親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編

第101話 子どもたちの快進撃

　ダンジョン災害に巻き込まれた子どもたちはゴブと一緒に出口を求めて彷徨っていた。子どもたちの表情には不安の感情が滲み出ているが、時折ゴブに触れ合うことで平常心を保っていた。

「このまま行けば出口にいけるの？　ゴブリンは道がわかっているのかしら？」

　ダンジョンに落ちてから歩き続けていることで担任の森下も不安を拭いきれないようである。

「ゴブ～」

　ゴブが指をさした。そっちに行こうという意思表示なのだろう。ゴブを戦闘に前を行く一行。そのまま歩き続けるが――

「ゴブちゃん危ない！」

　紅葉がゴブを腕を掴み後ろに引いた。直後――天井が崩れ落ちてきた。

「キャッ！」

　紅葉がゴブを引いた勢いで尻餅をついてしまった。だが、そのおかげでゴブは難を逃れることが出来た。

「ゴ、ゴブ～」
「大丈夫。ありがとう」
　
　ゴブが紅葉の腕を取り心配そうに声を上げた。それに笑顔で答える紅葉。どうやら怪我はなさそうである。

「紅葉ちゃん大丈夫！」
「うん。私は大丈夫だよ」
「それなら大丈夫だけど駄目よ無茶したら」

　森下は紅葉が無事なことにホッとしつつ注意した。とは言え紅葉の咄嗟の判断でゴブが助かったのもある。

「無事で良かったね」
「ゴブぅ」
　
　桜も安堵の表情を浮かべていた。ただゴブは塞がった道を見て不安そうな顔を見せていた。

「もしかしてこの先が出口に繋がっていたの？」
「ゴブゥ――」

　ゴブが肩を落とした。ゴブは彼らが脱出できるルートをなんとか考えて進んでくれていたようだが、落石によって使えなくなってしまったようだ。

「そんな、一体どうしたら……」
「落ち着いて先生。とにかく黙っていても良くないと思うんだ」

　苦悩する森下に健太が声をかけた。森下が深呼吸し気を落ち着かせる。

「駄目ね。教え子に慰められるなんて。私がしっかりしないと！」

　頬を両手で叩き森下が表情を引き締めた。

「とにかく出口を探しましょう！」
「ギヤッギャッ！」
「ギャッ！」
「ギギャッ！」
「ギヒャッ！」

　森下が声を上げたその時、ゴブリンの鳴く声が聞こえてきた。しかも皆の方へ近づいてきている。

「そんな、まさか落石で――」
　
　森下の顔が再び青くなった。これまでと違いこれでは奇襲は難しい。

「ど、どうしよう」
「……そうだ！　石だよ！」

　不安がる桜。すると健太がハッとした顔になり落石の方へ走っていった。

「手頃な石を使おう！　これで追い払うんだ！」

　健太に言われ皆も石を手に取った。森下も手頃な石を掴む。その間にもゴブリンの群れが近づいてきているが。

「皆！　石を持った！」
「「「「「おーーーーーー！」」」」」

　そして子どもたちと森下が横に並び、向かってくるゴブリンに投石していく。

「石を投げてやれ～～～～！」
「あっちいって！」
「やっつけろ～！」

　子どもたちが石を投げるとゴブリンが怯んだ。更に森下が腕を回転させるようにしながら石を投げつける。

　子どもたちと比べても明らかに勢いの違う石がゴブリンの頭に命中した。

「凄いや先生！」
「昔やってたソフトボールが役に立ったわね！」

　どうやらソフトボール経験者だったようだ。そしてゴブもスリングショットで鉄球を放ちゴブリンに命中させていった。

　だがそれでも一部のゴブリンは段々と距離を詰めてくるが。

「はぁああぁああ！」

　一瞬の隙をついて紅葉が飛び出さし前に出てきていたゴブリンを投げ飛ばした。泡を吹いて倒れるゴブリン。更にゴブが打った鉄球によって最後の一匹も倒れたのだった――