親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第二章 冒険者登録編

第27話 登録するのも大変

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「番号札058番の方どうぞ」
「あ、それ阿久津じゃない!」
「あぁ、本当だな」
「番号札059番の方はこちらへ」
「あ、私も呼ばれた」

 どうやら阿久津と未瑠の番が来たようで二人が受付に向かった。ふぅ、助かった。あいつら相手していたらこっちの作業が進まないからな。

「ふぅ。やっと静かになりましたね」
「ピキィ……」
「クゥ~ン……」
 
 ため息混じりに山守が呟き、ラムとモコも疲れた顔で鳴いた。本当になんだったんだあいつら。別れたんだから無視しとけばいいだろうに面倒な奴らだ。

「とにかく履歴書に記入しないと」

 用意された用紙に必要事項を記入していく。ふと阿久津の言っていた事が気になった。別にごまかす気もないから辞めた事は書くけど理由までいるのだろうか。
  
 いや記入例を見てもそこまで細かく書く必要はなさそうだからな。ただ項目の中に運動能力に関することと学習能力に関することが多くあった。
 
 一応埋めたけど覚えてない事も多いからな。まぁ記憶を振り絞って埋めたけど。

「番号札063番の方どうぞこちらへ」
「あ、俺だ」

 俺の番号が呼ばれた。なので受付に向かった。対応してくれたのは眼鏡を掛けた二十代後半ぐらいの女性だった。知的な雰囲気の漂う女性だな。

「冒険者の登録をしたいのですが」
「はい。それでは必要書類を頂けますか」

 俺は受付の女性に履歴書や住民票の写し、それに個人番号証を提出した。

「コピーを取ってまいります」

 受付の女性が一旦席を離れた。ちなみに隣には山守が座っていて膝にはモコがちょこんと座っていた。可愛い。ラムは俺の肩に乗っている。

「お待たせいたしました。ところで貴方の肩に乗っているスライムとそのコボルトは?」
「あ、はい。実は――」

 俺はエントランスで話したように説明した。受付の女性は眼鏡を直しながら険しい顔を見せた。

「いくら小さいと言ってもどんな危険があるかわからないのですよ。それなのに勝手に餌付けとは感心できませんね」
「も、もうしわけありません。ですが、ほら、本当に危険はないんです」
「ワオン!」

 俺はモコを抱えて受付の女性にアピールした。ラムも肩の上でプルプル震えて何もしないよ~とアピールしていた。

「……確かに大人しそうですが、とにかくその二匹については後でしっかり鑑定しますよ。色々調べることもありますからね」
 
 どうやらモコとラムについては簡単にはいかないようだ。そこはやはりまだ幼そうに見えてもモンスターだからということか。

「ジョブストーンで得たジョブは農民ですか。生産型のジョブですね。現在のスキルを見ても戦えるようには見えませんのでダンジョン探索の際には十分お気をつけください」

 メガネの縁を触りながらジョブについて話してくれた。確かにこのジョブはあまり戦闘向きには思えないかもしれない。

「同行している貴方は冒険者ではないのですか?」
「い、いえ。私はジョブストーンを持ってなくて。なのでただの付き添いです」
「そうだったのですね。例えば貴方が戦闘系、もしくは魔法系のジョブであればまた違ったかもしれませんが」
「あ~でもそこまで心配はないかもしれませんよ。自分は危険のないダンジョンでの活動が主になるので」
「危険のないダンジョン……それはいわゆる放置ダンジョンと呼ばれている場所のことですか?」

 担当者がズバリと言い当てて来た。まぁ危険のないダンジョンとなるとそういう話になるよな。

「はい。そうなんです」
「なるほど。それにしてもなぜわざわざそんな場所を?」
「それは――」
「アッハッハ! 放置ダンジョンとかマジかよ!」
「でも納得ね。ダメダメな晴彦らしいわ」
 
 背後から嫌な声が聞こえてきた。だからこっちに関わってくるなよ――
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