親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

文字の大きさ
19 / 190
第二章 冒険者登録編

第18話 腕輪

しおりを挟む
 ジョブストーンは特別な腕輪などに嵌めることで装備したことになり効果を発揮する――だが俺はその腕輪を持っていなかった。

 確かジョブストーンの効果を発揮する為の腕輪はオークションなんかでも出品されてたりするけど――試しにタブレット端末で見てみたら落札価格は最低でも百万円以上にはなっていた。

「こんな感じの腕輪が必要なんだけどやっぱり高いなぁ」
「クゥ~ン」
「ピキィ……」

 モコとラムにも画面を見せつつ説明した。流石に職を失った今の俺にこの値段はキツイ。立ち退き料を貰ったとはいえな。何とか安く手に入れる方法はないだろうか? ネットで検索したら何かあるかな?

「クゥ~ン」

 俺が悩んでいるとモコが一声鳴きながらすり寄ってきた。俺が悩んでるの見て心配してくれたのかも知れない。

「ピキッ! ピキィ~!」

 更にはラムも体に跳び乗り鳴き声を上げていた。ただ、ラムはモコとはまた違った意図がある気がする。

「ラム、どうかしたのか?」
「ピキッ! ピキイィィイイ!」

 するとラムの体の一部がポンッと分裂し地面に落ちた。

「お、おいおいラム大丈夫か!」
「ワンワン!」

 俺がラムに駆け寄り体を持ち上げた。モコも心配そうにしていた。

「ピキィ~」
 
 だけどラムはどうやら平気そうだ。特に怪我している様子もない。しかもラムは体を伸縮させて分裂させた体の一部を指し示していた。

 改めてそれを見てみると――分裂したラムの一部は輪っかの形のまま留まっていた。よく見ると真ん中が窪んでいる。

「これって、まさか腕輪?」
「ピキ~♪」

 ラムが肯定するように鳴いた。まさかこんな芸当ができるとは思わなかった。タブレットでどんなものか見せたから真似して作ったのかも知れない。

 それにこの窪みの大きさからしてジョブストーンを嵌めて見てってことなんだろうな。

 ただ――ジョブストーンを嵌めて効果があるのはダンジョンで手に入る特殊な鉱石を素材にした腕輪が必要だとネットにはあった。オークションでもいい値がするのはその影響でもある。
 
 だからラムがくれたこの腕輪を使ったからと効果が出るわけないんだろうけど――折角ラムが俺の為にやってくれたことだしな。

「ありがとうラム。使わせてもらうよ」

 俺はそう答えて、腕輪を装着した。腕輪はゴムのように伸縮性があって俺の腕にピッタリ収まった。そして窪みにジョブストーンを嵌め込んで見る。

 これもピッタリと嵌ってくれた。

「おお! なんだかカッコいいぞ! ありがとうなラム。すごく嬉しいよ」
「ピキィ♪」

 俺がお礼を言うとラムも嬉しそうだった。その時だった――腕輪に嵌めたジョブストーンがさっきよりも強く輝き始めた。輝きは間もなくして小さくなり淡い光を保ったまま維持されている。

「え? まさかこれって――ステータスオープン!」

 俺は改めてジョブストーンのステータスを見た。すると――

ジョブ名:農民
所持者:風間 晴彦
ジョブレベル:0
戦闘力:E
魔法力:D
信仰力:C
生産力:B
成長力:D
スキル
土壌改良(5㎡)、土鑑定、耕作力向上(小)、栽培力向上(小)
 
 今度は装備者が俺になっていた――つまり、ジョブストーンの効果で俺にもジョブが与えられたってことだ。

 これには驚いた。まさかラムから生み出された腕輪でも効果を発揮できるなんてな。

「モコ! ラム! やったぞ! これで俺もジョブ持ちになれた!」
「ワン!」
「ピキ~♪」

 モコもラムも嬉しそうに鳴いていた。俺も嬉しくなって思わず小躍りしたくなった。。こんな気持ちは久しぶりだな。

 恋人に裏切られたり会社を首になったりと嫌なことばかりだったけどまさか、ダンジョンにきてこんなに嬉しいことがあるなんて思わなかった。

「腕輪も役に立ったよ。本当にありがとうなラム!」

 改めてお礼を言うとラムがプルプルと震えた。そんなラムを撫でその後はモコも撫でてあげた。

 さて、次はジョブについて詳しく見てみないとな――
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

小さなフェンリルと私の冒険時間 〜ぬくもりに包まれた毎日のはじまり〜

ちょこの
ファンタジー
もふもふな相棒「ヴァイス」と一緒に、今日もダンジョン生活♪ 高校生の優衣は、ダンジョンに挑むけど、頼れるのはふわふわの相棒だけ。 ゆるふわ魔法あり、ドキドキのバトルあり、モフモフ癒しタイムも満載! ほんわか&ワクワクな日常と冒険が交差する、新感覚ファンタジー!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。 ----- ※小説家になろう様にも掲載中。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

処理中です...