親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

文字の大きさ
190 / 190
第四章 モンスターバトル編

第187話 ラムが興味津々

しおりを挟む
「ありがとうございます。助かりました」

 三人組を追い払ってくれた伊達に、お礼を述べた。
 さっきまであれほどの圧を放っていたというのに、今は嘘のように穏やかな笑みを浮かべている。

「気にすんな。あんな連中のさばらせてたら、これから商売上がったりだからな」

 腕を組んで笑うその姿は、まさに伊達男という言葉がぴったりだ。
 周囲の見物客も「さすが伊達さんだ」と感心したように頷いている。

「結構自信があったんだけど、勝てないわけですね。格の違いを見せつけられました」

 秋月が苦笑しながら肩をすくめる。その言葉に、伊達は興味深そうに目を細めた。

「いやいや。君も相当なもんだったぞ。動きを見るに――山守流の門下生か?」

 驚いた。秋月の動きを見ただけで、流派まで言い当てるとは。

「門下生も何も、この子は山守家の娘だぜ」
「うむ。あの道場で普段から鍛えられてるんだ。腕前は確かだが、上には上がいるものだな」

 熊谷と中山の補足に、伊達は「なるほど」と顎を撫でながら頷く。

「それなら納得だ」
「いえ、私もまだまだですから」
「いや、あんたらはこれからもっと伸びるさ。頼りになるモンスターもいるし、俺もうかうかしてられないな」

 豪快に笑う伊達。その笑いにつられて、モコたちも「ワン!」と尻尾を振った。

「私も皆に置いていかれないように頑張らないと」

 愛川が小さく呟く。チャレンジに参加していなかった分、少し気にしているのかもしれない。

「愛川は支援がメインだろ? 比べるもんじゃないさ。愛川には愛川の強みがあると思うぞ」
「――ハルさん……」

 俺の言葉に、愛川がぱちりと瞬きをしたあと、潤んだ瞳でこちらを見つめてきた。

 あれ? 俺、なんか地雷踏んだか?

「わ、悪い。何か気に障ったか?」
「……はぁ。ハルさんはやっぱりハルさんだね」
「へ?」

 ため息混じりの秋月が呆れ顔で愛川に声をかける。
 二人の間に柔らかな空気が流れ、愛川もすぐに微笑みを取り戻した。

 やっぱりこういう時は、女の子同士の方がいいのかもしれない。

「やれやれ。モンスターとは心を通わせても、女心は掴めないようやな」
「あぁ、本当にな」
「むぅ、心に筋肉をつけすぎたのかもしれん」
「うちでもこれは助言厳しいで」
「ワン……」
「ピキィ……」
「マァ……」
「ゴブゥ……」
「モグゥ……」

 な、なんだ? なんで全員、俺の方を見て同情してるんだ!?

 モンスターまでしょんぼりしてるのが地味に刺さる……!

「さて。今度こそ俺は行くとするか」
「あ、はい。雷の魔石、本当にありがとうございました」
「ハハッ、チャレンジに成功して手にした賞品なんだから礼なんて不要だぜ。じゃあな!」

 伊達は軽く手を振り、見物客に声をかけながら去っていった。
 その背中をみんなで見送ったあと、俺は改めて雷の魔石を取り出した。

「さて、これどうしようか?」
「どうするって言われてもなぁ……俺も使い方まではわからないからな」

 熊谷が腕を組んで首をひねる。う~んこれは、全員の協力で手に入れたようなものだし、何か役立つことに使えるといいんだけど。

「神奈さんにもお礼は必要だしな」
「うちのことは気にせんでえぇって」
「いやいや、君の助言がなかったら勝てなかったさ――」
「ピキィ! ピキィ!」

 ラムの高い鳴き声が会話を遮った。
 見ると、俺の手にある雷の魔石を見上げながら、ラムがピョンピョンと跳ねている。

「どうした? ラム」

 小さなスライムの体が、光を受けてわずかにきらめいていた。
 まるで石の中の輝きに引き寄せられるように、ふるふると震えている。

「……これ、ラムが欲しいってことか?」

 俺が呟くと、ラムはさらに勢いよく跳ね、ぷるんと弾むように体を揺らした。

 そういえば――最初にこのチャレンジを見た時も、雷の魔石に反応してたっけ。
 やっぱり、何か感じるものがあるのかもしれないな――。
しおりを挟む
感想 25

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(25件)

エリナス
2025.08.11 エリナス

風間さんタラシだなぁ

解除
エリナス
2025.06.23 エリナス

ついにモコちゃん達の声が聞けた!
可愛いっっっ(*´∇`*)

ゴブと超かっこよくてびっくり!!

解除
エリナス
2025.04.19 エリナス

今気づいたんですけど、138話の最後のあたりよくわからん。“f”ついてますよ〜

解除

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

小さなフェンリルと私の冒険時間 〜ぬくもりに包まれた毎日のはじまり〜

ちょこの
ファンタジー
もふもふな相棒「ヴァイス」と一緒に、今日もダンジョン生活♪ 高校生の優衣は、ダンジョンに挑むけど、頼れるのはふわふわの相棒だけ。 ゆるふわ魔法あり、ドキドキのバトルあり、モフモフ癒しタイムも満載! ほんわか&ワクワクな日常と冒険が交差する、新感覚ファンタジー!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

一人、辺境の地に置いていかれたので、迎えが来るまで生き延びたいと思います

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
大きなスタンビートが来るため、領民全てを引き連れ避難する事になった。 しかし、着替えを手伝っていたメイドが別のメイドに駆り出された後、光を避けるためにクローゼットの奥に行き、朝早く起こされ、まだまだ眠かった僕はそのまま寝てしまった。用事を済ませたメイドが部屋に戻ってきた時、目に付く場所に僕が居なかったので先に行ったと思い、開けっ放しだったクローゼットを閉めて、メイドも急いで外へ向かった。 全員が揃ったと思った一行はそのまま領地を後にした。 クローゼットの中に幼い子供が一人、取り残されている事を知らないまま

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。