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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第108話 ゴブとの出会い
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子どもたちを見つけた。だけど一緒にゴブリンが紛れているのがわかった。あれは一体?
「なんでゴブリンがいやがるんだ!」
「危ないから離れろ!」
紅葉の横を走るゴブリンを見て、熊谷と中山が叫んだ。熊谷に関しては既にナイフを構えている。
でもあのゴブリン、他のゴブリンと違う――見た目もどこか愛嬌がある感じがするんだが。
「ダメ!」
「は? おいあぶねぇぞ!」
一匹のゴブリンに向けて熊谷がナイフを投擲しようとしたが紅葉がゴブリンを庇うように前に出た。熊谷がナイフを構えたまま怪訝な顔を見せている。
「違うよ! ゴブちゃんは敵じゃないの! 私たちを助けてくれたんだよ!」
紅葉が必死に訴えた。ゴブリンが助けてくれた――確かにそう考えてみればこの一匹だけが紅葉たちと一緒にいるのもわかる気がする。
それによく見ると随分と怪我をしているようだ。
「そのゴブリン」
「ゴブちゃんだよ!」
俺が話しかけると紅葉が訂正するように声を上げた。ゴブ、という名前ということか。
「あ、うん。えっとゴブ、が皆を逃がしてくれたってこと?」
「そうなんです。私も最初はなにか魂胆があるのかなと思ったのだけど、本当に色々と協力してくれて」
紅葉に代わって担任と思われる女性が説明してくれた。それでいくとこのゴブリンは俺たちの味方ということになるな。
「むぅ、にわかには信じがたいが」
「確かに俺たちを見ても何もしてこないが」
「それに、よく見ると戦ってきたゴブリンとは違うよね。何か可愛らしさがあるというか」
愛川がジッとゴブリンを見ながら言った。確かにそれは俺も感じたことだ。
「皆を助けてくれたなら、怪我を放ってはおけないよね。治してあげるね」
「ゴブ~」
愛川が回復魔法をゴブに掛けた。ゴブも嬉しそうだな。そして鳴き声も他のゴブリンとは異なっている。
「ワンワン」
「ゴブ?」
「ピキィ~」
「ゴブ~♪」
「マァ~」
「ゴブッゴブッ!」
な、何か治療してもらいながらゴブはモコ、ラム、マールと楽しそうにしているな。モンスター同士通じ合うものがあるのかもしれない。
「その、あまりここに長居しないほうがいいと思うのだけど」
「何かあるのか?」
不安そうな顔をしている女教師に中山が尋ねた。
「それが何だから大きいゴブリンが」
『グォォォッォォオッッォオォオオオ!』
その時、大きな叫び声がダンジョン内に響き渡った。その叫びに俺たちは身を固めた。
「な、なんだこの声」
「今のはホブゴブリンの声だよ!」
熊谷が疑問符混じりの声を上げると、一緒にいた少年が正体を教えてくれた。この子は公園で見たことあるな。確か大黒の息子で健太と呼ばれていた筈だ。
「ホブゴブリンだと?」
「あのデカいのがそうか――」
中山の視線の先に確かに一際大きなゴブリンがいた。こっちに向かって近づいてきている。
「に、逃げないと」
「いや、これだけの人数がいる状況で逃げても他のゴブリンに挟まれたら厄介だぜ」
「うむ。ここでやるしかないな」
女教師は動揺しているが確かに熊谷と中山の言う通り、このまま逃げてもジリ貧になる可能性がある。相手はゴブリンを引き連れているが見たところホブゴブリンの他は二匹だ。
これなら上手くやれば戦えるかもしれない、いや戦って勝利しないとダメなんだよな。覚悟を決めないといけないだろう――
「なんでゴブリンがいやがるんだ!」
「危ないから離れろ!」
紅葉の横を走るゴブリンを見て、熊谷と中山が叫んだ。熊谷に関しては既にナイフを構えている。
でもあのゴブリン、他のゴブリンと違う――見た目もどこか愛嬌がある感じがするんだが。
「ダメ!」
「は? おいあぶねぇぞ!」
一匹のゴブリンに向けて熊谷がナイフを投擲しようとしたが紅葉がゴブリンを庇うように前に出た。熊谷がナイフを構えたまま怪訝な顔を見せている。
「違うよ! ゴブちゃんは敵じゃないの! 私たちを助けてくれたんだよ!」
紅葉が必死に訴えた。ゴブリンが助けてくれた――確かにそう考えてみればこの一匹だけが紅葉たちと一緒にいるのもわかる気がする。
それによく見ると随分と怪我をしているようだ。
「そのゴブリン」
「ゴブちゃんだよ!」
俺が話しかけると紅葉が訂正するように声を上げた。ゴブ、という名前ということか。
「あ、うん。えっとゴブ、が皆を逃がしてくれたってこと?」
「そうなんです。私も最初はなにか魂胆があるのかなと思ったのだけど、本当に色々と協力してくれて」
紅葉に代わって担任と思われる女性が説明してくれた。それでいくとこのゴブリンは俺たちの味方ということになるな。
「むぅ、にわかには信じがたいが」
「確かに俺たちを見ても何もしてこないが」
「それに、よく見ると戦ってきたゴブリンとは違うよね。何か可愛らしさがあるというか」
愛川がジッとゴブリンを見ながら言った。確かにそれは俺も感じたことだ。
「皆を助けてくれたなら、怪我を放ってはおけないよね。治してあげるね」
「ゴブ~」
愛川が回復魔法をゴブに掛けた。ゴブも嬉しそうだな。そして鳴き声も他のゴブリンとは異なっている。
「ワンワン」
「ゴブ?」
「ピキィ~」
「ゴブ~♪」
「マァ~」
「ゴブッゴブッ!」
な、何か治療してもらいながらゴブはモコ、ラム、マールと楽しそうにしているな。モンスター同士通じ合うものがあるのかもしれない。
「その、あまりここに長居しないほうがいいと思うのだけど」
「何かあるのか?」
不安そうな顔をしている女教師に中山が尋ねた。
「それが何だから大きいゴブリンが」
『グォォォッォォオッッォオォオオオ!』
その時、大きな叫び声がダンジョン内に響き渡った。その叫びに俺たちは身を固めた。
「な、なんだこの声」
「今のはホブゴブリンの声だよ!」
熊谷が疑問符混じりの声を上げると、一緒にいた少年が正体を教えてくれた。この子は公園で見たことあるな。確か大黒の息子で健太と呼ばれていた筈だ。
「ホブゴブリンだと?」
「あのデカいのがそうか――」
中山の視線の先に確かに一際大きなゴブリンがいた。こっちに向かって近づいてきている。
「に、逃げないと」
「いや、これだけの人数がいる状況で逃げても他のゴブリンに挟まれたら厄介だぜ」
「うむ。ここでやるしかないな」
女教師は動揺しているが確かに熊谷と中山の言う通り、このまま逃げてもジリ貧になる可能性がある。相手はゴブリンを引き連れているが見たところホブゴブリンの他は二匹だ。
これなら上手くやれば戦えるかもしれない、いや戦って勝利しないとダメなんだよな。覚悟を決めないといけないだろう――
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