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第一章 モンスターとの出会い編
第5話 モコとお出かけ
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明朝から俺とモコはダンジョンを出てホームセンターに向かうことにした。山を下りて徒歩で向かう。距離的には徒歩で三十分は歩く必要があるがそれは仕方ないだろう。
「ワウ♪ ワウ♪」
モコはすごくごきげんだ。ダンジョンから離れるのは初めてに見えるし外の世界を見るのが楽しくて仕方ないといったところか。
「ワウ!」
「お~い。はしゃぐのはいいけど逸れないように気をつけてな」
蝶々を見つけてモコが追いかけ回している。二本足で歩いているが、その姿は昆虫にじゃれる子犬そのものだ。とても微笑ましい。
それから暫くは楽しそうにしているモコを見ながら山を下りていった。モコのおかげでこの時間も全く退屈しなかった。
「ワンワン!」
モコが俺のズボンを引きながら吠えた。見るとモコの視線の先に公園があった。児童公園のようで子どもたちが元気に遊んでいる。
「あそこに寄ってみたいのかい?」
「ワン!」
俺の問いかけに答えるモコ。恐らくだが子どもたちが遊んでいる遊具に興味を持ったのだろう。
公園には滑り台やブランコなどが揃っているからな。好奇心旺盛なモコが興味を持つのも仕方ないか。
公園の案内板を見るとどうやらモンスターと一緒に来るのも問題ないようだ。これなら入っても大丈夫だろう。
「ちょっと寄ってみるか」
「ワンワン!」
俺の言葉に反応してモコがはしゃいだ。モコは俺の言っていることを理解しているようなんだよな。賢い上に可愛いなんて最高かよ!
「あ! 犬が二本足で歩いてるよ!」
「可愛い何これ~」
「俺知ってる! モンスターっていうんだよな!」
公園に入るとモコはあっという間に子どもたちに囲まれてしまった。見た目にも可愛らしいモコに子どもたちは興味津々な様子だ。
「これお兄ちゃんのペットなの?」
「あぁ。俺の大事な友だちだよ」
「名前何ていうの~?」
「モコだよ」
「ワン♪」
子どもたちの質問に答えてモコの頭を撫でるとモコが嬉しそうに声を上げた。そんな様子に子どもたちの目がキラキラと輝いていく。
「私も撫でていい~?」
「モコどうかな?」
「ワオン♪」
モコに聞いてみるとごきげんな様子で吠えた。問題ないようだな。
「いいってさ。優しく撫でてあげてくれ」
「わ~いモコ~」
「わぁ~モフモフだ~」
「気持ちいい~」
子どもたちから大人気なモコ。その流れで自然とモコは子どもたちと一緒に遊ぶことになった。モコは子どもたちと滑り台やブランコで遊んでいる。
楽しそうなモコと子どもたちを見ているとなんとも微笑ましい気持ちになるな。
「ンまぁ! なんザマスか! ンまぁンまぁ!」
そんな心地よい気分を台無しにする金切り声が公園に響き渡った。
声のした方を見るとやけに角が鋭そうな眼鏡を掛けた太めの女がこっちを見て眉を顰めていた。
そしてノッシノッシという擬音が聞こえてきそうな大股歩きでこっちに近づいてくる。
なんというか真っ赤で派手な服装といい自己主張感の強そうな女だが――
「ンまぁ! ンまぁ! 一体どういうことザマスか! なんで公園に汚らわしいモンスターがいるザマスか! ンまぁ!」
口調からして大分インパクトのある女だが、どうやらモコに対して文句を言ってるようだぞ。
「すみません。俺がモコの飼い主なんですが何か問題が?」
「ンまぁ! 貴方がこの汚らわしいモンスターの飼い主ザマスか! ンまぁ!」
汚らわしいと聞いて正直気分が悪い。一体なんなんだこの女は――
「ママ!」
「ンまぁ! 健太! ンまぁ! そんな汚らわしいモンスターと一緒だなんてンまぁ! 早くこっちに来るザマス!」
どうやらモコと遊んでいた子どもたちの中にこの女の息子がいたようだな。
見ると眼鏡を掛けた男の子だった。ただこの女ほど尖った眼鏡はしていないし大人しそうな印象の子だった。
「ママ、モコはとてもいい子なんだよ」
「ンまぁ! 何を言ってるザマスか! そんな汚らわしいモンスター一体どんな病気を持ってるかもわからないザマスよ!」
さっきから失礼な女だなこいつは。
「あの、ちょっと失礼では?」
「ンまぁ! あんたは黙るザマス! 大体公共の場にモンスターなんて連れてきてどういうつもりザマス!」
いやどういうつもりと言われてもな。
「案内板を見ましたがモンスターと一緒に来るのは許可されてるようでしたが?」
「ンまぁ! 生意気な飼い主ザマス! そんなの関係ないザマス! 宅の旦那は議員事務所でスタッフとして働いているザマスよ!」
「はぁ……」
議員事務所のスタッフってその自己紹介は何か意味があるのか?
「とにかくその汚物を持ってさっさと出ていくザマス!」
「は? さっきから聞いてれば……」
「言うことを聞かないなら警察を呼ぶザマスよ!」
「警察……」
その言葉に一瞬怯んだ。本来なら問題ないが俺は冒険者として登録していないしそもそもジョブも得ていない。
そうなると警察が来るのはマズい。冒険者か聞かれた時点で詰むかもしれない。
しかし、だからといってここで警察を呼ばないでくれなんて頼めない。そんなことを言えばそこが弱みだと気付かれてしまう。
「クゥ~ン……」
気づくとモコが俺の足元で細い声を発していた。不安そうに俺の顔を見上げてきてる。
「ンまぁ! なんザマス汚らわしい! シッシ!」
「ワン! ワンワン!」
「ンまぁ! 生意気ザマス!」
追い払うような仕草を見せる女に向けてモコが吠えた。モコは利口だからこの女の悪意に気がついているのだろう。
「さっさと警察を呼んで保健所にも連絡するザマス!」
そう言って女がスマフォを取り出した。それを見て俺は腹を決めた。
「――本当に警察を呼ぶ気か? あんたが後悔するだけだぞ」
俺は心情とは裏腹に強気な姿勢で挑むことにしたんだ。ここで弱みを見せたら思うツボだからだ。
「ンまぁ! なんザマスかその態度は!」
「それはこっちのセリフだ。さっきも言っただろう? ここはモンスターの出入りが許可されてるんだ。それなのに警察を呼んだところであんたが恥をかくだけだぞ。議員事務所で働いている旦那にも迷惑を掛けるかもな」
「ンまぁ!」
俺が言い返すと女が目を見開いた。だが表情からは焦りも感じられた。強気に出たことで迷いが生じているようだ。
だが後一押し何か欲しいところかもしれない。
「なんだいあんた随分と偉そうじゃないか」
俺と女のやりとりの最中、別な女の声が公園の入口から聞こえてきた。
見ると髪を金色に染めた女がこっちに近づいてきていた。美人だが目つき鋭くキツイ印象を受ける。
「あ、あんたは鬼姫――」
すると俺とモコを貶していた女の表情が一変した。今までの強気な態度が嘘のようであり明らかに怯えている。
「あたしも知ってるけどさ、この公園はモンスターの出入りが許可されてる筈だけど何か問題があるのかい? 大黒さんよ」
「ンまぁ、そ、それは、ンまぁ……」
鬼姫が詰め寄ると大黒と呼ばれた女の声が萎んでいった。
「それとあんた、弟の会社から金借りてるよな? 期日を過ぎてもまだ返済ないらしいが、それなのにこんなところでクレーマーみたいな真似してどういうつもりだい? なんならすぐにでも回収するようこっちから言ってやってもいいんだよ?」
「ヒッ! ご、ごめんなさいザマス!」
鬼姫が問い詰めると大黒が肩を震わせて謝罪した。
「は? 謝るのはあたしにじゃないだろう?」
だが鬼姫は俺とモコをチラッと見た後で更に言葉を重ねた。大黒は追い詰められた豚のような顔を見せている。
「ぐぬぬ――し、失礼なことを言って申し訳無いザマス……」
「――いや、まぁわかってもらえたならいいですよ」
「ワン」
結局鬼姫に言われ大黒が俺とモコに頭を下げてきた。おかげで警察への連絡も免れそうで安堵していたりする。
「――ンまぁ……武もう帰るザマスよ!」
「え? う、うんママ――」
そして大黒は肩を落として武という子どもを連れて公園から出ていった。
しかし強烈な女だったな。それにしてもこっちの鬼姫には助けられてしまったな――
「ワウ♪ ワウ♪」
モコはすごくごきげんだ。ダンジョンから離れるのは初めてに見えるし外の世界を見るのが楽しくて仕方ないといったところか。
「ワウ!」
「お~い。はしゃぐのはいいけど逸れないように気をつけてな」
蝶々を見つけてモコが追いかけ回している。二本足で歩いているが、その姿は昆虫にじゃれる子犬そのものだ。とても微笑ましい。
それから暫くは楽しそうにしているモコを見ながら山を下りていった。モコのおかげでこの時間も全く退屈しなかった。
「ワンワン!」
モコが俺のズボンを引きながら吠えた。見るとモコの視線の先に公園があった。児童公園のようで子どもたちが元気に遊んでいる。
「あそこに寄ってみたいのかい?」
「ワン!」
俺の問いかけに答えるモコ。恐らくだが子どもたちが遊んでいる遊具に興味を持ったのだろう。
公園には滑り台やブランコなどが揃っているからな。好奇心旺盛なモコが興味を持つのも仕方ないか。
公園の案内板を見るとどうやらモンスターと一緒に来るのも問題ないようだ。これなら入っても大丈夫だろう。
「ちょっと寄ってみるか」
「ワンワン!」
俺の言葉に反応してモコがはしゃいだ。モコは俺の言っていることを理解しているようなんだよな。賢い上に可愛いなんて最高かよ!
「あ! 犬が二本足で歩いてるよ!」
「可愛い何これ~」
「俺知ってる! モンスターっていうんだよな!」
公園に入るとモコはあっという間に子どもたちに囲まれてしまった。見た目にも可愛らしいモコに子どもたちは興味津々な様子だ。
「これお兄ちゃんのペットなの?」
「あぁ。俺の大事な友だちだよ」
「名前何ていうの~?」
「モコだよ」
「ワン♪」
子どもたちの質問に答えてモコの頭を撫でるとモコが嬉しそうに声を上げた。そんな様子に子どもたちの目がキラキラと輝いていく。
「私も撫でていい~?」
「モコどうかな?」
「ワオン♪」
モコに聞いてみるとごきげんな様子で吠えた。問題ないようだな。
「いいってさ。優しく撫でてあげてくれ」
「わ~いモコ~」
「わぁ~モフモフだ~」
「気持ちいい~」
子どもたちから大人気なモコ。その流れで自然とモコは子どもたちと一緒に遊ぶことになった。モコは子どもたちと滑り台やブランコで遊んでいる。
楽しそうなモコと子どもたちを見ているとなんとも微笑ましい気持ちになるな。
「ンまぁ! なんザマスか! ンまぁンまぁ!」
そんな心地よい気分を台無しにする金切り声が公園に響き渡った。
声のした方を見るとやけに角が鋭そうな眼鏡を掛けた太めの女がこっちを見て眉を顰めていた。
そしてノッシノッシという擬音が聞こえてきそうな大股歩きでこっちに近づいてくる。
なんというか真っ赤で派手な服装といい自己主張感の強そうな女だが――
「ンまぁ! ンまぁ! 一体どういうことザマスか! なんで公園に汚らわしいモンスターがいるザマスか! ンまぁ!」
口調からして大分インパクトのある女だが、どうやらモコに対して文句を言ってるようだぞ。
「すみません。俺がモコの飼い主なんですが何か問題が?」
「ンまぁ! 貴方がこの汚らわしいモンスターの飼い主ザマスか! ンまぁ!」
汚らわしいと聞いて正直気分が悪い。一体なんなんだこの女は――
「ママ!」
「ンまぁ! 健太! ンまぁ! そんな汚らわしいモンスターと一緒だなんてンまぁ! 早くこっちに来るザマス!」
どうやらモコと遊んでいた子どもたちの中にこの女の息子がいたようだな。
見ると眼鏡を掛けた男の子だった。ただこの女ほど尖った眼鏡はしていないし大人しそうな印象の子だった。
「ママ、モコはとてもいい子なんだよ」
「ンまぁ! 何を言ってるザマスか! そんな汚らわしいモンスター一体どんな病気を持ってるかもわからないザマスよ!」
さっきから失礼な女だなこいつは。
「あの、ちょっと失礼では?」
「ンまぁ! あんたは黙るザマス! 大体公共の場にモンスターなんて連れてきてどういうつもりザマス!」
いやどういうつもりと言われてもな。
「案内板を見ましたがモンスターと一緒に来るのは許可されてるようでしたが?」
「ンまぁ! 生意気な飼い主ザマス! そんなの関係ないザマス! 宅の旦那は議員事務所でスタッフとして働いているザマスよ!」
「はぁ……」
議員事務所のスタッフってその自己紹介は何か意味があるのか?
「とにかくその汚物を持ってさっさと出ていくザマス!」
「は? さっきから聞いてれば……」
「言うことを聞かないなら警察を呼ぶザマスよ!」
「警察……」
その言葉に一瞬怯んだ。本来なら問題ないが俺は冒険者として登録していないしそもそもジョブも得ていない。
そうなると警察が来るのはマズい。冒険者か聞かれた時点で詰むかもしれない。
しかし、だからといってここで警察を呼ばないでくれなんて頼めない。そんなことを言えばそこが弱みだと気付かれてしまう。
「クゥ~ン……」
気づくとモコが俺の足元で細い声を発していた。不安そうに俺の顔を見上げてきてる。
「ンまぁ! なんザマス汚らわしい! シッシ!」
「ワン! ワンワン!」
「ンまぁ! 生意気ザマス!」
追い払うような仕草を見せる女に向けてモコが吠えた。モコは利口だからこの女の悪意に気がついているのだろう。
「さっさと警察を呼んで保健所にも連絡するザマス!」
そう言って女がスマフォを取り出した。それを見て俺は腹を決めた。
「――本当に警察を呼ぶ気か? あんたが後悔するだけだぞ」
俺は心情とは裏腹に強気な姿勢で挑むことにしたんだ。ここで弱みを見せたら思うツボだからだ。
「ンまぁ! なんザマスかその態度は!」
「それはこっちのセリフだ。さっきも言っただろう? ここはモンスターの出入りが許可されてるんだ。それなのに警察を呼んだところであんたが恥をかくだけだぞ。議員事務所で働いている旦那にも迷惑を掛けるかもな」
「ンまぁ!」
俺が言い返すと女が目を見開いた。だが表情からは焦りも感じられた。強気に出たことで迷いが生じているようだ。
だが後一押し何か欲しいところかもしれない。
「なんだいあんた随分と偉そうじゃないか」
俺と女のやりとりの最中、別な女の声が公園の入口から聞こえてきた。
見ると髪を金色に染めた女がこっちに近づいてきていた。美人だが目つき鋭くキツイ印象を受ける。
「あ、あんたは鬼姫――」
すると俺とモコを貶していた女の表情が一変した。今までの強気な態度が嘘のようであり明らかに怯えている。
「あたしも知ってるけどさ、この公園はモンスターの出入りが許可されてる筈だけど何か問題があるのかい? 大黒さんよ」
「ンまぁ、そ、それは、ンまぁ……」
鬼姫が詰め寄ると大黒と呼ばれた女の声が萎んでいった。
「それとあんた、弟の会社から金借りてるよな? 期日を過ぎてもまだ返済ないらしいが、それなのにこんなところでクレーマーみたいな真似してどういうつもりだい? なんならすぐにでも回収するようこっちから言ってやってもいいんだよ?」
「ヒッ! ご、ごめんなさいザマス!」
鬼姫が問い詰めると大黒が肩を震わせて謝罪した。
「は? 謝るのはあたしにじゃないだろう?」
だが鬼姫は俺とモコをチラッと見た後で更に言葉を重ねた。大黒は追い詰められた豚のような顔を見せている。
「ぐぬぬ――し、失礼なことを言って申し訳無いザマス……」
「――いや、まぁわかってもらえたならいいですよ」
「ワン」
結局鬼姫に言われ大黒が俺とモコに頭を下げてきた。おかげで警察への連絡も免れそうで安堵していたりする。
「――ンまぁ……武もう帰るザマスよ!」
「え? う、うんママ――」
そして大黒は肩を落として武という子どもを連れて公園から出ていった。
しかし強烈な女だったな。それにしてもこっちの鬼姫には助けられてしまったな――
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