親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

文字の大きさ
13 / 190
第一章 モンスターとの出会い編

第12話 先ずは腹ごしらえ

しおりを挟む
 俺とモコは無事拠点としているダンジョンまで戻って来ることが出来た。色々とあった為かなんだか実家に帰ってきたかのような安心感がある。

「さてモコ。大事なのはここからだ。わざわざホームセンターまで行ったのには、暮らさせてもらっているこのダンジョンへのお礼も込めてなんだ」
「ワウ?」

 モコがコテっと可愛らしく首を傾けた。仕草の一つ一つに実に愛嬌がある。

「とりあえずお昼を食べてから作業開始かな」
「ワウ! ワンワン♪」

 お昼と聞きモコがはしゃぎ始めた。買い物で山を移動したしモコもお腹が減ってるのかもな。

 スーパーで食材も買ったしとりあえずこれで腹ごしらえかな。鍋を用意してラーメンを作ることにした。
 
 丼に茹で上がった麺、スープ、メンマ、チャーシューと煮玉子を入れてと、完成したラーメンをモコと一緒に食べる。

「味はどうかな?」

「ワオン♪」

 モコにはレンゲとフォークを用意してあげた。スープは熱いから気をつけて見ておく必要があるが器用に食べているな。

「……ワウ?」
「うん?」
 
 モコが俺が使っている箸を見て小首をかしげた。どうやらこの道具が気になったようだ。

「これは箸といって――」

 モコに説明した。するとモコは理解出来たのか興味津津に箸を見ていた。割り箸が余っていたので渡してみるとマジマジと眺め見様見真似で箸で摘む仕草を見せた。

「モコは本当に器用だな~」
「ワン♪」

 俺に褒められていると感じ取ったのかモコは得意げに今度は箸でラーメンを啜りだした。見様見真似だろうけどまさかラーメンの食べ方までマスターしてしまうとは。

 それになんか前足で器用に挟んだりして箸を使ってる姿はなんというか、実にシュールな光景だった。モコ本人は至って真面目なのが余計に面白く見えたのかもしれない。

 そんな風にモコと食事を楽しんでいたのだが――

「ピキ~」

 ふと俺の側で奇妙な鳴き声が聞こえてきた。モコのではない。一旦食べる手を止めて周囲を確認すると手にひんやりとした感触。
 
 見るとそこには小さな青い物体――このプルプルしたジェル状の生物は俺もよくしっている。

「これはスライムか?」
「ワン」

 モコもなになに~? と腰のあたりから覗き込んできた。

「ピ~♪」
 
 スライムは俺が気がついたことを察したのか手にすり寄ってきた。

 この手のスライムがダンジョンに現れるモンスターだということは知っている。

 ただモコと同じで敵意はなさそうだし、かなり人懐っこいようにも思える。

「何だお前。どこから来たんだ?」
「ピッ」

 スライムがプルプル震えた。モコもそうだがここで登場するモンスターはなんとも愛嬌があって可愛い。

「ピキィ」

 するとスライムが更にプルンプルン震えた後――俺が一旦置いておいたラーメンの丼目掛けてダイブした。おいおい!

「危ない!」
「ワオン!」

 俺が叫ぶと同時にモコが手を出してスライムを受け止めた。ふぅよかった。時間が経ったとはいえスープはまだ熱い。

「ピキィ~ピキィ~!」
「ワンワン!」

 だがスライムはモコに邪魔されたと思ってピョンピョン跳ねて抗議している様子だった。それに対しモコはスライムを諭しているようにも思える。

 傍から見るとなんとも微笑ましい光景でもある。だがどうしてこのスライムはスープなんかに……まさか。

「お前、これが食べたいのか?」
「ピキィ~ピキ~」

 スライムがプルプル震えた。これは肯定と見て良さそうだ。

「そうだったのか。だけどな、このスープは熱いから飛び込んだりしたら火傷するかもしれなくて危ないんだぞ。だからほら」

 俺はプラスチックの小さな容器に麺とナルト、メンマを移してあげた。最後にしっかり冷ましてあげたスープを注ぐ。

「ほら食べていいぞ」
「ピッ~ピキ~♪」

 俺が箸でスライムの近くに麺を持っていくとプルプル震えご機嫌な様子でラーメンをすすった。

 正直スライムの口がどこにあるかはよくわからないが、ごきげんにラーメンを啜っているのでしっかり食べているのだろう。

 スライムはどうやらラーメンを気に入ったようで麺だけじゃなく、ナルト、チャーシュー、メンマまでしっかり食べた。レンゲでスープを掬って近づけるとそれも嬉しそうに飲んでいた。

 しょっぱくないかなと心配したが大丈夫なようで、むしろラーメンをすごく気に入ったようだぞ。

「ピッ。ピキィ~♪」

 食事を終えた後、スライムが更に甘えたように俺に擦り寄ってきた。正直可愛い。しかもスライムが甘えてきたのを見てモコも対抗するように寄り添ってきた。

 悪い気はしない。というか自然と頬が緩む。モンスターとは思えないほど可愛らしいんだよな。
 
 とはいえ、このスライムどうしようかな……。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

竜王、冒険者になりましたっ!〜最強チートの俺ですが、人間界の常識をゼロから学び直しています〜

森マッコリ
ファンタジー
最強竜王、人の姿で再出発!常識ゼロで冒険者ライフ! 大昔に起きた大戦で竜の王となったアグナレス! そんなアグナレスには一つだけ悩みがあった。 それは....「超絶暇」だったのだ! アグナレスは暇潰しとして人間になる事に決め世界を旅する事に! 竜王が織り成すドタバタ最強ファンタジー!

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

小さなフェンリルと私の冒険時間 〜ぬくもりに包まれた毎日のはじまり〜

ちょこの
ファンタジー
もふもふな相棒「ヴァイス」と一緒に、今日もダンジョン生活♪ 高校生の優衣は、ダンジョンに挑むけど、頼れるのはふわふわの相棒だけ。 ゆるふわ魔法あり、ドキドキのバトルあり、モフモフ癒しタイムも満載! ほんわか&ワクワクな日常と冒険が交差する、新感覚ファンタジー!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

処理中です...