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第二章 冒険者登録編
第49話 黒帯
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「モコ! 一緒にこいつを倒すぞ!」
「ワン!」
モコに声を掛け俺とモコで攻撃を仕掛けた。
「クソが!」
稽古を思い出し出来るだけ無駄のない動きで鍬を振ることを心がけた。モコも近藤の周囲を飛び回りながら蹴りや拳を叩き込んでいく。
「うざったいスライムだねぇ。僕ちゃんちょっと苛ついちゃうかも」
「そんなの私も一緒だよ!」
「ピキィ!」
向こうではラムの水弾をナイフで捌く金沢に向けて攻撃を仕掛ける秋月の姿が見えた。ジョブ持ちだけに金沢の動きは軽やかだ。でも秋月だって負けてない。
「お、おいこれマズイんじゃ?」
「兄貴! ファイトですよ!」
「頑張れ~!」
最初に来ていた連中が二人を応援していた。近藤と金沢が倒されたら自分たちも危ないと思っているんだろう。まぁ当然冒険者には突き出すし、その後は警察のお世話になることにもなるだろう。
警察もダンジョンでの出来事には関与しないというのは正直どうかと思うが、奴らがダンジョンで行った落書きや過去にやってたと思われるゴミの不法投棄なんかは流石に無関係とは言えないだろうからな。
俺の持っていた物も取られているし。食料も食い漁りやがったからな。
そのうえで近藤と金沢のこともある。一般人の秋月にまで手を出しているのだから言い逃れは出来ないだろう。
「いい加減に、しやがれぇええぇええ!1
その時、声を荒げ放たれた近藤の裏拳が俺とモコにヒットした。
「キャウン!」
「ぐふっ」
俺は再び吹っ飛び地面を転がってしまった。モコも裏拳を受けていたが地面に着地し声を上げて俺に駆け寄ってくる。
「大丈夫かモコ?」
「ワォン!」
俺も心配でモコに声を掛けたが、よかったダメージはそこまででもなさそうだ。
「だけど、あいつまだあんな力が――」
モコの頭を撫でつつ俺は近藤と金沢を見た。二人共余裕が戻ってきたのか笑みを浮かべている。
「調子に乗りやがって。その犬っころが一緒なら勝てると思ったか? 甘いんだよ。黒帯なめるなよ!」
近藤が叫んだ。黒帯だって?
「黒帯――有段者ってことか」
「そうだ。俺は空手が得意なのさ。この意味、お前にわかるか?」
近藤に言われ俺はギルドで香川が話していたことを思い出した。ジョブは本人の個々の能力によっても能力に差が出ると――近藤が持っているのは格闘家のジョブストーン。つまり空手で黒帯まで得ている近藤との相性は最高ということだ。
「スキル・気合溜め!」
近藤がそう発し腰だめで力を込めだした。途端に周囲の空気がひりつき始めた。
「おらぁああぁ!」
そして近藤が飛び出し加速する。俺の目では追いきれない程の速度――明らかにスピードが上がっている。今ので身体能力が強化されたのか!
「龍旋脚!」
近藤が飛び上がり猛スピードで回転したかと思えば俺の体は宙を待っていた。モコの無き声も聞こえてくる。
技の名前からして蹴りを食らったと見るべきか。地面に背中を打ち自然とうめき声が漏れた。ヤバい意識が飛びそうだ。俺は舌を噛んでなんとか意識を保った。
そしてハッキリした視界に飛び込んできたのは口の開いたリュックだった。そうかリュックのあった場所まで飛ばされて――それなら! 俺は急いでリュックに飛びつき手を突っ込んだが――
「キャッ!脚が!」
「ピキィイィッ!?」
秋月とラムの声がした。思わず見ると秋月の片足が地面にスッポリと埋もれていてラムも縄で雁字搦めにされていた。
「金沢の罠スキルか。あんなのまで使うことになるとはな。だがこれで終わりだ」
「ヘヘッ、本当手こずらせてくれるよねぇ。僕ちゃんちょっと激怒かもね。しっかりその身にわからせてあげなくちゃねぇ」
言ってナイフを手にした金沢が秋月に近づいていく。あいつまさかあのナイフで――
「させるかぁああ!」
リュックから引き抜いたそれを構え、俺は引き金を引いた。金沢はこっちには意識が向いてない。それが幸いし俺の放ったボルトは淀みなく金沢の首に命中した。
「ヒギイィィィィイィィイ!?」
途端に金沢が悲鳴を上げバチバチという音と共にその体が痙攣し倒れた。
「よかった。スタンボルトを持ってて――」
そう、以前買っておいた護身用の武器がこれだ。今思えば本当に買っておいてよかった。そう考えた直後脇腹に激痛が走った。
「グァアァアアァア!」
「テメェ、ふざけたもん使いやがって」
近藤が俺を見下ろしていた。金沢に気を取られて接近に気付けなかった。蹴りを受けたのか。ヤバいズキズキと痛む。これは肋骨が折れたかもしれない――
「風間さん! クッ! 抜けない!」
「無駄だ! そのトラップはすぐには消えねぇからな!」
秋月が必死に脚を抜こうとしているようだが苦戦しているようだ。いま近藤が言ったとおりなら秋月もラムもすぐには動けないかもしれない。
「あっちは後の楽しみとしてテメェは今すぐぶっ殺してやる」
近藤が拳を鳴らした。クッ、ズキズキと痛む。だけどこんなことで泣き言なんて言っていられない。俺は鍬を支えにしてなんとか立ち上がった。
「フンッ。そんな体で何が出来るって――」
「ワォオオォオォオォォォオォォオオン!」
小馬鹿にしたように近藤が言った直後、背後からモコの遠吠えが響き渡った。
「チッ、そういえばこっちにも雑魚がいたか――」
振り返る近藤。するとその目が大きく見開かれた。モコの姿が俺にも見えた。腰だめの状態で力を溜めているモコの姿だ。
「お前その構え――まさか!」
「ワォオォン!」
近藤が何か言いかけるもモコの遠吠えに遮られた。そしてモコは体に溜めていた力を一気に解放し飛びかかる。そして強烈な回転からの蹴りをお見舞いした。
「グハッ!」
近藤がバランスを崩し傾倒した。やったか! と思ったが近藤はすぐに体勢を立て直し立ち上がって見せる。あれでもダメなのか――
「この野郎!」
「キャンッ!」
近藤がモコを蹴り飛ばした。こいつよくも――
「やめろ! それ以上モコに手を出すな!」
「馬鹿が! こいつは気合溜めだけじゃなく龍旋脚まで真似しやがったんだ。テメェよりこの犬っころの方がずっと厄介だぜ!」
近藤がモコにターゲットを移したようで倒れたモコに近づいていく。モコは成長率が高い。それにスキルには学習があった。だからこそ近藤のスキルを見て覚えたのだろう。
だけど慣れない技を使ったからかモコには疲れが見えた。そこに反撃を貰ってしまったのだろう。今の状態で近藤に本気で狙われたらタダでは済まないかもしれない。
俺は痛みに耐え鍬を持ち声を上げた。
「待て! お前の相手は俺だ!」
「あん?」
近藤が俺を振り返る。
「何だその構え? ガラ空きじゃねぇか」
鍬を振り上げた状態で挑発する俺を見て近藤が鼻で笑った。確かにこの構えは防御面では不利に働く。だから俺は力を溜めて近藤の一挙手一投足を見逃さないよう睨み続けた。
「生意気な目だ。だったらお望み通りテメェからやってやるよ!」
近藤が動きを見せたが――あっという間に俺の懐に入ってきた。
「カウンター狙いなのがミエミエなんだよ馬鹿が!」
「クッ、うぉぉぉおぉおおおお!」
確かにその通りだ。俺はこの一撃で決めるつもりだった。その為にはカウンターを狙うしかなかった。だけど予想以上に速かった近藤の動きで完全にタイミングをズラされた。
だけど、俺は諦めない! 鍬を一気に振り下ろす。
「なっ! 振り下ろしが速――」
俺の腹に向けて近藤の拳が放たれていたが、俺の振り下ろしは奴の拳が届くよりも早くその後頭部にめり込んだ。地面を叩きつける重苦しい音が鳴り響くと、近藤の顔面が地面にめり込んでいた。
「安心しろ峰打ちだ」
近藤の意識が飛んだのを確認して俺は呟き腰を落とした。な、なんとか勝てたようだけど、ハハッ一度言ってみたかったんだよなこれ――
「ワン!」
モコに声を掛け俺とモコで攻撃を仕掛けた。
「クソが!」
稽古を思い出し出来るだけ無駄のない動きで鍬を振ることを心がけた。モコも近藤の周囲を飛び回りながら蹴りや拳を叩き込んでいく。
「うざったいスライムだねぇ。僕ちゃんちょっと苛ついちゃうかも」
「そんなの私も一緒だよ!」
「ピキィ!」
向こうではラムの水弾をナイフで捌く金沢に向けて攻撃を仕掛ける秋月の姿が見えた。ジョブ持ちだけに金沢の動きは軽やかだ。でも秋月だって負けてない。
「お、おいこれマズイんじゃ?」
「兄貴! ファイトですよ!」
「頑張れ~!」
最初に来ていた連中が二人を応援していた。近藤と金沢が倒されたら自分たちも危ないと思っているんだろう。まぁ当然冒険者には突き出すし、その後は警察のお世話になることにもなるだろう。
警察もダンジョンでの出来事には関与しないというのは正直どうかと思うが、奴らがダンジョンで行った落書きや過去にやってたと思われるゴミの不法投棄なんかは流石に無関係とは言えないだろうからな。
俺の持っていた物も取られているし。食料も食い漁りやがったからな。
そのうえで近藤と金沢のこともある。一般人の秋月にまで手を出しているのだから言い逃れは出来ないだろう。
「いい加減に、しやがれぇええぇええ!1
その時、声を荒げ放たれた近藤の裏拳が俺とモコにヒットした。
「キャウン!」
「ぐふっ」
俺は再び吹っ飛び地面を転がってしまった。モコも裏拳を受けていたが地面に着地し声を上げて俺に駆け寄ってくる。
「大丈夫かモコ?」
「ワォン!」
俺も心配でモコに声を掛けたが、よかったダメージはそこまででもなさそうだ。
「だけど、あいつまだあんな力が――」
モコの頭を撫でつつ俺は近藤と金沢を見た。二人共余裕が戻ってきたのか笑みを浮かべている。
「調子に乗りやがって。その犬っころが一緒なら勝てると思ったか? 甘いんだよ。黒帯なめるなよ!」
近藤が叫んだ。黒帯だって?
「黒帯――有段者ってことか」
「そうだ。俺は空手が得意なのさ。この意味、お前にわかるか?」
近藤に言われ俺はギルドで香川が話していたことを思い出した。ジョブは本人の個々の能力によっても能力に差が出ると――近藤が持っているのは格闘家のジョブストーン。つまり空手で黒帯まで得ている近藤との相性は最高ということだ。
「スキル・気合溜め!」
近藤がそう発し腰だめで力を込めだした。途端に周囲の空気がひりつき始めた。
「おらぁああぁ!」
そして近藤が飛び出し加速する。俺の目では追いきれない程の速度――明らかにスピードが上がっている。今ので身体能力が強化されたのか!
「龍旋脚!」
近藤が飛び上がり猛スピードで回転したかと思えば俺の体は宙を待っていた。モコの無き声も聞こえてくる。
技の名前からして蹴りを食らったと見るべきか。地面に背中を打ち自然とうめき声が漏れた。ヤバい意識が飛びそうだ。俺は舌を噛んでなんとか意識を保った。
そしてハッキリした視界に飛び込んできたのは口の開いたリュックだった。そうかリュックのあった場所まで飛ばされて――それなら! 俺は急いでリュックに飛びつき手を突っ込んだが――
「キャッ!脚が!」
「ピキィイィッ!?」
秋月とラムの声がした。思わず見ると秋月の片足が地面にスッポリと埋もれていてラムも縄で雁字搦めにされていた。
「金沢の罠スキルか。あんなのまで使うことになるとはな。だがこれで終わりだ」
「ヘヘッ、本当手こずらせてくれるよねぇ。僕ちゃんちょっと激怒かもね。しっかりその身にわからせてあげなくちゃねぇ」
言ってナイフを手にした金沢が秋月に近づいていく。あいつまさかあのナイフで――
「させるかぁああ!」
リュックから引き抜いたそれを構え、俺は引き金を引いた。金沢はこっちには意識が向いてない。それが幸いし俺の放ったボルトは淀みなく金沢の首に命中した。
「ヒギイィィィィイィィイ!?」
途端に金沢が悲鳴を上げバチバチという音と共にその体が痙攣し倒れた。
「よかった。スタンボルトを持ってて――」
そう、以前買っておいた護身用の武器がこれだ。今思えば本当に買っておいてよかった。そう考えた直後脇腹に激痛が走った。
「グァアァアアァア!」
「テメェ、ふざけたもん使いやがって」
近藤が俺を見下ろしていた。金沢に気を取られて接近に気付けなかった。蹴りを受けたのか。ヤバいズキズキと痛む。これは肋骨が折れたかもしれない――
「風間さん! クッ! 抜けない!」
「無駄だ! そのトラップはすぐには消えねぇからな!」
秋月が必死に脚を抜こうとしているようだが苦戦しているようだ。いま近藤が言ったとおりなら秋月もラムもすぐには動けないかもしれない。
「あっちは後の楽しみとしてテメェは今すぐぶっ殺してやる」
近藤が拳を鳴らした。クッ、ズキズキと痛む。だけどこんなことで泣き言なんて言っていられない。俺は鍬を支えにしてなんとか立ち上がった。
「フンッ。そんな体で何が出来るって――」
「ワォオオォオォオォォォオォォオオン!」
小馬鹿にしたように近藤が言った直後、背後からモコの遠吠えが響き渡った。
「チッ、そういえばこっちにも雑魚がいたか――」
振り返る近藤。するとその目が大きく見開かれた。モコの姿が俺にも見えた。腰だめの状態で力を溜めているモコの姿だ。
「お前その構え――まさか!」
「ワォオォン!」
近藤が何か言いかけるもモコの遠吠えに遮られた。そしてモコは体に溜めていた力を一気に解放し飛びかかる。そして強烈な回転からの蹴りをお見舞いした。
「グハッ!」
近藤がバランスを崩し傾倒した。やったか! と思ったが近藤はすぐに体勢を立て直し立ち上がって見せる。あれでもダメなのか――
「この野郎!」
「キャンッ!」
近藤がモコを蹴り飛ばした。こいつよくも――
「やめろ! それ以上モコに手を出すな!」
「馬鹿が! こいつは気合溜めだけじゃなく龍旋脚まで真似しやがったんだ。テメェよりこの犬っころの方がずっと厄介だぜ!」
近藤がモコにターゲットを移したようで倒れたモコに近づいていく。モコは成長率が高い。それにスキルには学習があった。だからこそ近藤のスキルを見て覚えたのだろう。
だけど慣れない技を使ったからかモコには疲れが見えた。そこに反撃を貰ってしまったのだろう。今の状態で近藤に本気で狙われたらタダでは済まないかもしれない。
俺は痛みに耐え鍬を持ち声を上げた。
「待て! お前の相手は俺だ!」
「あん?」
近藤が俺を振り返る。
「何だその構え? ガラ空きじゃねぇか」
鍬を振り上げた状態で挑発する俺を見て近藤が鼻で笑った。確かにこの構えは防御面では不利に働く。だから俺は力を溜めて近藤の一挙手一投足を見逃さないよう睨み続けた。
「生意気な目だ。だったらお望み通りテメェからやってやるよ!」
近藤が動きを見せたが――あっという間に俺の懐に入ってきた。
「カウンター狙いなのがミエミエなんだよ馬鹿が!」
「クッ、うぉぉぉおぉおおおお!」
確かにその通りだ。俺はこの一撃で決めるつもりだった。その為にはカウンターを狙うしかなかった。だけど予想以上に速かった近藤の動きで完全にタイミングをズラされた。
だけど、俺は諦めない! 鍬を一気に振り下ろす。
「なっ! 振り下ろしが速――」
俺の腹に向けて近藤の拳が放たれていたが、俺の振り下ろしは奴の拳が届くよりも早くその後頭部にめり込んだ。地面を叩きつける重苦しい音が鳴り響くと、近藤の顔面が地面にめり込んでいた。
「安心しろ峰打ちだ」
近藤の意識が飛んだのを確認して俺は呟き腰を落とした。な、なんとか勝てたようだけど、ハハッ一度言ってみたかったんだよなこれ――
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