22 / 190
第二章 冒険者登録編
第21話 山とダンジョンの後継者
しおりを挟む
「もしかして亡くなっていたのか?」
俺は思い切って落葉の爺さんについて確認してみた。彼女の様子からそんなことを感じ取ったからだ。
「はい。そうなんです。自宅で急に倒れてそのまま――」
やはりそうだったのか……随分と元気そうに見えたのだけどやはり人間いつどうなるかわからないな。
「いい人だったんだけどな……」
「そ、そうですよね! お爺ちゃんはいい人ですよね!」
俺が落葉の爺さんの顔を思い出しながら呟くと、山守がぐいっと顔を近づけてきた。よ、よく見ると可愛い子だな。クリクリっとした大きな瞳で見られるとちょっとドキッとしてしまう。
「あ、あぁ。山には厳しい人だったけど、こっちが正しく山を利用する分にはとやかく言われなかったし面倒見も良かったよ」
「そうなんです! お爺ちゃんはとっても厳しい人だったけど、でも本当は誰よりも山のことを愛している人でした。山のことを一番に考えてくれる人だったんです!」
山守が目を輝かせて熱弁する。こうして聞いていると改めてあの爺さんは凄い人だったんだなぁと思ってしまうな。
「でも、お爺ちゃんを誤解している人も多くて……親族も価値がある遺産は散々奪い合って置きながら、この山に関しては誰も引き継ごうとしなかったんです。折角ダンジョンが見つかったのにお宝も何もない負の遺産だなんていい出して……私、腹が立ってつい言っちゃったんです! この山は私が相続して守ってみせるって!」
「えぇ! 君が!」
「ワオン!?」
「ピキィ~!?」
俺が驚くのに釣られてかモコとラムもびっくりしていた。二匹とも目を見開いている。
「は、はい! お爺ちゃんには本当にお世話になったから。お爺ちゃんのおかげで山が守れたって……そんな私がこの山を守れないなんておかしいじゃないですか」
どうやら彼女の意思は固いみたいだな。落葉爺さんのことを心から慕っているのがよく分かったよ。しかし、そうなると気になる点がある。
「君はまだ若いみたいだけど、この山を相続して大丈夫なのか? 管理も大変だと思うが」
「う!」
山守がたじろいだ。わかりやすい反応だな。この様子を見るにやっぱり山を相続するもその後が大変そうだ。
「やっぱり簡単ではないか」
「じ、実はそうなんです。山の維持にもお金が掛かるみたいだし固定資産税が掛かって」
やはりそこか。実はこれがただの山林というだけなら固定資産税そのものはそこまで高くはない。しかしここには放置されているとはいえダンジョンが見つかっている。
この場合、支払う税に大きく伸し掛かることになるとは聞いた事があったな。もっとも普通ならダンジョンから得られる恩恵の方が大きいので固定資産税などを支払っても十分なプラスが見込めるのだが、ここのようなお宝も手に入らないダンジョンだとそれもない。
一応放置されているダンジョンということで最低限の価格にはなると思うが――
「それで幾らぐらいかかるものなんだ?」
「それが最低でもダンジョン税で年間八十万円。それに加え固定資産税にも上乗せされて合計で年間百五十万円程かかるそうで……」
それは結構掛かるものだな。
「お爺ちゃんが残してくれた遺産は他には?」
「うぅ。私が山を相続すると決めたから残りの遺産は全て他の親族でわけあってしまったんです。だから山とこのダンジョン以外何も残って無くて……」
それはまた酷い話だな。結局山守はお金のかかる山を押し付けられたようなものか。いや、でも山守が自分から望んだ以上、押し付けられたとも違うのかな。ただ他の遺産が貰えないというのは何ともな。
「あの、でも実はちょっとびっくりしてるんです」
「うん? びっくり?」
「はい。ここのことを知ってる親族が散々ダンジョンを馬鹿にしていて、ゴミ捨て場にしか使われてないとか便所の落書きと変わらないとかそんなことを……」
とんでもないな。まぁ最初来た時は確かにそれに近かったが、言い方ってものがあるだろう。
「でも来てみたらそんなことはなかったんです。全然散らかっていないし」
「あ、あぁ。それは一応ここで世話になってる身だからな。俺たちで掃除したんだ。それで今は綺麗になってる」
「えぇ! そ、そうだったんですか! ということはもしかしてこの子たちも?」
「あぁ。一緒に掃除を手伝ってくれた」
「ワンワン!」
「ピキィ~!」
俺が説明するとモコとラムも誇らしげにしていた。そんな姿も可愛らしい。
「はぁこんなに可愛いのにお手伝いまで、お利口さんですね。最高ですぅ~」
「ピキ~♪」
「ワフン♪」
山守が二匹を抱きしめて喜びの言葉を伝えていた。それにしてもモコとラムもすっかり彼女に懐いているな。
俺は思い切って落葉の爺さんについて確認してみた。彼女の様子からそんなことを感じ取ったからだ。
「はい。そうなんです。自宅で急に倒れてそのまま――」
やはりそうだったのか……随分と元気そうに見えたのだけどやはり人間いつどうなるかわからないな。
「いい人だったんだけどな……」
「そ、そうですよね! お爺ちゃんはいい人ですよね!」
俺が落葉の爺さんの顔を思い出しながら呟くと、山守がぐいっと顔を近づけてきた。よ、よく見ると可愛い子だな。クリクリっとした大きな瞳で見られるとちょっとドキッとしてしまう。
「あ、あぁ。山には厳しい人だったけど、こっちが正しく山を利用する分にはとやかく言われなかったし面倒見も良かったよ」
「そうなんです! お爺ちゃんはとっても厳しい人だったけど、でも本当は誰よりも山のことを愛している人でした。山のことを一番に考えてくれる人だったんです!」
山守が目を輝かせて熱弁する。こうして聞いていると改めてあの爺さんは凄い人だったんだなぁと思ってしまうな。
「でも、お爺ちゃんを誤解している人も多くて……親族も価値がある遺産は散々奪い合って置きながら、この山に関しては誰も引き継ごうとしなかったんです。折角ダンジョンが見つかったのにお宝も何もない負の遺産だなんていい出して……私、腹が立ってつい言っちゃったんです! この山は私が相続して守ってみせるって!」
「えぇ! 君が!」
「ワオン!?」
「ピキィ~!?」
俺が驚くのに釣られてかモコとラムもびっくりしていた。二匹とも目を見開いている。
「は、はい! お爺ちゃんには本当にお世話になったから。お爺ちゃんのおかげで山が守れたって……そんな私がこの山を守れないなんておかしいじゃないですか」
どうやら彼女の意思は固いみたいだな。落葉爺さんのことを心から慕っているのがよく分かったよ。しかし、そうなると気になる点がある。
「君はまだ若いみたいだけど、この山を相続して大丈夫なのか? 管理も大変だと思うが」
「う!」
山守がたじろいだ。わかりやすい反応だな。この様子を見るにやっぱり山を相続するもその後が大変そうだ。
「やっぱり簡単ではないか」
「じ、実はそうなんです。山の維持にもお金が掛かるみたいだし固定資産税が掛かって」
やはりそこか。実はこれがただの山林というだけなら固定資産税そのものはそこまで高くはない。しかしここには放置されているとはいえダンジョンが見つかっている。
この場合、支払う税に大きく伸し掛かることになるとは聞いた事があったな。もっとも普通ならダンジョンから得られる恩恵の方が大きいので固定資産税などを支払っても十分なプラスが見込めるのだが、ここのようなお宝も手に入らないダンジョンだとそれもない。
一応放置されているダンジョンということで最低限の価格にはなると思うが――
「それで幾らぐらいかかるものなんだ?」
「それが最低でもダンジョン税で年間八十万円。それに加え固定資産税にも上乗せされて合計で年間百五十万円程かかるそうで……」
それは結構掛かるものだな。
「お爺ちゃんが残してくれた遺産は他には?」
「うぅ。私が山を相続すると決めたから残りの遺産は全て他の親族でわけあってしまったんです。だから山とこのダンジョン以外何も残って無くて……」
それはまた酷い話だな。結局山守はお金のかかる山を押し付けられたようなものか。いや、でも山守が自分から望んだ以上、押し付けられたとも違うのかな。ただ他の遺産が貰えないというのは何ともな。
「あの、でも実はちょっとびっくりしてるんです」
「うん? びっくり?」
「はい。ここのことを知ってる親族が散々ダンジョンを馬鹿にしていて、ゴミ捨て場にしか使われてないとか便所の落書きと変わらないとかそんなことを……」
とんでもないな。まぁ最初来た時は確かにそれに近かったが、言い方ってものがあるだろう。
「でも来てみたらそんなことはなかったんです。全然散らかっていないし」
「あ、あぁ。それは一応ここで世話になってる身だからな。俺たちで掃除したんだ。それで今は綺麗になってる」
「えぇ! そ、そうだったんですか! ということはもしかしてこの子たちも?」
「あぁ。一緒に掃除を手伝ってくれた」
「ワンワン!」
「ピキィ~!」
俺が説明するとモコとラムも誇らしげにしていた。そんな姿も可愛らしい。
「はぁこんなに可愛いのにお手伝いまで、お利口さんですね。最高ですぅ~」
「ピキ~♪」
「ワフン♪」
山守が二匹を抱きしめて喜びの言葉を伝えていた。それにしてもモコとラムもすっかり彼女に懐いているな。
473
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
実家の裏庭がダンジョンだったので、口裂け女や八尺様に全自動で稼がせて俺は寝て暮らす〜元社畜のダンジョン経営〜
チャビューヘ
ファンタジー
過労死寸前でブラック企業を辞めた俺が手に入れたのは、祖父の古民家と「ダンジョン経営システム」だった。
しかもバグで、召喚できるのは「口裂け女」「八尺様」「ターボババア」など日本の怪異だけ。
……最高じゃないか。物理無効で24時間稼働。これぞ究極の不労所得。
元SEの知識でシステムの穴を突き、怪異たちに全自動でダンジョンを回させる。
ゴブリンは資源。スライムは美容液の原料。災害は全て収益に変換する。
「カイトさん、私……きれい?」
「ああ。効率的で、機能美すらある」
「……褒めてる?」
「褒めてる」
口裂け女は俺の言葉で即落ちした。チョロい。だがそれでいい。
ホワイト待遇で怪異を雇い、俺は縁側で茶をすする。
働いたら負け。それが元社畜の結論だ。
これは、壊れた男と健気な怪異たちが送る、ダンジョン経営スローライフの物語。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス
優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました
お父さんは村の村長みたいな立場みたい
お母さんは病弱で家から出れないほど
二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます
ーーーーー
この作品は大変楽しく書けていましたが
49話で終わりとすることにいたしました
完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい
そんな欲求に屈してしまいましたすみません
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
追放された荷物持ち、【分解】と【再構築】で万物創造師になる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーから「足手まとい」と捨てられた荷物持ちのベルク。しかし、彼が持つ外れスキル【分解】と【再構築】は、万物を意のままに創り変える「神の御業」だった!
覚醒した彼は、虐げられていた聖女ルナを救い、辺境で悠々自適なスローライフを開始する。壊れた伝説の剣を直し、ゴミから最強装備を量産し、やがて彼は世界を救う英雄へ。
一方、彼を捨てた勇者たちは没落の一途を辿り……。
最強の職人が送る、痛快な大逆転&ざまぁファンタジー!
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる