親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第一章 モンスターとの出会い編

第8話 買い物帰りにて

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「ワウワウ」
「うん?」
  
 出入り口を出たところでモコに裾を引っ張られた。モコが興味を持ったのは家庭菜園用の農作物の種のようだった。

 ホームセンターでは農業関連の商品も扱っていたのだ。ちなみに肥料や農具などもありそれらはホームセンターで購入している人もちらほら見受けられた。

「これを植えると作物が育つんだ」
「ワウ!」

 モコが目をキラキラさせた。俺の言ってることをモコはしっかり理解しているようなんだよな。賢い子だと思う。

「ワウワウ!」

「え? これが欲しいのか? う~ん……」

 モコにねだられてしまったが正直迷いどころだ。購入したとしても許可もなく勝手に作物を育てるわけにもいかないもんな。

「クゥ~ン……」

 クッ! とは言え甘えたような声に加えてそんなウルウルした目で見られたら……ま、いいか。そこまで高いものじゃないし、もしかしたらどこかで山のオーナーと再会できれば聞くことは可能だろう。

「じゃあこれとこれと……」

 モコが欲しがった作物の種と菜園に使えそうな基本的なものを購入した。結局持ってきたリュックはパンパンになったので追加で小さなリュックも購入しモコにも背負ってもらった。

「さて。荷物が多くなったけど後一つスーパーによって食料と飲み物買っていかないとな」
「ワウ! ワウワウ♪」

 食料と聞いてモコが目を輝かせ嬉しそうに声を上げた。しかしモコは元気だな。

「ねぇあんた。もしかして冒険者かい?」

 ホームセンターを出てスーパーに向かって歩いていると後ろから声が掛かった。見ると三人の男がこっちに近づいてきた。一人は金髪のホストっぽい男。その腰にはあまりおしゃれと言えない巾着のようなものが吊り下がっている。

 もう一人はスキンヘッドにサングラスといった風防の厳つい男。

 後はモヒカン風の髪をした小柄な男だった。見た目で判断するのもどうかと思うが、普段なら絶対関わり合いになりたくないタイプの男たちだ。

「えっと、俺に何か?」
「質問の答えになってねぇだろうが。冒険者か? と聞いてんだろう」

 スキンヘッドの男が凄むような口調で聞いてきた。どこか脅すようですらある。

 冒険者――公園で出会った鬼姫もそうだったが基本的にジョブストーンを手に入れてジョブを手にした人をそう称す。ダンジョンが当たり前のように発見されるようになりジョブストーンも見つかるようになったことから国は冒険者に関しての法律を定めた。

 これによってジョブを手にした者は国が定めた冒険者ギルドに所属する義務が生じ冒険者としてギルドに登録する必要がある。
 
 国が関わることに懸念を示す人もいたようだが当然と言えば当然だ。ジョブを手にした人間は通常ではありえないほどの能力を授かることになる。

 それはダンジョン攻略にはなくてはならない力だが、当然誰もがそれを正しいことに使うわけじゃない。そうなると余計なトラブルを避ける為にもジョブを持った人間を管理する組織が必要だ。

 それが国の機関でもある冒険者ギルドというわけだ。で、この三人は俺が冒険者か、つまりギルドに登録してるのかと聞いているわけだ。

 しかし参ったな。そもそも俺はジョブストーンを持ってない。モコは自分の意志でついてきてくれてるだけだ。

 とは言えそれをこの場でバカ正直に話しても面倒事になるだけだしな。

「見ず知らずの奴に答える義理はないだろう? それじゃあ」

 よく考えてみれば別に登録してるかどうか答える義務はない。これが警察の職務質問などなら事情は変わってくるがこの三人が警察官ってことはないだろう。

 だから適当にはぐらかして帰ろうと思ったんだが。

「何だこいつ生意気なやつだな」
「おい、勝手に離れようとすんなよ」

 男たちが俺たちの行く手を阻むように回り込んできた。しつこい連中だな……。

「お前、どっちにしろそんなモンスターを連れ歩いているんだから冒険者なのは間違いないんだろう? しかもさっき随分と色々買っていたようで随分と羽振りがいいみたいじゃねぇか。だからよ、ここは同業者のよしみで俺等に金、わけてくれない?」
「……は?」
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