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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第116話 仕方なく奥へ
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「怪我が治ってよかったな」
「ゴブゥ♪」
薬草の効果で痛みも消えたのか、ゴブの顔にも笑みが戻った。しかし、改めて見ると本当愛嬌のある顔をしているな。
他のゴブリンはお世辞にも可愛いとはいえなかったが、このゴブは可愛げがある。
「ゴブちゃん良かったね」
「ゴブゥ~」
紅葉がゴブを撫でると、ゴブは嬉しそうに目を細めた。するとゴブの視線が俺に向けられた。
「どうかしたのか?」
「ゴブゥ……」
あれ? 何かしょんぼりしてる?
「きっとゴブちゃんは、お兄ちゃんにも撫でてもらいたいんだよ!」
すると紅葉がそんなことを言ってきた。そうなのか? 俺は少し戸惑いながらゴブの頭を撫でた。すると、ゴブは手を上げて嬉しそうに笑った。なんだか可愛らしいな。
「やっぱり宝箱はいいのが入っているんだね」
俺がゴブを撫でるのを認めた後、紅葉が宝箱に目を向けて感心していた。手に入った鍬の力は確かに役立つものだったし、他の宝箱からゴブが手に入れた武器も使いやすそうだからそう思ったんだろうな。
「あぁそうだな。折角手に入れたんだから大切にしないと」
俺は新たに手に入れた鍬を握りしめながら自分に言い聞かせた。武器としてはどのぐらい強いのか未知数だけど、道具を上手く扱えるかは使い手次第だからな。
さて、問題はこの後どうするかだ。一旦来た道を戻ってもいいが、また岩が転がってこないとは限らない。
そう考えたらやっぱり一旦下に向かうべきか。地上からは一旦離れることになるが、別ルートを探したほうが安全だろう。
本当はすぐにでも上に行きたいし、他の皆のことも心配なんだけどな。モコ、ラム、マールのこともある。
とは言え中山や熊谷、愛川も頼りになる仲間だ。皆無事であると信じたい、いや無事な筈だ。
「遠回りになるかもだけど、ここから一旦下に向かおう。大変かもしれないけど、上の罠がまた発動するとそっちの方が危険だからな」
「うん。お兄ちゃんを信じるよ」
「ゴブッ!」
紅葉とゴブも俺の意見に賛同してくれた。下に向かう俺たちだが先に敵の姿はない。そのまま平坦な道にたどり着き、ヘビのようにうねる横穴を進んでいった――
◆◇◆
「クソ! 風間たちが落ちていったぞ!」
ダンジョンの地面が崩れ風間たちが落ちていったことに熊谷は焦っていた。それは中山や愛川たちも一緒である。
「ワンワン!」
「ピキィ!」
「マァ~! マーッ!」
勿論それは取り残されたモコやラム、マールにしても同じだった。空いた穴にむけて必死に叫んでいる。
「――ワン!」
「ちょ、ダメだよ危ないよ!」
モコが穴に飛び込みそうなのを認めた愛川が後ろから抱きつき止めた。モコは暴れるが、愛川は決して放さなかった。
「皆も変な気は起こさないでね! 風間さんはきっと大丈夫! それにここで皆が無茶して怪我でもしたら一番悲しむのは風間さんなんだから!」
「――クゥ~ン」
「ピキィ……」
「マァ……」
必死に訴える愛川の姿を見て、モコも飛び込むのを止めたようだ。ラムやマールも細い声で答えたが、心配なのは変わらないだろう。
「その、この後はどうしたら?」
「……大丈夫だ。俺たちが必ず出口まで連れて行く」
不安そうに聞いてきた森下に中山が答えた。風間たちのことは心配だが、今は先生や他の子どもたちもいる。その中で取り乱していては残された皆も不安になってしまう。
「紅葉ちゃん、ゴブちゃん……」
「だ、だいじょうぶかな? 皆、こんなこと……」
子どもたちの中でも特に桜と健太はショックが大きいようだった。紅葉と仲が良かったのもあるしゴブに心を開いていたのも大きいだろう。
「心配するな。風間はあれで頼りになるからな。きっと今頃出口に向かってるさ」
二人をフォローするように熊谷がいった。彼なりに気を使ってのことだろう。
「やっぱりこのまま出口を目指すんだね……」
「――俺たちの目的は、ダンジョン災害に巻き込まれた先生と子どもたちを助けることだからな」
愛川の呟きに熊谷が反応した。穴を振り返り愛川が心配そうに眉を落とす。
「風間ならきっと大丈夫だ。あいつは逞しい。それに俺の筋肉も風間は大丈夫だって言ってるからな」
そう言って力こぶを作り中山が二カッと笑った。その顔に愛川の表情もすこし明るくなった。
モコやラム、マールも心配そうにしていたが今は信じるしか無いと察したのだろう。そして彼らもまた出口を目指して再び動き出した――
「ゴブゥ♪」
薬草の効果で痛みも消えたのか、ゴブの顔にも笑みが戻った。しかし、改めて見ると本当愛嬌のある顔をしているな。
他のゴブリンはお世辞にも可愛いとはいえなかったが、このゴブは可愛げがある。
「ゴブちゃん良かったね」
「ゴブゥ~」
紅葉がゴブを撫でると、ゴブは嬉しそうに目を細めた。するとゴブの視線が俺に向けられた。
「どうかしたのか?」
「ゴブゥ……」
あれ? 何かしょんぼりしてる?
「きっとゴブちゃんは、お兄ちゃんにも撫でてもらいたいんだよ!」
すると紅葉がそんなことを言ってきた。そうなのか? 俺は少し戸惑いながらゴブの頭を撫でた。すると、ゴブは手を上げて嬉しそうに笑った。なんだか可愛らしいな。
「やっぱり宝箱はいいのが入っているんだね」
俺がゴブを撫でるのを認めた後、紅葉が宝箱に目を向けて感心していた。手に入った鍬の力は確かに役立つものだったし、他の宝箱からゴブが手に入れた武器も使いやすそうだからそう思ったんだろうな。
「あぁそうだな。折角手に入れたんだから大切にしないと」
俺は新たに手に入れた鍬を握りしめながら自分に言い聞かせた。武器としてはどのぐらい強いのか未知数だけど、道具を上手く扱えるかは使い手次第だからな。
さて、問題はこの後どうするかだ。一旦来た道を戻ってもいいが、また岩が転がってこないとは限らない。
そう考えたらやっぱり一旦下に向かうべきか。地上からは一旦離れることになるが、別ルートを探したほうが安全だろう。
本当はすぐにでも上に行きたいし、他の皆のことも心配なんだけどな。モコ、ラム、マールのこともある。
とは言え中山や熊谷、愛川も頼りになる仲間だ。皆無事であると信じたい、いや無事な筈だ。
「遠回りになるかもだけど、ここから一旦下に向かおう。大変かもしれないけど、上の罠がまた発動するとそっちの方が危険だからな」
「うん。お兄ちゃんを信じるよ」
「ゴブッ!」
紅葉とゴブも俺の意見に賛同してくれた。下に向かう俺たちだが先に敵の姿はない。そのまま平坦な道にたどり着き、ヘビのようにうねる横穴を進んでいった――
◆◇◆
「クソ! 風間たちが落ちていったぞ!」
ダンジョンの地面が崩れ風間たちが落ちていったことに熊谷は焦っていた。それは中山や愛川たちも一緒である。
「ワンワン!」
「ピキィ!」
「マァ~! マーッ!」
勿論それは取り残されたモコやラム、マールにしても同じだった。空いた穴にむけて必死に叫んでいる。
「――ワン!」
「ちょ、ダメだよ危ないよ!」
モコが穴に飛び込みそうなのを認めた愛川が後ろから抱きつき止めた。モコは暴れるが、愛川は決して放さなかった。
「皆も変な気は起こさないでね! 風間さんはきっと大丈夫! それにここで皆が無茶して怪我でもしたら一番悲しむのは風間さんなんだから!」
「――クゥ~ン」
「ピキィ……」
「マァ……」
必死に訴える愛川の姿を見て、モコも飛び込むのを止めたようだ。ラムやマールも細い声で答えたが、心配なのは変わらないだろう。
「その、この後はどうしたら?」
「……大丈夫だ。俺たちが必ず出口まで連れて行く」
不安そうに聞いてきた森下に中山が答えた。風間たちのことは心配だが、今は先生や他の子どもたちもいる。その中で取り乱していては残された皆も不安になってしまう。
「紅葉ちゃん、ゴブちゃん……」
「だ、だいじょうぶかな? 皆、こんなこと……」
子どもたちの中でも特に桜と健太はショックが大きいようだった。紅葉と仲が良かったのもあるしゴブに心を開いていたのも大きいだろう。
「心配するな。風間はあれで頼りになるからな。きっと今頃出口に向かってるさ」
二人をフォローするように熊谷がいった。彼なりに気を使ってのことだろう。
「やっぱりこのまま出口を目指すんだね……」
「――俺たちの目的は、ダンジョン災害に巻き込まれた先生と子どもたちを助けることだからな」
愛川の呟きに熊谷が反応した。穴を振り返り愛川が心配そうに眉を落とす。
「風間ならきっと大丈夫だ。あいつは逞しい。それに俺の筋肉も風間は大丈夫だって言ってるからな」
そう言って力こぶを作り中山が二カッと笑った。その顔に愛川の表情もすこし明るくなった。
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