親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第二章 冒険者登録編

第78話 探索開始

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 四組目の五人が戻ってきた。三組目と戻ってきた組は最初に比べると表情が落ち着いている気がする。事前に体を動かしたりして気構えが出来ていたのが大きかったのかもしれないな。

 一応これまで入っていった受講者で怪我を負った人はいなかったと思う。回復役がいたか指導官がサポートしてくれたからかもしれないけど、少なくとも大怪我を負うような相手はいなかったということか。

「次はまた私が代わりますね」
「そうかい。それじゃあお願いしようかな」

 どうやら最後になった俺たちには香川がついてくれるようだ。ちなみに俺達が最後だからか徳はそのまま別室に残るらしい。だから俺たちはすぐにダンジョンに潜ることになった。

「手を滑らせないよう気を付けて降りるように」

 香川に言われ先ず熊谷がハシゴで降りていき、続いて愛川、中山、俺となりその後でモコ、マールの順番で降りてきた。

「ラム、俺が受け止めるから安心して」

 スライムのラムはハシゴを降りるのが厳しそうだから、俺が受け止めることにした。ラムは俺の姿を認めた後、穴に向けてライブした。

「ピキィ~」
「よっと!」

 落ちてきたラムを受け止めるとラムがそのまま胸にすり寄ってきた。このあまえん坊さんめぇ~。

「これからダンジョンの探索なのですから、ゆるっとしていないでもっと気を引き締めなさい」

 ラムを撫でている俺に向けて香川の声が降ってきた。見るとハシゴを降りてきた香川が呆れたような目でこっちを見ていた。そんなに俺の顔緩んでただろうか。いや、緩んでるななんとなくわかった。

「えっと、すみません。勿論探索はしっかりやりますので」
「そう願うわ」

 香川も降りてきたところで探索の開始となった。

「こんなに可愛いんだから、つい表情が緩んじゃうのも仕方ないよねぇ」
「おう! 違いないぜ!」

 愛川がマールを撫でて言うと、熊谷も同意しながらモコに構っていた。みんな可愛い子に目がないようだ。

「とはいえ、ここからが本番だ。どんな危険が待っているかわからないからな。改めてジョブを確認しておこうじゃないか。ちなみに俺は筋肉術師だ」

 中山が自分を親指で示しながら言った。いい笑顔見せるなぁ。そしてそのジョブ、俺と試合したときもそういえば言っていたな。

 中山は武器の類は持ってきていないな。試合の時もそうだったけどあの筋肉が一番の武器なんだろう。

「私のジョブは僧侶だよ。回復も出来るし一応は戦いも可能なんだ」

 そういった愛川の手にはメイスが握られていた。先端にトゲトゲがついていて中々物騒な代物に見えるけど、ダンジョンで戦うならこれぐらいは当然必要なんだろう。

「俺は盗賊だ。昔は喧嘩にも明け暮れていたから戦闘も自信あるが、罠とかを見つけるのに適したスキルも持ってるぜ」

 熊谷が拳を突き出しながら言った。改めて見ると熊谷はわりと小柄な方だ。ただしっかり鍛えられた感じもある。ボクサーで言えばフライ級ぐらいだろうか。

 そんな彼のジョブは盗賊か。現実だと悪いイメージがあるがジョブとなるとゲーム的な盗賊を思い浮かべるな。実際罠とかを見つけるスキルがあるようだし。
 
 武器はナイフを選んでいるようで腰のホルダーに収まっていた。

「俺のジョブは農民だ。生産系ではあるけど一応農具で戦うことも可能だから宜しく」
「うむ。試合した限り動きは中々のものだったから頼りにしているぞ」
「それに可愛らしくて頼りになりそうな仲間もいるもんね」
「ワウン!」
「ピキッ!」
「マッ!」

 愛川の声に反応するように三匹がポーズを決めて見せた。中々に様になっていると思う。

「そういえば農民でもテイム出来るんだな」
「あ、あぁ。そうなんだよ。うちの作物を食べたら懐いてくれてな」
 
 三匹を見ながら熊谷が疑問の声を上げた。やっぱりそこは気になるところなのかもだけど、事前に決めておいた設定でしっかり答えた。

「実際食べ物で懐くという例はあるようですからね」
 
 香川が補足するように言ってくれた。おかげでいい感じのフォローになってくれたと思う。勿論香川は真面目に記憶になる事実を伝えてくれたのだろうけど。

 しかし改めて見ると結構バランスがとれている面々だな。組み合わせを決めたのは香川なわけだけど、もしかしたら事前に試合をしたのは、探索でどう振り分けるか決める為だったのかもしれない。
 
 とにかく、こうして俺たちの初めてのダンジョン探索が始まった――
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