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第二章 冒険者登録編
第22話 正直に話してみた
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「あの、改めて本当にありがとうございます。それに最初は本当にごめんなさい」
「謝罪はもういいよ。それよりもさっき宝もないダンジョンって話したけど実は一つ宝があったんだ」
「え! そうなんですか!?」
山守が驚いていた。それもわかる。ここは放置されたダンジョンだ。つまり世間からは何も生み出すことのない無価値なダンジョンと認定された代物なのである。
「実は今、俺が身につけているこれがそうなんだ」
そう言って俺は腕輪に嵌った石を山守に見せてやった。
「えっとこれって?」
「ジョブストーンだ。今日の朝目が覚めたら宝箱が出現してたんだけどその中に入っていたんだよ」
「へぇ! そんなのがあるんですね。初めてみました」
山守は興味深そうにジョブストーンを眺めていた。ジョブストーンの事もあまり良く知らなかったようだな。
「それで、実は興奮してつい装備してしまったんだけどこの山の所有権が君にあるなら渡した方がいいよな?」
山守に問いかける。本来ダンジョンでの探索は冒険者にのみ認められた行為だ。冒険者であればダンジョンで手に入れた宝をそのまま自分の物に出来るし冒険者ギルドで売ることも可能だ。
ちなみにダンジョンの所有者は、冒険者が得た利益の一部を受け取ることが出来る仕組みだ。それに加え最近はダンジョン探索の様子を配信で流すことも認めるケースが多く、その際に広告収入の一部を貰ったりもしている。
その結果ダンジョンの所有者が多くの利益を得ることも多い。だからダンジョンの出現を喜ぶオーナーも多いわけだ。
で、俺の場合そもそも冒険者登録をしていない。それに放置ダンジョンだったここは正式なダンジョン認定も受けていないはずだ。
そうなるとお宝を見つけたからといって俺のものと言い切る権利もない。そのあたりはしっかりしておきたいからな。だから素直に山守に伝えたんだ。彼女が返してほしいと言ったら素直に返すつもりでもある。
「綺麗な石ですね」
「あぁ。だが価値ある石でもある。売ればそれなりの金額にもなるからな。ただ申し訳ないが既に俺が装備してしまったからな。ただ装備の解除方法もあるようだから問題ないと思う」
俺がそう答えると、何故か山守がクスクスと笑い出した。
「なんだ? 何かおかしかったか?」
「いえ、ただいい人だなって。だってそれって黙っておけば自分の物に出来ましたよね?」
「いや。それは駄目だろう。この土地もダンジョンも既に君のなんだから」
「ふふ。風間さんって本当に出来た人ですね。それなら、うん! これはこのまま貴方に差し上げます」
「え? いいのか?」
「はい! それになんというかこの石が風間さんに貰って欲しいと言ってる気がしてならないんです」
俺に貰って欲しい? う~んどうして山守がそんな風に思えるのか俺にはさっぱりわからなかった。
「あ、今変なことを言ってると思ってますね?」
「い、いやいや、そんなことは、な、ないぞ」
「目が泳いでますけどぉ?」
山守がジト目を俺に向けてきた。参ったな俺は結構思ってることが顔に出やすいのかも。
「私、思うんです。これまで放置されて荒れ放題だったダンジョンを風間さんが掃除してくれた。この宝はきっとその御礼なんじゃないかって」
御礼……それで思い出した。確かに一度だけ何か声のようなものが聞こえた気がしたんだ。あの時はただの空耳かと思ったが、それが山守の言う通りなら……。
「だからそれは風間さんが使ってください」
「そうか。そこまで言うならありがたく受け取っておくよ。だけど貰いっぱなしもわるいからな。それに今後このダンジョンでどうしようかというのもある」
「それですが風間さんが暮らしたいなら引き続きここで過ごしてもらっていいですよ」
「え? いいのか? 実はかなり助かるんだ。俺はもう住む家もないからな」
「えぇ! 一体今どんな状況なんですか!」
俺の話に随分と山守が食いついてきたから、俺は何となくこのダンジョンで暫く過ごそうと思った経緯を話してしまったんだ――
「謝罪はもういいよ。それよりもさっき宝もないダンジョンって話したけど実は一つ宝があったんだ」
「え! そうなんですか!?」
山守が驚いていた。それもわかる。ここは放置されたダンジョンだ。つまり世間からは何も生み出すことのない無価値なダンジョンと認定された代物なのである。
「実は今、俺が身につけているこれがそうなんだ」
そう言って俺は腕輪に嵌った石を山守に見せてやった。
「えっとこれって?」
「ジョブストーンだ。今日の朝目が覚めたら宝箱が出現してたんだけどその中に入っていたんだよ」
「へぇ! そんなのがあるんですね。初めてみました」
山守は興味深そうにジョブストーンを眺めていた。ジョブストーンの事もあまり良く知らなかったようだな。
「それで、実は興奮してつい装備してしまったんだけどこの山の所有権が君にあるなら渡した方がいいよな?」
山守に問いかける。本来ダンジョンでの探索は冒険者にのみ認められた行為だ。冒険者であればダンジョンで手に入れた宝をそのまま自分の物に出来るし冒険者ギルドで売ることも可能だ。
ちなみにダンジョンの所有者は、冒険者が得た利益の一部を受け取ることが出来る仕組みだ。それに加え最近はダンジョン探索の様子を配信で流すことも認めるケースが多く、その際に広告収入の一部を貰ったりもしている。
その結果ダンジョンの所有者が多くの利益を得ることも多い。だからダンジョンの出現を喜ぶオーナーも多いわけだ。
で、俺の場合そもそも冒険者登録をしていない。それに放置ダンジョンだったここは正式なダンジョン認定も受けていないはずだ。
そうなるとお宝を見つけたからといって俺のものと言い切る権利もない。そのあたりはしっかりしておきたいからな。だから素直に山守に伝えたんだ。彼女が返してほしいと言ったら素直に返すつもりでもある。
「綺麗な石ですね」
「あぁ。だが価値ある石でもある。売ればそれなりの金額にもなるからな。ただ申し訳ないが既に俺が装備してしまったからな。ただ装備の解除方法もあるようだから問題ないと思う」
俺がそう答えると、何故か山守がクスクスと笑い出した。
「なんだ? 何かおかしかったか?」
「いえ、ただいい人だなって。だってそれって黙っておけば自分の物に出来ましたよね?」
「いや。それは駄目だろう。この土地もダンジョンも既に君のなんだから」
「ふふ。風間さんって本当に出来た人ですね。それなら、うん! これはこのまま貴方に差し上げます」
「え? いいのか?」
「はい! それになんというかこの石が風間さんに貰って欲しいと言ってる気がしてならないんです」
俺に貰って欲しい? う~んどうして山守がそんな風に思えるのか俺にはさっぱりわからなかった。
「あ、今変なことを言ってると思ってますね?」
「い、いやいや、そんなことは、な、ないぞ」
「目が泳いでますけどぉ?」
山守がジト目を俺に向けてきた。参ったな俺は結構思ってることが顔に出やすいのかも。
「私、思うんです。これまで放置されて荒れ放題だったダンジョンを風間さんが掃除してくれた。この宝はきっとその御礼なんじゃないかって」
御礼……それで思い出した。確かに一度だけ何か声のようなものが聞こえた気がしたんだ。あの時はただの空耳かと思ったが、それが山守の言う通りなら……。
「だからそれは風間さんが使ってください」
「そうか。そこまで言うならありがたく受け取っておくよ。だけど貰いっぱなしもわるいからな。それに今後このダンジョンでどうしようかというのもある」
「それですが風間さんが暮らしたいなら引き続きここで過ごしてもらっていいですよ」
「え? いいのか? 実はかなり助かるんだ。俺はもう住む家もないからな」
「えぇ! 一体今どんな状況なんですか!」
俺の話に随分と山守が食いついてきたから、俺は何となくこのダンジョンで暫く過ごそうと思った経緯を話してしまったんだ――
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