親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

文字の大きさ
40 / 190
第二章 冒険者登録編

第39話 道場で鍛えてもらった

しおりを挟む
 楓に案内され俺たちは山守家の道場に向かった。入ってみるとかなり広く訓練するには十分なスペースが確保されている。驚いたのは道場の壁に様々な武器が飾られていたことだ。

「柔術でもこんなに武器を扱うんだな」
「うん。山守流柔術は古代から伝わる武術だからね。武器の扱いにも長けているんだよ。お爺ちゃんも刀とか弓とか槍とか色々使っていたよ」
「へぇ、そうなんだな」

 そう聞くとますます凄い人だったんだなと実感する。思えば威圧感のある人だったしな。山のルールを守らない相手に対して厳しかったが怒った時は確かに鬼のような迫力を感じたものだ。

「最近は柔術と聞いて投げや絞め技が主体と考える者も多い。もっともこちらも時代に合わせてそういったコースも用意しているがな」

 そう言って楓が指さした先には冒険者向けの実戦式本格コースや初心者にも安心簡単柔術コース、現代式柔術コース、ダイエットしたい方におすすめのエクササイズ柔術コースなどのメニューが並んでいた。

「これを落葉さんが?」
「あはは――それはお父さんが考えたものなんだよね。門下生を増やす為には時代のニーズに合わせないといけないと思うとお爺ちゃんを説得してね」

 秋月がそう説明してくれた。そう考えると納得出来る、か? いや、見た目で決めつけるのは申し訳ないが、やはり楓が考えたとしても中々の違和感だ。

「でもこの実戦向けコース――冒険者も通っているんですね」
「うむ。冒険者にはジョブストーンさえあればなんとかなると考えているのも多いようだが、やはり基礎体力も含め鍛えておくに越したことはないからな」

 俺の疑問に楓が答えてくれた。そう言えば登録の時に担当してくれた香川も、戦士系のジョブを扱うなら体育会系の方が向いているみたいな事を言っていたな。そう考えたら道場で鍛える事には十分意味があるといえるのか。

「今の時間は他の門下生もまだ来てないからな。ゆっくり鍛えていくといい」

 そんなことを考えていた俺に楓が言った。いやそこまでゆっくり鍛えたくもないのだけど――ここまで来たら俺も従うしかないか。とりあえずこの姿のままじゃ稽古にならないということで道着を用意してもらった。

 稽古専用のシャツまで貸してもらったので更衣室で着替える俺だが。

「ワンワン♪」
「ピキィ~♪」

 なんとモコに合うサイズもしっかりあった。子ども用が丁度いい感じだったんだよな。そして驚くことにラムまで道着を来ていた。いや巻いてると言ったほうがいいのか? 帯はモコがしてあげていた。クソ! また可愛い要素が増えてしまったじゃないか!

 着替え終えた俺たちが道場に戻るとなんと秋月も道着に着替えて立っていた。

「あれ? 山守さんも着替えたんだね」
「うん。折角だから私も体を動かそうと思って」

 そう言って体を解し始めた。秋月、随分と体が柔らかいんだな。

「ストレッチはしっかりな。ケガをしない為にも重要だ」

 それは確かにそうだな。俺も倣ってストレッチを始める。

「おお、結構柔らかいじゃないか」
「はは、どうも」

 楓に褒められてしまった。まぁ柔軟性は秋月程ではないけどな。

 とは言え一時期随分と体を鍛えさせられた・・・・・・・からな。

 俺はモコとラムのストレッチを手伝ったりしながら一通りの準備運動を終わらせた。もっともラムの場合スライムだからストレッチの必要があったのか疑問ではあったけど、一生懸命体を捻ったりする姿が可愛かったから良し!

 その後は楓の指導の下で受け身の練習をしたり乱取りをしながら教わったりした。本当に基本的なことからしっかり教えてくれた。それはありがたいが――

「フンッ!」
「おわっ!」

 楓の投げで畳に叩きつけられた。受け身を取っていても結構な衝撃があった。

 これでも手加減はしてくれているのだろうけど結構な数をこなしているので節々が痛くなってきた。

「ハハハッ、流石に疲れたか?」
「いやはや、こういうの久々なので」
「うん? 久々ということは何かやっていたのか?」
「え? あぁそうですね。部活とかですかね」
「おお。どうりで素人にしても動けるなと思っていたところだ」

 なんとなくごまかしてしまったがそれで納得されたなら問題ないかな。

「ワン!」
「うん? そうかそうかモコも教わりたいか」
「ワオン!」

 楓が言っていたように流石に疲れてきたなと思っていると、モコが楓に向かって声を上げた。随分と張り切っているようで楓もそんなモコに答えるようにモコと乱取りを始めた。

 しかし身長差が凄いな。でも、モコの動きがかなりいい。そういえばダンジョンでも格闘技系の映画や動画を食い入るように見ていたっけ。

 ステータスにしても初級格闘術というのがあったし、こういった技術との相性が良いのかもしれない。

 その後は楓はラムとも乱取りをしたが、楓に投げられたラムは畳の上でポンポンっと跳ねていきクルッと戻って?みたいな顔をしていた。

「これはラムは防御面では完璧だな」
「凄いよラムちゃん」
「ピキィ~♪」
 
 笑ってラムを褒める楓と紅葉。ラムもまんざらではなさそうだぞ。

「あらあら随分と熱心ですね。でも根を詰めすぎても良くないですよ。休憩にしたらいかがですか?」

 月見が俺たちに声を掛けてくれた。どうやら麦茶も用意してくれたようだ。気を使ってもらって申し訳もなくがありがたくもある――
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

竜王、冒険者になりましたっ!〜最強チートの俺ですが、人間界の常識をゼロから学び直しています〜

森マッコリ
ファンタジー
最強竜王、人の姿で再出発!常識ゼロで冒険者ライフ! 大昔に起きた大戦で竜の王となったアグナレス! そんなアグナレスには一つだけ悩みがあった。 それは....「超絶暇」だったのだ! アグナレスは暇潰しとして人間になる事に決め世界を旅する事に! 竜王が織り成すドタバタ最強ファンタジー!

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

小さなフェンリルと私の冒険時間 〜ぬくもりに包まれた毎日のはじまり〜

ちょこの
ファンタジー
もふもふな相棒「ヴァイス」と一緒に、今日もダンジョン生活♪ 高校生の優衣は、ダンジョンに挑むけど、頼れるのはふわふわの相棒だけ。 ゆるふわ魔法あり、ドキドキのバトルあり、モフモフ癒しタイムも満載! ほんわか&ワクワクな日常と冒険が交差する、新感覚ファンタジー!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

「男のくせに料理なんて」と笑われたけど、今やギルドの胃袋を支えてます。

ファンタジー
「顔も頭も平凡で何の役にも立たない」とグリュメ家を追放されたボルダン。 辿り着いたのはギルド食堂。そこで今まで培った料理の腕を発揮し……。 ※複数のサイトに投稿しています。

上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー
ファンタジー
転生した主人公は、平民でありながらダンジョンを作る力を持って生まれ、その力を持った者の定めとなる貴族入りが確定します。 ですが主人公は、普通の暮らしを目指し目立たない様振る舞いますが、ダンジョンを作る事しか出来ない能力な為、奮闘してしまいます。

処理中です...