親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第二章 冒険者登録編

第81話 危険は忘れた頃にやってくる

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 ダンジョンを出た後、俺たちは香川と一緒に教室に向かった。そこには既に探索を終えた受講生と徳の姿があった。

「徳さんありがとうございました。ここからは引き継ぎますので」
「わかりました。それでは皆さん後は彼女の指示に従ってくださいね」

 そう言い残して徳が教室から出ていった。その後、俺たちが席につくと香川が教壇に立ちザッと教室を見回した後で口を開いた。

「皆様お疲れ様でした。これにて冒険者講習は修了となります。正式な冒険者証はこの後お渡しします。以後、皆様は冒険者として活動して貰うこととなりますが、その前に注意事項を説明いたします」

 香川はそこで一呼吸置き、再び口を開いた。

「ダンジョン探索を行う上での注意事項です。まず一つ目ですが、ダンジョン内で他の冒険者の邪魔をしたり危害を加える真似は禁止です。また当然ですが一般人に危害を加えるような行為は厳禁です。特別な事情がない限りダンジョン以外でのスキルの仕様も禁止となります――」

 香川は冒険者になる上での注意点を説明してくれた。それは常識的な内容も多かったが、やはりジョブやスキルといった特別な力を手にした以上、しっかり知らしめる必要があるのだろう。
 
 それに於呂みたいなのもいるわけだからな。まぁあいつはヤバすぎて勝手に落ちていったわけだが。

「――以上で説明を終わります。それではこのまま部屋を移動しますので、そこで正規の冒険者証を受け取ってください」
 
 そして俺たちは香川と一緒に移動し、少し広めの部屋で正規の冒険者証を受け取ることになり――

「これからの活躍に期待してますよ」
「はい。ありがとうございます」
「ワン!」
「ピキィ!」
「マッ!」

 職員から冒険者証を受け取ると、モコとラム、それにマールも喜んでくれた。そうか、これで俺も正式に冒険者になれたんだな。

 とは言え、これで何か変わるということもないとは思う。基本俺は放置ダンジョンで過ごすことになるだろうし。

「風間さん! 折角正規の冒険者になれたのだから、打ち上げでこれから皆で呑みにいかないかって話してるんだけど、どうかな?」

 全員が冒険者証を受け取り、講習が終わった。後は帰るだけと思っていたら愛川に声をかけられた。

 皆で呑みにか。悪くないけど秋月のこともあるからな。迎えに来てくれると言ってくれていたし。

「実は知り合いが迎えに来てくれる予定で」
「おいおいあんたが来ないと話にならないぜ」

 愛川に説明していると熊谷が会話に入ってきた。熊谷は俺が来ると思っていたようだな。

「迎えに来る相手というのは誰なのだ?」

 中山も近づいてきて聞いてきた。秋月の顔が脳裏に浮かぶ。

「えっと、今ちょっとお世話になってる女の子なんだけど」
「あ! もしかして朝に車で来ていた子? そういえばあの子は風間さんの彼女なの?」

 愛川が思い出したような顔で聞いてきた。いや彼女って!

「違う違う! 実は今わけあって放置ダンジョンで暮らしていてそこの管理者なんだよ」
「へぇ、ダンジョンの管理者なのか。それはちょっと興味あるな」
「うむ。どうだろうか? その子も参加できないか聞いてみるのは?」

 中山からそんな提案を受けた。う~ん飲み会にか。それならちょっと聞いて見ようか、と思い俺は秋月に連絡してみた。

『え? 私もいいの?』
「うん。寧ろ歓迎してくれるみたいでね」
『それなら参加しようかな』

 秋月は乗り気なようだった。その旨を皆に話し待ち合わせ場所を決めて伝えると用意して来てくれる話になった。勿論飲み会なので秋月は運転せず来るようだ。

「そうと決まれば行くか」
「あ、ごめん。その前に俺ちょっと――」
 
 講習が終わって気が緩んだのか、用を足したくなってしまった。そこで皆に伝え俺はモコたちとお手洗いに向かった。

 済ますことを済ませて出た後、皆の下へ戻ろうと思ったのだけど、その途中で香川を見かけた。

「今日はお疲れ様でした」
「あら貴方、まだ何かあったの?」
「いや、ちょっとお手洗いに。香川さんは仕事ですか?」
「書類関係でね。それも終わったし私も今日はもう帰るわ」
「あ、それなら皆で呑みに行く話があるんですが如何ですか? 香川さんなら皆も喜ぶと思うのですが」
「そういうのは遠慮しておくわ」

 あっさり断られてしまった。う~ん色々良くしてもらっているのだけど、どこか壁を感じるんだよな。

「へへっ、見つけたぜ。おあつらえ向きに二人かよ」

 その時、不穏な声が耳に届いた。何かと思って目を向けると、そこには講習の途中で退場となった於呂の姿があったのだが、その手には拳銃が握られていた――
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