親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第四章 モンスターバトル編

第181話 馴染みの皆と待ち合わせ

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 約束の日になり、俺たちは冒険者通りへ向かうことになった。
 朝から秋月が迎えに来てくれて、いつものように彼女の運転で待ち合わせ場所へ向かう。

「本当いつも悪いな」
「大丈夫。私も一緒に行くんだし」
「ワンワン♪」
「モグ~」
「ゴブッゴブッ♪」
「マァ~♪」
「ピキッ♪」

 後部座席ではモンスターたちが窓の外を覗き込み、耳やしっぽをぱたぱた動かしている。
 新しい場所に行くことに胸を躍らせているのだろう。

「冒険者向きの道具を色々扱ってるらしいから、楽しみだね」
「そうだな。普通の買い物とはまた違うからな」

 そもそも一般人が武器を買うことはできない。そこを特別に認められているのが冒険者通りだ。
 もちろん、剣などを購入した場合はむき出しで持ち歩くわけにはいかない。収納具や魔法のかかった袋などに仕舞う必要がある。

 そういえば香川さんも講習のときに魔法の袋を持参していたな。俺も一つは用意しておくべきかもしれない。

「興味はあるけど、予算は足りるかな」
「う~ん、どれぐらいするのか見当もつかないもんね」

 俺の不安に秋月が苦笑する。ゴブリン騒動の報酬三十万円があるとはいえ、装備の値段なんて想像もつかない。

 けれど、見て回るだけでも十分楽しめるはずだ。秋月が駅前の駐車場に車を停め、俺たちは駅前の広場へと歩いた。

「おお、待ってたぜ」

 広場の中央にそびえる奇妙なオブジェを背に、熊谷が手を上げていた。

 高さ三メートルほどの金属製。ねじれた円柱が途中で枝分かれし、先端は意味ありげに尖っている。見る角度によっては横顔のようにも、巨大な楽器の部品のようにも見える代物だ。
 
 芸術家が「生命の躍動」をテーマにデザインしたらしいが、俺にはさっぱりわからない。
 だが、その前に立つ熊谷はTシャツにジーンズというラフな格好で、妙に場違いなオブジェと対照的だった。

 七月に入り、日差しも強まってきた。熊谷の軽装は理にかなっている。

「おお! 揃ってるな。全員プロテイン飲んできたか?」
「いや、飲んでないし……」

 駅の出入り口から、タンクトップに短パン姿の中山が姿を現す。鍛え上げられた腕をこれでもかと見せつけ、開口一番の言葉がこれ。ぶれないな、ほんと。

「あぁ! もう揃ってる! ごめんね、待った?」

 駆け寄ってきたのは愛川だ。涼しげな半袖ブラウスにロングスカート姿で、走ったせいか頬が上気している。
 俺と秋月が「大丈夫」と答えると、安堵したように微笑んだ。

「はぁ、今日かなり暑いよね。もう少し薄着でも良かったかなぁ」

 愛川がハンカチで首元を押さえながら言うと、秋月が小さく肩をすくめた。
 秋月は七分袖のシャツにデニムという落ち着いた服装。少し暑そうだが、きっちりした性格がよく出ている。
 俺自身は半袖のTシャツに軽めのジャケット。日差しは暑いが、カバンの肩紐が擦れるのを避けたくて羽織ってきた。

 それにしても薄着か。確かに駅前の通りを歩く女の子の中には結構際どい格好の子も――

「……ハルさん、今何を考えてるのかなぁ~?」
「え? いやいや! 何も、何も考えてないから!」

 ジト目で覗き込んでくる秋月に慌てて手を振る。女の子の勘って、本当に鋭い。

「お前たちは着るものを考えなくていいから、気楽でいいよなぁ」

 熊谷がモンスターたちを見回しながらつぶやく。

「ワン?」
「マァ?」
「モグ~?」
「ゴブ?」
「ピキィ?」

 モコもマールもモグも、みんな首をかしげてきょとんとしている。ゴブだけは腰蓑をつまみ上げ、気にしたように視線を逸らした。

「とりあえず行こうぜ。結構店も多いみたいだし、見て回るだけでも十分楽しめそうだ」
「うむ。俺の筋肉もウズウズしているぞ!」
「そうだな、とにかく行こう」
「楽しみだね、アキちゃん」
「うん。何があるかなぁ~」

 こうして俺たちは冒険者通りへ足を踏み出した――。
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