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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第117話 地上の動き
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「皆はまだ戻ってこないんですか?」
山守が不安そうな表情で係長に聞いていた。既に風間たちがダンジョンに向かったことは聞いていて、その時も取り乱したものだが、今は皆を信じるしかなかった。
それでも不満があるとしたら風間たちがダンジョンに入るまでの経緯が曖昧になってることだろう。
山守が説明を求めても冒険者の活動についての詳細は一般人には説明出来ないの一点張りだったのである。
だがダンジョンに風間たちが向かってから随分と時間が経っている。山守の不安は大きくなる一方だ。
「残念だがまだ戻ってはいないな。今は信じて待つ他ないでしょう」
「それなら、他に救助隊とか向かわせることは出来ないのですか?」
「こちらも出来る限りのことはしている。他の冒険者への協力要請も引き続き行っているのだよ」
それが係長の変わらない返答だった。山守は何度も状況を確認しに来ているが答えは常に一緒だった。
「――今回発生したダンジョンは皆が入っても問題ないレベルなんですか?」
「…………」
山守は方向性を変えて質問していた。それに対する係長の答えはなかった。
「それも答えられないのですか?」
「答えようがないな。ダンジョンはそもそも危険な場所だ。確実に安全な保証など無い。今は彼らを信じるしか無いだろう」
「そんなこと――」
わかってると山守は言いたかった。だが今何を言ったところで風間たちがダンジョンに入った事実は変わらない。ただ待つ他ないこともわかっている。
だが、ギルド職員、特に係長の態度には納得できない部分も多いのである。
「私が冒険者だったら……」
ついそんな言葉が口に出てしまった。もし自分にジョブが与えられていたらすぐにでも冒険者として登録して皆を追いかけたい、それが本音である。
「たとえ冒険者だったとしても厳しいね。登録したてのG級やF級程度ではこの手のダンジョン災害には対応できないからね」
そう説明したのは最初に風間たちに対応したギルド職員だった。それを聞いた山守の顔色が変わり、係長は職員を睨みつけた。
「どういうことですか? それならどうして皆がダンジョンに?」
「そ、それは――」
「一体何を騒いでいるのですか?」
山守に詰め寄られ焦る係長の耳に、別な声が届いた。その声には山守も聞き覚えがあった。
「あ! 香川さん! それに天野川さんも」
山守が声を張り上げた。その反応を見て係長の顔が曇る。
「あ、貴方がどうしてここに?」
「緊急事態と聞きまして、今回だけ特別に冒険者として活動することとなりました。彼女も先程手が空いたということでしたので同行してもらいます。現在の状況を教えてもらえますか?」
「えっと、それは、その」
「風間さんたちが皆を助けるためにダンジョンに入ってしまって、でもまだ戻ってきてないんです」
言葉に詰まる係長を他所に山守が事情を説明した。係長が苦虫を噛み潰したような顔を見せる。
「これは一体どういうことですか? 彼らはまだ登録したてでランクもG級。緊急事態時の要請対象にはなってないはずですよ」
香川が厳しい視線を係長に向けた。係長は明らかに狼狽していた。
「それは――実は我々も入れないと忠告したのですが、彼らが静止も聞かずムリヤリ向かってしまったのです。G級とは言え人数はいたので対応しきれず、そこは申し訳ないと思ってます」
「そんなこと、さっきは言ってなかったじゃないですか!」
係長の説明に山守は納得していなかった。事前の説明には一切出てこなかった話であり、責任逃れに感じられてしかたなかったのだろう。
「それは君に心配を掛けたくなかったからだ」
「それが事実だとして、真っ先に冒険者ギルドに報告すべきでしょう。ですが一切こちらにはそのような話は届いてませんでしたよ」
「申し訳ありません。このような緊急事態の為、他にも仕事が山積みでして連絡が遅れてました」
香川の追求にも答える係長。だがどうみても言い訳にしか思えない。
「貴方も見ていたのですか?」
すると香川がもう一人の職員に問いかけた。係長が職員を睨みつける。余計なことを言うなよと言わんばかりに。
「――申し訳ありません。係長が許可をした段階で私も止めるべきでした。ですが他にあてがなかったのも事実であり、つい黙認してしまいました」
だが係長の目論見は外れ、職員が事実を話した。そのうえで職員は深々と頭を下げた。
「――どうやら貴方には色々と確認しなければいけないようですね。ですが先ずはダンジョン災害に巻き込まれた人々の救出が優先となります」
「私もそう思う。急ごう」
ここに来て天野川が初めて口を開き、香川も首肯した。
「うちの職員が申し訳ありませんでした」
そして改めて香川が山守に頭を下げた。山守が首を振って彼女を宥める。
「そんな、香川さんは何もわるくありませんから」
「いえ、これはギルドの不始末です。とにかくここからは責任を持って私たちが向かいますので」
そして香川と天野川が山守に見送られながらダンジョンに向かった――
山守が不安そうな表情で係長に聞いていた。既に風間たちがダンジョンに向かったことは聞いていて、その時も取り乱したものだが、今は皆を信じるしかなかった。
それでも不満があるとしたら風間たちがダンジョンに入るまでの経緯が曖昧になってることだろう。
山守が説明を求めても冒険者の活動についての詳細は一般人には説明出来ないの一点張りだったのである。
だがダンジョンに風間たちが向かってから随分と時間が経っている。山守の不安は大きくなる一方だ。
「残念だがまだ戻ってはいないな。今は信じて待つ他ないでしょう」
「それなら、他に救助隊とか向かわせることは出来ないのですか?」
「こちらも出来る限りのことはしている。他の冒険者への協力要請も引き続き行っているのだよ」
それが係長の変わらない返答だった。山守は何度も状況を確認しに来ているが答えは常に一緒だった。
「――今回発生したダンジョンは皆が入っても問題ないレベルなんですか?」
「…………」
山守は方向性を変えて質問していた。それに対する係長の答えはなかった。
「それも答えられないのですか?」
「答えようがないな。ダンジョンはそもそも危険な場所だ。確実に安全な保証など無い。今は彼らを信じるしか無いだろう」
「そんなこと――」
わかってると山守は言いたかった。だが今何を言ったところで風間たちがダンジョンに入った事実は変わらない。ただ待つ他ないこともわかっている。
だが、ギルド職員、特に係長の態度には納得できない部分も多いのである。
「私が冒険者だったら……」
ついそんな言葉が口に出てしまった。もし自分にジョブが与えられていたらすぐにでも冒険者として登録して皆を追いかけたい、それが本音である。
「たとえ冒険者だったとしても厳しいね。登録したてのG級やF級程度ではこの手のダンジョン災害には対応できないからね」
そう説明したのは最初に風間たちに対応したギルド職員だった。それを聞いた山守の顔色が変わり、係長は職員を睨みつけた。
「どういうことですか? それならどうして皆がダンジョンに?」
「そ、それは――」
「一体何を騒いでいるのですか?」
山守に詰め寄られ焦る係長の耳に、別な声が届いた。その声には山守も聞き覚えがあった。
「あ! 香川さん! それに天野川さんも」
山守が声を張り上げた。その反応を見て係長の顔が曇る。
「あ、貴方がどうしてここに?」
「緊急事態と聞きまして、今回だけ特別に冒険者として活動することとなりました。彼女も先程手が空いたということでしたので同行してもらいます。現在の状況を教えてもらえますか?」
「えっと、それは、その」
「風間さんたちが皆を助けるためにダンジョンに入ってしまって、でもまだ戻ってきてないんです」
言葉に詰まる係長を他所に山守が事情を説明した。係長が苦虫を噛み潰したような顔を見せる。
「これは一体どういうことですか? 彼らはまだ登録したてでランクもG級。緊急事態時の要請対象にはなってないはずですよ」
香川が厳しい視線を係長に向けた。係長は明らかに狼狽していた。
「それは――実は我々も入れないと忠告したのですが、彼らが静止も聞かずムリヤリ向かってしまったのです。G級とは言え人数はいたので対応しきれず、そこは申し訳ないと思ってます」
「そんなこと、さっきは言ってなかったじゃないですか!」
係長の説明に山守は納得していなかった。事前の説明には一切出てこなかった話であり、責任逃れに感じられてしかたなかったのだろう。
「それは君に心配を掛けたくなかったからだ」
「それが事実だとして、真っ先に冒険者ギルドに報告すべきでしょう。ですが一切こちらにはそのような話は届いてませんでしたよ」
「申し訳ありません。このような緊急事態の為、他にも仕事が山積みでして連絡が遅れてました」
香川の追求にも答える係長。だがどうみても言い訳にしか思えない。
「貴方も見ていたのですか?」
すると香川がもう一人の職員に問いかけた。係長が職員を睨みつける。余計なことを言うなよと言わんばかりに。
「――申し訳ありません。係長が許可をした段階で私も止めるべきでした。ですが他にあてがなかったのも事実であり、つい黙認してしまいました」
だが係長の目論見は外れ、職員が事実を話した。そのうえで職員は深々と頭を下げた。
「――どうやら貴方には色々と確認しなければいけないようですね。ですが先ずはダンジョン災害に巻き込まれた人々の救出が優先となります」
「私もそう思う。急ごう」
ここに来て天野川が初めて口を開き、香川も首肯した。
「うちの職員が申し訳ありませんでした」
そして改めて香川が山守に頭を下げた。山守が首を振って彼女を宥める。
「そんな、香川さんは何もわるくありませんから」
「いえ、これはギルドの不始末です。とにかくここからは責任を持って私たちが向かいますので」
そして香川と天野川が山守に見送られながらダンジョンに向かった――
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