には結構際どい格好の子も――
「……ハルさん、今何を考えてるのかなぁ~?」
「え? いやいや! 何も、何も考えてないから!」
ジト目で覗き込んでくる秋月に慌てて手を振る。女の子の勘って、本当に鋭い。
「お前たちは着るものを考えなくていいから、気楽でいいよなぁ」
熊谷がモンスターたちを見回しながらつぶやく。
「ワン?」
「マァ?」
「モグ~?」
「ゴブ?」
「ピキィ?」
モコもマールもモグも、みんな首をかしげてきょとんとしている。ゴブだけは腰蓑をつまみ上げ、気にしたように視線を逸らした。
「とりあえず行こうぜ。結構店も多いみたいだし、見て回るだけでも十分楽しめそうだ」
「うむ。俺の筋肉もウズウズしているぞ!」
「そうだな、とにかく行こう」
「楽しみだね、アキちゃん」
「うん。何があるかなぁ~」
こうして俺たちは冒険者通りへ足を踏み出した――。
朝から秋月が迎えに来てくれて、いつものように彼女の運転で待ち合わせ場所へ向かう。
「本当いつも悪いな」
「大丈夫。私も一緒に行くんだし」
「ワンワン♪」
「モグ~」
「ゴブッゴブッ♪」
「マァ~♪」
「ピキッ♪」
後部座席ではモンスターたちが窓の外を覗き込み、耳やしっぽをぱたぱた動かしている。
新しい場所に行くことに胸を躍らせているのだろう。
「冒険者向きの道具を色々扱ってるらしいから、楽しみだね」
「そうだな。普通の買い物とはまた違うからな」
そもそも一般人が武器を買うことはできない。そこを特別に認められているのが冒険者通りだ。
もちろん、剣などを購入した場合はむき出しで持ち歩くわけにはいかない。収納具や魔法のかかった袋などに仕舞う必要がある。
そういえば香川さんも講習のときに魔法の袋を持参していたな。俺も一つは用意しておくべきかもしれない。
「興味はあるけど、予算は足りるかな」
「う~ん、どれぐらいするのか見当もつかないもんね」
俺の不安に秋月が苦笑する。ゴブリン騒動の報酬三十万円があるとはいえ、装備の値段なんて想像もつかない。
けれど、見て回るだけでも十分楽しめるはずだ。秋月が駅前の駐車場に車を停め、俺たちは駅前の広場へと歩いた。
「おお、待ってたぜ」
広場の中央にそびえる奇妙なオブジェを背に、熊谷が手を上げていた。
高さ三メートルほどの金属製。ねじれた円柱が途中で枝分かれし、先端は意味ありげに尖っている。見る角度によっては横顔のようにも、巨大な楽器の部品のようにも見える代物だ。
芸術家が「生命の躍動」をテーマにデザインしたらしいが、俺にはさっぱりわからない。
だが、その前に立つ熊谷はTシャツにジーンズというラフな格好で、妙に場違いなオブジェと対照的だった。
七月に入り、日差しも強まってきた。熊谷の軽装は理にかなっている。
「おお! 揃ってるな。全員プロテイン飲んできたか?」
「いや、飲んでないし……」
駅の出入り口から、タンクトップに短パン姿の中山が姿を現す。鍛え上げられた腕をこれでもかと見せつけ、開口一番の言葉がこれ。ぶれないな、ほんと。
「あぁ! もう揃ってる! ごめんね、待った?」
駆け寄ってきたのは愛川だ。涼しげな半袖ブラウスにロングスカート姿で、走ったせいか頬が上気している。
俺と秋月が「大丈夫」と答えると、安堵したように微笑んだ。
「はぁ、今日かなり暑いよね。もう少し薄着でも良かったかなぁ」
愛川がハンカチで首元を押さえながら言うと、秋月が小さく肩をすくめた。
秋月は七分袖のシャツにデニムという落ち着いた服装。少し暑そうだが、きっちりした性格がよく出ている。
俺自身は半袖のTシャツに軽めのジャケット。日差しは暑いが、カバンの肩紐が擦れるのを避けたくて羽織ってきた。
それにしても薄着か。確かに駅前の通りを歩く女の子の中には結構際どい格好の子も――
「……ハルさん、今何を考えてるのかなぁ~?」
「え? いやいや! 何も、何も考えてないから!」
ジト目で覗き込んでくる秋月に慌てて手を振る。女の子の勘って、本当に鋭い。
「お前たちは着るものを考えなくていいから、気楽でいいよなぁ」
熊谷がモンスターたちを見回しながらつぶやく。
「ワン?」
「マァ?」
「モグ~?」
「ゴブ?」
「ピキィ?」
モコもマールもモグも、みんな首をかしげてきょとんとしている。ゴブだけは腰蓑をつまみ上げ、気にしたように視線を逸らした。
「とりあえず行こうぜ。結構店も多いみたいだし、見て回るだけでも十分楽しめそうだ」
「うむ。俺の筋肉もウズウズしているぞ!」
「そうだな、とにかく行こう」
「楽しみだね、アキちゃん」
「うん。何があるかなぁ~」
こうして俺たちは冒険者通りへ足を踏み出した――。
57
あなたにおすすめの小説
小さなフェンリルと私の冒険時間 〜ぬくもりに包まれた毎日のはじまり〜
ちょこの
ファンタジー
もふもふな相棒「ヴァイス」と一緒に、今日もダンジョン生活♪
高校生の優衣は、ダンジョンに挑むけど、頼れるのはふわふわの相棒だけ。
ゆるふわ魔法あり、ドキドキのバトルあり、モフモフ癒しタイムも満載!
ほんわか&ワクワクな日常と冒険が交差する、新感覚ファンタジー!
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
捨てられ王女ですが、もふもふ達と力を合わせて最強の農業国家を作ってしまいました
夏見ナイ
ファンタジー
魔力ゼロの『雑草王女』アリシアは、聖女である妹に全てを奪われ、不毛の辺境へ追放された。しかし、彼女を慕う最強の騎士と、傷ついた伝説のもふもふとの出会いが運命を変える。
アリシアの力は魔力ではなく、生命を育む奇跡のスキル『万物育成』だった! もふもふ達の力を借り、不毛の大地は次々と奇跡の作物で溢れる緑豊かな楽園へと変わっていく。
やがて人々が集い、彼女を女王とする最強の農業国家が誕生。その頃、アリシアを捨てた祖国は自滅により深刻な食糧難に陥っていた――。
これは、優しき王女が愛する者たちと幸せを掴む、心温まる逆転建国ファンタジー。
ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜
ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが……
この世界の文明レベル、低すぎじゃない!?
私はそんなに凄い人じゃないんですけど!
スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる