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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第118話 疲れ
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新しい武器を手に入れたとは言え、俺たちの進み方は変わらなかった。周囲に敵がいないか確認し、罠にも注意しながら息をこらして進む。
でも、一緒に進んでいる紅葉はまだ小学生。このままただ進むのは精神的にキツイだろう。
「紅葉ちゃん大丈夫かい? 疲れたら遠慮なく言ってくれよ」
「う、うん。大丈夫だよ。私、体力には自信があるの」
そう答える紅葉の笑顔はどうみても強がりによるものだ。息も荒くなってきているし疲れが溜まっているのは間違いないだろう。
「ちょっと休もう。このあたりはモンスターの姿もないようだし」
ちょうど幅が広くなってきたところでもある。道は枝分かれになっているから注意は必要だが少しでも休めればまた違うだろう。
「お兄ちゃんありがとう」
地面に腰を落とし一息つく。すると紅葉がリュックから何かを取り出した。
「これ、遠足のお菓子の余りなんだよ。はい」
そう言って紅葉が俺とゴブにチョコバーを一本ずつ差し出してきた。
「いや、俺はいいよ。紅葉とゴブで食べるといい」
「ダメだよ! お兄ちゃんだって戦ってくれているんだから、食べないと力がでないよ!」
遠慮した俺を紅葉が叱った。しっかりした子だな。でも、確かに何も腹に入れてないと疲れはとれないか。
「ありがとう。味わって食べるよ」
俺は袋を破り、チョコバーを齧った。口の中に広がる甘さが心地よい。栄養が全身に染み渡るようだ。
「飲み物もあると良かったんだけど……」
水筒を振りながら紅葉が言った。どうやら中身は空らしい。これに関しては俺も反省しないといけない。急なことすぎて準備が足りていなかった。本当は俺たちがもっとしっかり準備してくるべきだった。
「ゴブ!」
するとゴブが立ち上がり、どこかに移動を始めた。
「危ないよゴブちゃん!」
「ゴブゥ~」
紅葉に注意されるもゴブは鼻をヒクヒクさせながら進んでいく。
「もしかして何か見つけたのか?」
俺と紅葉はゴブの様子が気になり追いかけた。ゴブが横穴を進むと、何か匂いが変わった気がした。そしてゴブが向かった先には――
「泉か」
そこには水が溜まった場所があり、規模的には泉と言って良い物だった。泉の周囲には草も生えている。
「よく見つけたなゴブ」
「凄いよゴブちゃん!」
「ゴブゥ~♪」
俺と紅葉に撫でられてゴブも嬉しそうだ。
「これで水が飲めるね」
「いや、念の為、毒かどうか確認しないと」
紅葉の喜ぶ気持ちはわかるが、ダンジョンである以上、慎重にことを運んだ方がいいだろう。そう思ったのだが、ゴブがトコトコと泉に向かい手で水を掬って飲んでしまった。
「お、おいゴブ大丈夫か!」
「――ゴブゥ!」
俺の心配を他所にゴブは両手を広げて大丈夫だとアピールしてくれた。
「ゴブ、もしかして毒見をしてくれたのか?」
「ゴブ~」
ゴブが首肯した。こっちの言ってることを理解できる賢いゴブリンだなとは思うけど。
「それについては助かったけど、それで何かあったら俺も紅葉ちゃんも悲しむから、今後は気を付けてくれよ」
「ゴ、ゴブゥ~」
「お兄ちゃんの言う通りだよ。ゴブちゃんに何かあったら私も悲しいから。これからは気を付けてね」
「ゴブゥ~」
どうやらゴブも理解してくれたようだ。とは言え、飲用出来るのがわかったのも大きいな。俺たちもゴブに倣って喉を潤わせ、紅葉も水筒に水を汲んでいた。これで多少は気分も楽になったか。
もう少し休憩したら、出口を目指してまた移動を始めないとな――
でも、一緒に進んでいる紅葉はまだ小学生。このままただ進むのは精神的にキツイだろう。
「紅葉ちゃん大丈夫かい? 疲れたら遠慮なく言ってくれよ」
「う、うん。大丈夫だよ。私、体力には自信があるの」
そう答える紅葉の笑顔はどうみても強がりによるものだ。息も荒くなってきているし疲れが溜まっているのは間違いないだろう。
「ちょっと休もう。このあたりはモンスターの姿もないようだし」
ちょうど幅が広くなってきたところでもある。道は枝分かれになっているから注意は必要だが少しでも休めればまた違うだろう。
「お兄ちゃんありがとう」
地面に腰を落とし一息つく。すると紅葉がリュックから何かを取り出した。
「これ、遠足のお菓子の余りなんだよ。はい」
そう言って紅葉が俺とゴブにチョコバーを一本ずつ差し出してきた。
「いや、俺はいいよ。紅葉とゴブで食べるといい」
「ダメだよ! お兄ちゃんだって戦ってくれているんだから、食べないと力がでないよ!」
遠慮した俺を紅葉が叱った。しっかりした子だな。でも、確かに何も腹に入れてないと疲れはとれないか。
「ありがとう。味わって食べるよ」
俺は袋を破り、チョコバーを齧った。口の中に広がる甘さが心地よい。栄養が全身に染み渡るようだ。
「飲み物もあると良かったんだけど……」
水筒を振りながら紅葉が言った。どうやら中身は空らしい。これに関しては俺も反省しないといけない。急なことすぎて準備が足りていなかった。本当は俺たちがもっとしっかり準備してくるべきだった。
「ゴブ!」
するとゴブが立ち上がり、どこかに移動を始めた。
「危ないよゴブちゃん!」
「ゴブゥ~」
紅葉に注意されるもゴブは鼻をヒクヒクさせながら進んでいく。
「もしかして何か見つけたのか?」
俺と紅葉はゴブの様子が気になり追いかけた。ゴブが横穴を進むと、何か匂いが変わった気がした。そしてゴブが向かった先には――
「泉か」
そこには水が溜まった場所があり、規模的には泉と言って良い物だった。泉の周囲には草も生えている。
「よく見つけたなゴブ」
「凄いよゴブちゃん!」
「ゴブゥ~♪」
俺と紅葉に撫でられてゴブも嬉しそうだ。
「これで水が飲めるね」
「いや、念の為、毒かどうか確認しないと」
紅葉の喜ぶ気持ちはわかるが、ダンジョンである以上、慎重にことを運んだ方がいいだろう。そう思ったのだが、ゴブがトコトコと泉に向かい手で水を掬って飲んでしまった。
「お、おいゴブ大丈夫か!」
「――ゴブゥ!」
俺の心配を他所にゴブは両手を広げて大丈夫だとアピールしてくれた。
「ゴブ、もしかして毒見をしてくれたのか?」
「ゴブ~」
ゴブが首肯した。こっちの言ってることを理解できる賢いゴブリンだなとは思うけど。
「それについては助かったけど、それで何かあったら俺も紅葉ちゃんも悲しむから、今後は気を付けてくれよ」
「ゴ、ゴブゥ~」
「お兄ちゃんの言う通りだよ。ゴブちゃんに何かあったら私も悲しいから。これからは気を付けてね」
「ゴブゥ~」
どうやらゴブも理解してくれたようだ。とは言え、飲用出来るのがわかったのも大きいな。俺たちもゴブに倣って喉を潤わせ、紅葉も水筒に水を汲んでいた。これで多少は気分も楽になったか。
もう少し休憩したら、出口を目指してまた移動を始めないとな――
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ーーーーー
この作品は大変楽しく書けていましたが
49話で終わりとすることにいたしました
完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい
そんな欲求に屈してしまいましたすみません
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