親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

文字の大きさ
42 / 190
第二章 冒険者登録編

第41話 それぞれに合った武器

しおりを挟む
 先ずはどの武器から試すべきか――楓が並べた品々を見ながら俺は考えた。単純に考えたら鎌は普通に使えそうだ。鎖鎌なんて有名な武器もあるし鎌使いってちょっと格好いい気もする。

 ただ最初に扱う武器として俺的にしっくり来そうな物――

「これかな」
「え? 鍬?」

 俺が選んだ武器を見て山守が驚いていた。まぁあえて鍬を選ぶなんてそうはないのかも。

「いや、悪い選択じゃないと思うぞ。鍬は扱い方としては棒術に近い。柄の長さを利用すれば少ない力で強力な一撃を叩き込むことも可能だ。実際鍬術という戦闘術も存在するし、農具を使った戦法は山守流でも伝わっている」

 そう言って楓が深く頷いた。良かった、どうやら鍬を使うというのは間違ってもいないようだな。そして俺は楓から鍬の扱い方を教わることになった。

「そう。持ち方はそれでいい。基本的には畑を耕すのとそう変わらないからな」

 楓が丁重に鍬の扱い方を教えてくれた。どうやら腰の使い方などは畑仕事に通ずる物があるようだ。

「とりあえず剣道の面のように振り下ろすところからか。後は刃床部を逆にして突いたり――」

 基本的な型も含めて楓から教わり反復練習する。それだけでも何となく強くなれた気がしたのは俺が単純だからだろうか。

「ワン!」
「おお! モコも何か扱いたいのか。気に入ったのはあるかい?」
「ワンワン!」

 俺が素振りを続けている中、楓はモコの稽古にも向き合ってくれた。楓が問いかけるとモコが壁に掛かっている武器を指さした。

「ほう。三節棍か。ただ、こっちはモコには大きそうだからな」

 言って楓がまた奥に引っ込んだ。その後モコでも扱えそうなサイズの三節棍を持ってきてくれた。

「これなら使えるだろう」
「ワン!」

 モコが嬉しそうに三節棍を受け取った。早速構えを取ってみせるが中々様になっていた。

「ほう。姿勢もいいな。もしかして何かやっていたのか?」
「モコは格闘技が好きなようで、動画でも良く見ていたんです。カンフー系の映画も好きで三節棍もそこから知ったんだと思いますね」

 モコの動きに関心を示した楓に説明した。モコは一度タブレット端末の操作を教えてから、暇を見てそういう動画を見ていたからな。

「なるほどな。だが見るとやるでは大違いだ。とりあえず振ってみてくれ」
「ワン!」
 
 得心が言ったと頷く楓だったけど、確かに見ているのと実際に使ってみるとでは大きな違いがあるんだろうな。
 
「ワォォオォォオォオオオン!」

 モコなりの気合の入れ方を見せた後、モコが三節棍を振っていく。おお、中々いいじゃないか、と思った直後モコが振った三節棍が後頭部に直撃した。

「モコ大丈夫か!」
「モコちゃん大丈夫!?」
「ピキィ!」

 俺たちは心配になってモコに駆け寄った。モコは涙目になっていた。

「痛かったかモコ?」
「ワン――」
 
 俺が頭を擦ってあげるとモコがヒシっと俺に抱きついてきた。心配だが同時にこの仕草が愛おしくも感じてしまう。
 
 だけどモコはすぐに俺から離れ楓に向き直った。

「ワン!」
「ふむ。そのやる気は素晴らしいぞ! 何、最初は誰でも上手くいかないさ。いいか三節棍を扱うときは――」

 改めて楓がモコに三節棍の扱い方を教えていた。モコも立ち直って真剣に教わっている。

「ピキィ~ピキィ~!」
「ラムちゃんも何か知りたいの?」
「ピキィ~」
 
 ラムには秋月がついて話を聞いているようだ。そこに紅葉の姿もあった。うん、モコもラムも自分に何が出来るかと必死に考えているんだな。俺も頑張らないと。

「鍬を扱う時には土を感じ取るのもいいかもしれませんね」

 改めて俺が素振りを再開させると月見から声が掛かった。

「土ですか?」
「はい。これは山守流の特徴でもあるのですか、自然の声を聞き、自然の気を感じ取り、自然の流れに身を任せよ――と父も良く言ってました」

 父――落葉の爺さんの事だな。なるほど、なんとなく彼らしい言葉だなと思った。だからこそ土を感じ取るのが大事ということか。

「それに鍬を使った戦いは土を味方につけることも多かったと聞きます。礫にして飛ばしたり目くらましに使ったりですね」

 そんな戦い方もあるのか。だけどいいことを聞いたかもな。そして俺は土を感じ取ることも意識して練習に励み、モコとラムもそれぞれ道場での特訓に勤しんだのだった――
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

小さなフェンリルと私の冒険時間 〜ぬくもりに包まれた毎日のはじまり〜

ちょこの
ファンタジー
もふもふな相棒「ヴァイス」と一緒に、今日もダンジョン生活♪ 高校生の優衣は、ダンジョンに挑むけど、頼れるのはふわふわの相棒だけ。 ゆるふわ魔法あり、ドキドキのバトルあり、モフモフ癒しタイムも満載! ほんわか&ワクワクな日常と冒険が交差する、新感覚ファンタジー!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。 ----- ※小説家になろう様にも掲載中。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

処理中です...