親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

第一章 モンスターとの出会い編

第2話 放置ダンジョンを探索してみよう

　放置ダンジョンでの生活を決めて早速俺はキャンプ道具を全てダンジョンの中に持ち込んだ。とは言えダンジョンに入るのは初めてのこと。

　それ相応に緊張もする。それでもこんな大胆な行動に出れたのはランク外の放置ダンジョンに危険性はないという情報を掴んでいたからこそだ。

　そして中に入ってみたが、中はなんというか普通に洞窟の中と言った様相だった。ただ思ったよりも明るい。

　そう言えば危険度の低いダンジョンは明かりがいらない程度には明るいと聞いたこともある。

　このダンジョンはランク外なわけで、危険度も少なければ明かりもしっかり確保されているわけだ。これなら安心して過ごせるだろう。

「さて……まずは寝床の確保からかな？」

　流石にいきなりダンジョンの中で寝る勇気はなかった。それにまだダンジョンについて詳しくない以上、下手に動いて迷子にでもなったら目も当てられないからな。

　というわけでまず俺が行ったことは拠点作りだった。といってもテントを張るだけなんだけどもね。

　それから俺は周辺を散策することにした。なにせここはダンジョンの中だ。ランク外とは言え念の為ということもある。

「やっぱり何もないよな」

　暫く歩き回って見たが、やはり何もなかった。いや、正確には落ちているものはあった。空き缶やゴミがな。

　外の張り紙といい面白半分に入ってダンジョンを汚していくバカがいたようだ。壁にも落書きみたいなものが刻まれていて寧ろこのダンジョンが哀れに思えてきた。

　そうして歩きまわったが、ダンジョンは三十分程度で一周できるぐらいの広さでしかなかった。よくダンジョンの話で見るような地下へ行けるような構造でもない。

　モンスターが出てくるような様子もなかった。ただなんとなくどこかから見られているような気配も感じたような？

　しかし気になるところを見てみても特に怪しいものはみつからなかった。念のため護身用としてキャンプ用のサバイバルナイフを所持しているが使う必要はないかもな。
　
　しかし本当に何もないダンジョンだな。流石放置されていたダンジョンといったところか。

　ダンジョンが見つかると発見された土地の所有者は殆どが大喜びするというがこのダンジョンが見つかった時、あの爺さんはどう思ったのか……。

　とは言え落書きされても放って置くというのもな。もしかしたら管理するのも無駄と思ったのかもしれないけど、ちょっと違和感がある。

「ま、いいか。そろそろ昼だし、何か食べよう」

　ソロキャンプではキャンプ飯も醍醐味の一つだ。しかも初ダンジョン内でのキャンプ飯だからな。

　なんとなくテンションが上がる。問題は火を起こして大丈夫かなといったところだが、ダンジョンの中心部は広く出入り口も近い場所を選べばいいか。

　そもそもで言えば実際にダンジョンを探索する人、これを冒険者というのだが彼らはダンジョンで寝泊まりすることもあるがその場合普通にダンジョン内でも火を起こすそうだ。

　それでも酸欠にならないあたりダンジョンでは不思議な力が働いているのだろう。

　とは言え一応は安全の為に出入り口近くを選んで火を起こした。基本的に着火剤と火おこし器、あとはバーナーで簡単に火が起こせる。今回は炭も持ってきたから火力も十分。

　そして出来上がったのは定番のカレーライスだった。ダンジョンの中で食べるカレーライスというのも中々おつなものである。

　退去費用としてある程度纏まったお金も手に入ったからな。素材はそれなりにいいのを購入してある。

　野菜も肉もたっぷりでうん！　旨い！　といってもソロキャンだから本当に俺一人で楽しんでる形だ。
　
　こんな時に彼女がいたらまた楽しかったかな……なんて虚しいことを思ってしまった。婚約者に裏切られたというのに中々女々しいな――うん？

「ジーーーーッ――サッ！」
　
　その時、確かに俺は見た。ダンジョンの物陰からこちらを覗き見てきた一匹の犬、いや二本脚で立つ犬を――