親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

文字の大きさ
63 / 190
第二章 冒険者登録編

第62話 朝食を終えて

しおりを挟む
 ホットサンドは美味しく頂いた。最後にチョコレートを挟んだホットチョコサンドを焼いたがこれも皆から好評だった。

 食べ終えた頃には、すっかりお腹を満たされた三匹が満足そうに寛いでいた。

「――美味かった。姉貴には宜しく言っておいてくれ」

 食事を終えると帝がそういい残してダンジョンの出入り口に向かった。

「もう行くのか?」
「これから仕事があるからな」

 そうか。確かに今日は平日だし成人しているならこれから仕事があって当然だろう。まぁ、俺は会社をクビになってしまったからダンジョンで過ごす以外にやることがない状況なんだがな!

「ワン!」
「ピキィ~」
「マア~」

 するとモコ、ラム、マールが帝に駆け寄りヒシっと抱きついた。

「……いや、帰りたいんだが」
「悪いな。でも皆は帝くんに感謝を伝えたいんだよ」

 俺の話を聞きポリポリと頬を掻いた後、帝が皆の頭を撫でた。続いてその目が俺に向く。

「俺のことは帝でいい。くんとか似合わないからな」
「そっか。じゃあ俺も名前は晴彦だから好きに呼んでくれ」
「……あぁ」
「そうだ。連絡先交換しないか? 折角知り合えたわけだし」

 俺が提案すると撫でていた手を止め帝が答えた。

「やめときな。俺なんかと仲良くしたっていいことないぜ」
 
 そして背中を向けて帝がダンジョンから出ていった。何か最後だけ有無を言わせない雰囲気があったな。

 でもなぁ、改めて帝が食事した後を見たが、彼はしっかり自分が食べた分を片付けてくれていた。食器も洗っていたしな。

 だから悪い奴ではない。それは確かだと思う。ただ、思い出してみると以前、鬼姫が言っていたな。公園であった大黒に弟が金を貸していると。それが何か関係あるんだろうか?

「ワゥ~ン……」
「ピキィ~……」
「マァ~……」

 皆が帝を寂しそうに見送っていた。どうやら三匹とも帝に好感を持っていたようだな。

「大丈夫さ。またきっとどっかで会うって」
「ワン!」
「ピキィ~」
「マッ!」

 俺の言葉に三匹とも、納得したように鳴いてくれた。それからは俺たちも食器などを片付け、後は秋月やマスターが来るのを待つことにした――




◇◆◇

 ダンジョンを出て山を降りると黒塗りの車から厳つい男が二人降りてきて頭を下げた。

「お帰りなさいボス。遅かったですね」
「あぁ。飯をごちそうになってた」
「へぇ。ボスが気を許すなんて珍しいですね」
「――別にそんなんじゃねぇよ」

 そんな会話をしながら部下にドアを開けてもらい帝が乗り込んだ。

「大黒のところだったな」
「へいボス」
「すぐに向かいます」

 帝の鋭い視線を受け部下の二人はビシッと姿勢を正して頷いた。そして車が発車し帝は椅子にもたれかかると大きく息を吐いた。

「長居しすぎたか」
「いえいえ、十分間に合いますよ」

 呟く帝に部下が答えたが、帝は顔を曇らせた。そういう話ではないと言いたげだったが敢えて口にはしない。そして目的地につくまでの間で帝は幾つかの指輪を・・・嵌めていった。
 
 そして車が目的地に到着し帝が降りるとそこに大黒の姿。だがそれだけではない。大柄な男が一緒に立っていたのである。

「金を支払うって話だったと思うが、誰だこいつ?」
「よぉ。お前が姐御に無茶な要求してるっていう金貸しか?」
「そうさ大田。こいつが金返せってしつこくてね」
「――借りたもんを返すのは当然だろう」

 大田という大男に都合よく説明する大黒。そんな大田の腕には腕輪と輝石が嵌められていた。

「何が当然だ。法外な金利を取ってるって話だろうが」
「これでも――俺等みたいなのの中じゃ低い方だと思うんだがな。まぁいい。それでテメェは俺に何がいいたいんだ?」

 大田を見上げ帝が言った。体格差はかなりのものだが全く恐れていない。

「金は諦めろっていってんだよ」
「その方が身のためだよ。こいつはD級の冒険者だからねぇ」

 得意げにかたる大黒を見て帝が大きくため息をついた。

「冒険者の質も随分と落ちたものだな」
「なんだとコラァアアァアア!」

 大田の拳が帝の顔面にめり込んだ。太田が数歩後退りする。

「ヘヘッ」
「……こんなもんか」
「は? グボォオォオォ!「

 お返しとばかりに返された帝の拳が大田の原にめり込んだ。うめき声を上げた大田が腰を落とすとその顔面に更にもう一発拳が入り大田がダウンした。

「な、何なんだいこれ! どうしてジョブを持った大田相手にあんたみたいなのが勝てるんだい!」
「こっちは冒険者相手にも金貸ししてんだよ。ちょっと恫喝された程度で芋引いてたんじゃ話にならねえ。だから対策ぐらいはとってある」

 そう言った後、帝が大黒を睨んだ。

「それでどうすんだ?」
「ヒッ、そ、その、り、利息分だけでも?」
「フンッ」

 こうして帝は大黒から金利分の回収を終えた。なお、大田にもしっかり迷惑料を請求し顔を青ざめさせたのは言うまでもない――
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

実家の裏庭がダンジョンだったので、口裂け女や八尺様に全自動で稼がせて俺は寝て暮らす〜元社畜のダンジョン経営〜

チャビューヘ
ファンタジー
過労死寸前でブラック企業を辞めた俺が手に入れたのは、祖父の古民家と「ダンジョン経営システム」だった。 しかもバグで、召喚できるのは「口裂け女」「八尺様」「ターボババア」など日本の怪異だけ。 ……最高じゃないか。物理無効で24時間稼働。これぞ究極の不労所得。 元SEの知識でシステムの穴を突き、怪異たちに全自動でダンジョンを回させる。 ゴブリンは資源。スライムは美容液の原料。災害は全て収益に変換する。 「カイトさん、私……きれい?」 「ああ。効率的で、機能美すらある」 「……褒めてる?」 「褒めてる」 口裂け女は俺の言葉で即落ちした。チョロい。だがそれでいい。 ホワイト待遇で怪異を雇い、俺は縁側で茶をすする。 働いたら負け。それが元社畜の結論だ。 これは、壊れた男と健気な怪異たちが送る、ダンジョン経営スローライフの物語。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~

エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます! 2000年代初頭。 突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。 しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。 人類とダンジョンが共存して数十年。 元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。 なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。 これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

処理中です...