親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

文字の大きさ
78 / 190
第二章 冒険者登録編

第77話 戻ってきた一組目と待つ風間たち

しおりを挟む
 結局、俺は熊谷とも打ち解けることが出来た。まぁどちらかというとモコたちを撫でて満足したからか謝罪の後は熊谷の方から絡んできてくれたんだけどな。

「お、一組目が戻ってきたようですぜ」

 熊谷の発言で俺もダンジョンの方を確認した。穴になってるダンジョンはハシゴが掛けられていてそれで上り下り出来るようになっているのだが、穴から一人ずつ上ってきた。

 どんな感じかと気にはなったが全員無言で結構疲れているようだな。難易度は低いと言っていたけどやっぱりモンスターなんかも出るだろうしそれ相応に大変だったのかもしれない。

「次に入る五人を伝えておきます。準備しておいてください」

 最後に上ってきた香川が五人の番号と名前を口にした後、戻ってきた五人を連れてどこかへ行った。しかし香川からは全く疲れがみえなかった。そこは流石と言うべきか。

「あの五人はどこに連れていかれたのですか?」
「まさか全員失格とか?」

 愛川と菊池が徳に聞いていた。すると徳は笑顔を見せ。

「そういうわけじゃないさ。探索を終えたメンバーが一緒にいると、残った人が話を聞いてしまうかもしれないからね。それだと不公平だということで攻略を終えた組は別室で待機となるんだ」

 なるほど。それで納得が出来た。確かにダンジョンで何が起きたか知ってしまうと結局は後から入った方が有利となってしまうからな。

「おまたせしました」
 
 香川がガラガラと音を鳴らしながら戻ってきた。香川の両手は台車の持ち手に掛けられていた。荷物を乗せた台車を押してきていたのだ。

「ちょうどお昼ですので弁当を持ってきました。こちらはギルドからの支給になります。一人一つずつ取って食べてください。なお二組目は戻ってからのお昼になりますから、もう少し辛抱してください」

 そこまで話した後、香川は二組目を連れて再びダンジョンに潜っていった。何か淡々と業務をこなしている感じだな。凄く生真面目なんだなと思う。

「それではお昼を頂きましょうか」

 徳に促され俺たちも弁当を頂くことになった。モコたちの分もしっかり準備されていたのはありがたい。

「何かウチの子の分もありがとうございます」
「ははっモンスターもお腹が減るからね。事前に聞いていれば準備しますよ」

 徳が笑って応対してくれた。事前にということは香川が気を利かせて伝えておいてくれたのかもな。弁当の他にお茶も用意されているのが嬉しいところだ。

「皆は好き嫌いとかないの?」
「あぁ。これまでも残したことないからな」
「ワン!」
「ピキィ~」
「マァ~」

 愛川の問いかけに答えるとモコたちもそうだよ~と言ってるかのように鳴いていた。モコも本来は犬には食べさせちゃいけないようなものも平気なようなので、食事は人と同じ物で問題ないのだと思う。一応気をつけて見てはいるのだけどラムやマールも一緒のようだ。

「弁当うめぇな。こういうところのは適当なもんかと思ったけど見直したぜ」
 
 熊谷がおかずを頬張りながら言った。忌憚なく意見出来るタイプなんだろうな。ただ思ったことをそのまま口にできる分、余計なトラブルに繋がる危険もあるかもしれない。さっきの俺とのやり取りにもちょっと現れているし。

「これでプロティンがあれば最高だったな」

 中山も弁当には文句はないようだったがやはりプロテインが恋しいようだ。流石筋肉を愛するだけある。

 弁当の味は確かに美味しいな。それに結構ボリュームもある。三匹も満足しているようだしこれで午後からの探索にも万全な状態で挑めるかもしれない。

 こうしてお昼を食べて雑談もしていると二組目が戻ってきた。一組目と同じく香川が別室につれていき戻ってきたが、そこで徳が立ち上がった。

「では次からは私が代わりますよ」
「それでは宜しくお願い致します」
 
 どうやら三組目からは徳が探索に同行するようだ。香川は俺たちと一緒に待つことになるようで、このタイミングでお昼を取るようだった。

 一方で三組目には知り合った三人組の一人である菊池が加わり探索に向かっていた。背中に弓をしょっているな。ジョブは弓を扱うタイプなようだ。

「お疲れ様です。ギルドの仕事も大変ですね」
「私は慣れてますから平気ですよ。ところで武器は決まりましたか?」
 
 香川が俺に聞いてきた。実はそのことでも聞きたいことがあったのだ。

「個人的には鍬があるとよかったのだけど、ない、ですよね?」
 
 俺が聞くと香川が困ったように眉を寄せた。

「鍬は準備がなかったわね。こまったわね」
「あ、それなら鎌があったのでそれで行きますよ。農民のジョブなら鎌も扱えそうなので」

 流石にないものを無理して用意させるわけにはいかないからな。鎌は二本あったのでそれを使うことにした。

「これってちょっと素振りしててもいいですかね?」
「広い場所で危険が無いようにやってください」

 どうやら問題ないようだ。許可を貰ったので俺は鎌を手に少し離れて素振りしてみたわけだが。

「ちょっと動きが固いんじゃないか? もっとこう――」
「うむ。その全身の動きでは威力が十分に出ない気がするぞ。もっと筋肉を活かしてだな」

 俺が鎌でどう戦おうか考えながら動いていると、熊谷と中山が近づいてきて色々と助言してくれた。これは凄くありがたいな。

「ちょっと俺も練習しようかな」
「あ、私も」
「体を動かした方がいいかもしれませんね」
「ワンワン!」
「ピキィ~!」
「マァッ!」

 そして俺に倣うように残った面々も体を動かし始めた。ストレッチしているのもいるな。モコ、ラム、マールの三匹も何だか張り切っているぞ。

「冒険者としては良い心がけだとは思いますが、疲れを残さないようにしてくださいね。後、怪我はしないように」

 俺たちの様子を見ながら香川が言った。とは言え練習中も武器を持ったまま距離が近すぎることがあれば注意したりと目を光らせてくれているあたり流石だと思う。

 そしてそんなことをしている間に三組目も戻ってきて四組目の名前が呼ばれた。その中には大町の名前もあり徳と一緒にダンジョンに潜っていった。

 これで俺たちが最後になることが決まった。一緒に探索に向かうのは俺以外に残った三人であり、それは中山、熊谷、愛川の三人だった。それにモコ、ラム、マールの三匹も加わることになる。奇遇にもここにきて打ち解けてきた面々が残ったわけだな――
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

実家の裏庭がダンジョンだったので、口裂け女や八尺様に全自動で稼がせて俺は寝て暮らす〜元社畜のダンジョン経営〜

チャビューヘ
ファンタジー
過労死寸前でブラック企業を辞めた俺が手に入れたのは、祖父の古民家と「ダンジョン経営システム」だった。 しかもバグで、召喚できるのは「口裂け女」「八尺様」「ターボババア」など日本の怪異だけ。 ……最高じゃないか。物理無効で24時間稼働。これぞ究極の不労所得。 元SEの知識でシステムの穴を突き、怪異たちに全自動でダンジョンを回させる。 ゴブリンは資源。スライムは美容液の原料。災害は全て収益に変換する。 「カイトさん、私……きれい?」 「ああ。効率的で、機能美すらある」 「……褒めてる?」 「褒めてる」 口裂け女は俺の言葉で即落ちした。チョロい。だがそれでいい。 ホワイト待遇で怪異を雇い、俺は縁側で茶をすする。 働いたら負け。それが元社畜の結論だ。 これは、壊れた男と健気な怪異たちが送る、ダンジョン経営スローライフの物語。

異世界カードSHOP『リアのカード工房』本日開店です 〜女神に貰ったカード化スキルは皆を笑顔にさせるギフトでした〜

夢幻の翼
ファンタジー
自分のお店を経営したい! そんな夢を持つアラサー女子・理愛(リア)はアルバイト中に気を失う。次に気がつけばそこでは平謝りする女神の姿。 死亡理由が故意か過失か分からないままに肉体が無い事を理由に異世界転生を薦められたリアは仕方なしに転生を選択する。 だが、その世界では悪事を働かなければ自由に暮らして良い世界。女神に貰ったスキルを駆使して生前の夢だった店舗経営に乗り出したリア。 少々チートなスキルだけれど皆を笑顔にさせる使い方でたちまち町の人気店に。 商業ギルドのマスターに気に入られていろんな依頼も引き受けながら今日も元気にお店を開く。 異世界カードSHOP『リアのカード工房』本日も開店しています。

竜王、冒険者になりましたっ!〜最強チートの俺ですが、人間界の常識をゼロから学び直しています〜

森マッコリ
ファンタジー
最強竜王、人の姿で再出発!常識ゼロで冒険者ライフ! 大昔に起きた大戦で竜の王となったアグナレス! そんなアグナレスには一つだけ悩みがあった。 それは....「超絶暇」だったのだ! アグナレスは暇潰しとして人間になる事に決め世界を旅する事に! 竜王が織り成すドタバタ最強ファンタジー!

転移したらダンジョンの下層だった

Gai
ファンタジー
交通事故で死んでしまった坂崎総助は本来なら自分が生きていた世界とは別世界の一般家庭に転生できるはずだったが神側の都合により異世界にあるダンジョンの下層に飛ばされることになった。 もちろん総助を転生させる転生神は出来る限りの援助をした。 そして総助は援助を受け取るとダンジョンの下層に転移してそこからとりあえずダンジョンを冒険して地上を目指すといった物語です。

処理中です...