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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第115話 宝箱を見つけた風間
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目の前に宝箱がある。この形は以前俺が暮らしているダンジョンに出てきたものと同じだ。他のダンジョンで見るのは初めてだけどな。
ただ、前に見たのよりもだいぶ大きくも感じる。
「これと同じ宝箱からゴブちゃんの武器が手に入ったんだよ」
紅葉がそう教えてくれた。ゴブが腕に装備しているスリングショットがそれらしい。
「とりあえず開けてみるよ。ただ罠があるかもしれないからゴブと一緒に少し離れてて」
「罠! お兄ちゃん大丈夫?」
「ゴブゥ……」
罠と聞いて紅葉とゴブが不安そうな顔を見せた。優しい子たちだな。罠については実際不安もある。だけど鍬も折れた今、この状況を打破するものを手に入れたいという気持ちが強い。
例えリスクがあるにしても、この宝箱を確認する必要があるだろう。
「大丈夫。以前にも開けたことがあるから」
俺は紅葉とゴブを安心させるよう答えた。わりと強がりだけどな。正直こんなときに熊谷がいたら心強かったんだけどな。
だが、今それを言っても仕方ない。とにかく慎重に宝箱に指をかけて開いていった。大きめな分蓋に重量感があった。
俺はとにかく慎重に、時間を駆けて少しずつ開いていく。
「ふぅうぅう、大丈夫罠はないようだ」
「良かったぁ~」
「ゴブゥ~」
完全に開けきった後、俺は額を袖で拭った。後ろからは紅葉とゴブの安堵の声も聞こえてきた。
「さて中身は、これは鍬か!」
宝箱の中身を取り出して思わず声を上げていた。まさかこんなにもタイミングよく新しい鍬が手に入るとは思わなかった。
「わぁ、綺麗な玉がついてるね」
「確かに。これは水晶玉かな」
鍬の刃床部には緑色の玉が埋め込まれ光輝いていた。柄には芽を思わせる意匠が施されている。
「これは俺が使ってもいいかな?」
「ゴブゥ」
「ゴブちゃんがいいよって言ってるみたい」
どうやら紅葉もゴブも俺が使うことに異論はないようだ。ただ、ゴブの顔色の悪さが気になる。
「痛むか?」
「ゴ、ゴブゥ――」
ゴブは笑みを浮かべたが、強がりなのがわかる。不味いな、何か怪我を治す手段をあればいいんだが。
そう考えながら俺は鍬を見た。何か、この鍬から不思議な力を感じた気がした。
「……何となく」
俺は何か起きることを願いながら鍬を地面に振り下ろした。そのまま耕すように動かす。
「え? お兄ちゃん何してるの?」
「いや、何かが起こりそうな気がして――」
紅葉の疑問に答えた直後だった。鍬を振るった地面からニョキニョキと草が生えてきた。
「――ゴブゥ!」
「あ、ゴブちゃんダメ!」
するとゴブが生えてきた草に手を伸ばしそのままモシャモシャと食べてしまった。紅葉が慌てて止めるがゴブがゴクリと呑み込んでしまった。
「ゴブ大丈夫か!」
「お腹いたくない!」
「――ゴブゥ!」
すると――なんとゴブの肩の傷が塞がっていき、ゴブも元気を取り戻していた。
「凄い! お兄ちゃんゴブちゃんの怪我が治ってるよ!」
「あぁ、そうだな。しかしこれって」
俺は鍬を確認しながら考える。何が起きたのか不思議だったが、もしかしたらこの鍬は薬草を生やす効果があったのかもしれない。もちろん普通の薬草にここまでの効果はないが、これは今ダンジョンで手に入れた鍬だ。
それならば効果の高い薬草を生み出す力があってもおかしくない。
「それならもっと薬草を手に入れておこう!」
俺はそう考えて鍬を振ったが、だが薬草が生えてくることはなかった。
「あれ? まさか一度だけ?」
「お兄ちゃん。何か玉が光ってないよ?」
「あ、確かに……」
宝箱から出した直後は鍬についた水晶玉が緑色の光を発していた。だけど今はその光も消えてしまっている。
つまり、この鍬の玉が光っている時に薬草を生えさせることが出来るのか。今の段階だと予想を立てるぐらいしか出来ないが、間違ってはいない気がする。
そうなると再び光る時が来るのかといったところだけど、こればかりはまだわからないな。
とにかくゴブの怪我を治療できた。今はそれを喜ぶべきだろうな――
ただ、前に見たのよりもだいぶ大きくも感じる。
「これと同じ宝箱からゴブちゃんの武器が手に入ったんだよ」
紅葉がそう教えてくれた。ゴブが腕に装備しているスリングショットがそれらしい。
「とりあえず開けてみるよ。ただ罠があるかもしれないからゴブと一緒に少し離れてて」
「罠! お兄ちゃん大丈夫?」
「ゴブゥ……」
罠と聞いて紅葉とゴブが不安そうな顔を見せた。優しい子たちだな。罠については実際不安もある。だけど鍬も折れた今、この状況を打破するものを手に入れたいという気持ちが強い。
例えリスクがあるにしても、この宝箱を確認する必要があるだろう。
「大丈夫。以前にも開けたことがあるから」
俺は紅葉とゴブを安心させるよう答えた。わりと強がりだけどな。正直こんなときに熊谷がいたら心強かったんだけどな。
だが、今それを言っても仕方ない。とにかく慎重に宝箱に指をかけて開いていった。大きめな分蓋に重量感があった。
俺はとにかく慎重に、時間を駆けて少しずつ開いていく。
「ふぅうぅう、大丈夫罠はないようだ」
「良かったぁ~」
「ゴブゥ~」
完全に開けきった後、俺は額を袖で拭った。後ろからは紅葉とゴブの安堵の声も聞こえてきた。
「さて中身は、これは鍬か!」
宝箱の中身を取り出して思わず声を上げていた。まさかこんなにもタイミングよく新しい鍬が手に入るとは思わなかった。
「わぁ、綺麗な玉がついてるね」
「確かに。これは水晶玉かな」
鍬の刃床部には緑色の玉が埋め込まれ光輝いていた。柄には芽を思わせる意匠が施されている。
「これは俺が使ってもいいかな?」
「ゴブゥ」
「ゴブちゃんがいいよって言ってるみたい」
どうやら紅葉もゴブも俺が使うことに異論はないようだ。ただ、ゴブの顔色の悪さが気になる。
「痛むか?」
「ゴ、ゴブゥ――」
ゴブは笑みを浮かべたが、強がりなのがわかる。不味いな、何か怪我を治す手段をあればいいんだが。
そう考えながら俺は鍬を見た。何か、この鍬から不思議な力を感じた気がした。
「……何となく」
俺は何か起きることを願いながら鍬を地面に振り下ろした。そのまま耕すように動かす。
「え? お兄ちゃん何してるの?」
「いや、何かが起こりそうな気がして――」
紅葉の疑問に答えた直後だった。鍬を振るった地面からニョキニョキと草が生えてきた。
「――ゴブゥ!」
「あ、ゴブちゃんダメ!」
するとゴブが生えてきた草に手を伸ばしそのままモシャモシャと食べてしまった。紅葉が慌てて止めるがゴブがゴクリと呑み込んでしまった。
「ゴブ大丈夫か!」
「お腹いたくない!」
「――ゴブゥ!」
すると――なんとゴブの肩の傷が塞がっていき、ゴブも元気を取り戻していた。
「凄い! お兄ちゃんゴブちゃんの怪我が治ってるよ!」
「あぁ、そうだな。しかしこれって」
俺は鍬を確認しながら考える。何が起きたのか不思議だったが、もしかしたらこの鍬は薬草を生やす効果があったのかもしれない。もちろん普通の薬草にここまでの効果はないが、これは今ダンジョンで手に入れた鍬だ。
それならば効果の高い薬草を生み出す力があってもおかしくない。
「それならもっと薬草を手に入れておこう!」
俺はそう考えて鍬を振ったが、だが薬草が生えてくることはなかった。
「あれ? まさか一度だけ?」
「お兄ちゃん。何か玉が光ってないよ?」
「あ、確かに……」
宝箱から出した直後は鍬についた水晶玉が緑色の光を発していた。だけど今はその光も消えてしまっている。
つまり、この鍬の玉が光っている時に薬草を生えさせることが出来るのか。今の段階だと予想を立てるぐらいしか出来ないが、間違ってはいない気がする。
そうなると再び光る時が来るのかといったところだけど、こればかりはまだわからないな。
とにかくゴブの怪我を治療できた。今はそれを喜ぶべきだろうな――
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