親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

文字の大きさ
68 / 190
第二章 冒険者登録編

第67話 ホームセンターにて

しおりを挟む
 ダンジョンでの畑仕事が落ち着いたところで、俺たちは秋月の運転する車に乗ってホームセンターに向かっていた。車の中ではモコ、ラム、マールの三匹が窓の外を眺めながら和気藹々としている。
 
 その姿が微笑ましく、秋月に頼まれ俺は三匹の姿を動画に収めていた。こういうのも日常風景として上げていく予定なようだ。

「そういえば風間さん、明日が講習でしたね」
「そうなんだよな。それが終われば本登録になるんだけど」

 俺はまだ仮登録の段階だからな。本登録の日はテイムしている皆とも一緒に講習を受けることになる。これは仮登録の段階で貰った冊子にも書いてあったことだ。冒険者として活動する以上テイムしている仲間の協力も大切だからということだろう。

「風間さんは本登録が終わった後は、他のダンジョンも挑戦するんですか?」
「いや、俺はとりあえず今のダンジョンで皆とのんびり出来ればいいと思ってるんだ。余程のことが無い限りは他のダンジョンに行くことはないかな」

 それに放置ダンジョンと違って当然一般的なダンジョンは危険が伴う。モコやラムも強くなってきてるけど敢えて危険の中に飛び込もうとは思えないんだよな。
 
「山守さんはどうなの? 格闘のジョブストーンを手に入れれば冒険者としても十分やっていけそうに思えるけど」
「私は管理者として役に立てればと思っただけだから、風間さんと一緒かな」

 俺の問いかけに秋月が答えた。どうやら冒険者としての活動を積極的にやろうとは思ってないようだ。おそらく今回のようなトラブルに巻き込まれた際に対処できるようという思いも強いのかもしれない。

 秋月はジョブストーンがなくても冒険者と渡り合えるぐらいの腕前だからな。その上で格闘家のジョブまで手に入れたら向かうところ敵なしな気もする。

 そんなことを話しているうちにホームセンターに到着した。ここは以前モコとも来たところだな。規模もそれなりに大きくここに来れば大体の物は揃う。

「とりあえずは苗から見ようかな」
「こっちですよね」
 
 家庭菜園のコーナーに向かい色々と見てみる。トマトの苗があるな。種芋もあるしこのあたりを利用しても良さそうだ。

 畑をある程度広げるつもりではあるけど、限度はあるからな。とりあえず人参も育てているしある程度厳選していきたい。
  
 後はダンジョン内でどのぐらいで収穫までいけるかかな。何せ成長が早いから通常よりもかなり早く育つ可能性が高い。そのあたりも考慮しても次に育てるのも考えておくといいだろう。

 道具としてはポットとトレーも買っておきたい。後は皆も手伝ってくれているからそれぞれにあった道具も揃えておこうかな。スコップや如雨露も追加で買っておきたいし、肥料も色々と必要かな、と色々考えみると必要な物は増えていった。

「車で来て正解だったな。後は――あれ?」
「あら?」

 農具関係を見るために店内に入った俺たちだったがそこで見知った顔と遭遇した。彼女は冒険者ギルドで出会った職員の香川だった。

「こないだは色々とお世話になりました」
「大したことはしてないわ。職務を全うしただけだし」
「それでも助けてもらったのは事実ですから」

 あの嫌味な二人とのやり取りも彼女のおかげで止めてもらえたのもある。何より講習日も被らないよう気を使ってくれたしな。

「香川さんは今日が休みなのですね」
「えぇ。冒険者ギルドは休日でも関係ないから休みは平日になったりするのよ」
 
 秋月の問いかけに答える香川。

 なるほど。言われてみれば冒険者は土日祝日関係なくやっているからそれもわかる気がする。その分、職員の休みは平日にとられるわけか。

「そういえば明日が講習だったわね」
「そうですね。その時はテイムしている皆と一緒に行きますよ」
「そう、あら? そういえば一匹増えてない?」

 香川が眼鏡を直しながらマールに注目した。そうかまだ彼女は知らない筈だもんな。

「そうなんですよ。新しい仲間が増えて、それで今日ギルドマスターと立川さんに来てもらって登録しました」
「そういえば、今日は視察があると言っていたわね。それで――」

 そう口にしつつ香川がマールをジッと見ていた。マールもそれにつられて彼女を見つめ返している。

「――マァ♪」
「うっ――」
 
 マールが可愛らしく挨拶すると香川が頬を赤くさせて仰け反った。だけどすぐに姿勢を正し眼鏡を直してみせる。

「仲間が増えるのはいいことだけど、管理はしっかりね」
「あ、はい。講習も頑張りますね」
「そうね。それじゃあまたね・・・

 そう言って香川が立ち去った。

「香川さんいつもクールな感じですね」
「そうだな。自分に厳しそうな人だよ」

 ただ色々と気遣いは出来る人なんだなと思う。ギルドの職員としてはかなり優秀なんじゃないかな。

 それからもホームセンターを回って買い物を終えたわけだけどそれなりの荷物にはなった。本当車を出してもらって助かったよ。
 
 そして帰宅の為に車に乗ろうとしたところで秋月のスマフォが鳴り――

「えっとね。お父さんが帰りによりなさいって。講習前に鍛えておくのは大事と言ってるんだけど」
「あぁ、なるほど」

 そういえばまた来るよう言われていたんだったな。明日が講習ということを考えると鍛えてもらっておいた方がいいかな。

「皆はどう思う?」
「ワン!」
「ピキィ~!」
「マァ!」

 どうやら皆もやる気十分なような。というわけで俺は厚意を受け取り帰りに山守家に寄らせてもらうことになった。

 そして――講習が明日ということもあって結構な量のメニューをこなすことになったよ。まぁ結局お風呂と夕食もごちそうになることになったのだけどね――
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

小さなフェンリルと私の冒険時間 〜ぬくもりに包まれた毎日のはじまり〜

ちょこの
ファンタジー
もふもふな相棒「ヴァイス」と一緒に、今日もダンジョン生活♪ 高校生の優衣は、ダンジョンに挑むけど、頼れるのはふわふわの相棒だけ。 ゆるふわ魔法あり、ドキドキのバトルあり、モフモフ癒しタイムも満載! ほんわか&ワクワクな日常と冒険が交差する、新感覚ファンタジー!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

おばさん冒険者、職場復帰する

神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。 子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。 ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。 さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。 生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。 ----- 剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。 一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。 ----- ※小説家になろう様にも掲載中。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

処理中です...