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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第125話 ゴブは悪いゴブリンではない
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「一体何ザマスか! その汚らわしいモンスターは!」
ゴブを指さして怒鳴り散らしているのは健太の母親の大黒だった。相変わらず自己主張の強い格好と声だな――
「ママ、どうして?」
健太が目を丸くさせて呟いた。母親の言動に戸惑っているようだ。
「ダンジョン災害に巻き込まれたと聞いて心配で来たザマス! それなのにこんなモンスターと一緒だなんて、冒険者は何を考えているザマスか!」
「落ち着いて下さいお母様」
荒ぶる大黒相手に香川が静かな口調で話しかけた。興奮状態の大黒を落ち着かせようとしてくれている。
「これが落ち着いていられるザマスか! こんな危険な目に合わせて責任は追求するザマスよ! 慰謝料を請求するザマス!」
香川を指差し大黒が叫んだ。い、慰謝料と来たか。たしかにダンジョン災害で一般人が巻き込まれてはいるけどさ――
「とにかくさっさとその汚らしいモンスターを駆除するザマス! 冒険者はそのためにいるザマス! そこのお前もぼ~っと見てないでさっさと動くザマス!」
「あん? 俺に言ってんのか?」
大黒が命じた相手は熊谷だった。しかし熊谷はゴブが敵ではないことを知っている。何より大黒な傲慢な態度に苛ついている様子だ。
「お前以外に誰がいるザマス! 全く見た目は悪人みたいな面してる癖に、まさかこんなモンスターにビビってるザマスか! これだから冒険者なんていう底辺は! お前らは礼儀も何もなってない野蛮人なんザマスからせめてモンスターでも駆除して人々に貢献するザマス! さぁさっさと動けザマス!」
「てめぇ言わせておけば!」
「お、落ち着け!」
「腹立つおばさんだけど手を出したらダメだよ!」
飛び出そうとした熊谷を中山と愛川が止めていた。今の熊谷からみたらゴブリンよりも大黒の方が駆除すべき相手に見えていることだろう。
それにしてもこいつは、自分の子どもが見ている前でよくこんな醜態を晒せるものだな。
「いい加減にしたらどうだ? 状況も何もわかっていない癖に決めつけが過ぎだろう」
「うるさい! て、お前、前に公園にいた男ザマスね! そうか、お前が健太を危険な目に合わせたザマスね!」
俺が口を挟むと、大黒が唾を飛ばしながらまくし立ててきた。俺のこと覚えられていたか。
「お母様は勘違いされているようですが、彼らは子どもたちを助けてくれた功労者ですよ。そのゴブリンにしてもそうです」
やれやらといった表情で香川が説明してくれた。俺たちのことを功労者だと認めてくれていたんだな。
「そ、そうですよ大黒さん。私もそのゴブリンに助けられたんです。そのゴブリンは良いゴブリンなんです」
更に女性の先生も擁護してくれた。だが大黒の表情は険しい。
「は? 何言ってるザマスか! そんな汚らしいモンスターが良いゴブリンなわけないザマス!」
「ゴブゥ……」
大黒の言葉でゴブが目を伏せて悲しそうな声を上げた。ゴブは大黒の言っている意味を理解しているのかも知れない。
「ワン!」
「ピキィ!」
「マァ!」
そんなゴブを励ますようにモコ、ラム、マールの三匹が寄り添っていた。こんな心優しい仲間が誇らしく思えるよ。
「もうやめてよママ! ゴブは僕たちを助けてくれたんだ! 酷いこと言わないで!」
「け、健太? 貴方まで何を言ってるザマスか?」
「健太くんの言う通りだよ! ゴブちゃんは良いゴブリンなんだからね!」
「悪く言わないでよ!」
「ゴブをイジメたら許さないぞ!」
健太の声を皮切りに子どもたちが一斉に大黒を糾弾した。これは当然だろう。みんなゴブの頑張りを見てくれているんだからな。
「良かったなゴブ。子どもたちはゴブがどれだけ頑張ったかわかってくれているぞ」
「ゴブゥ~♪」
大黒に酷いことを言われ落ち込んでいたゴブも、子どもたちの擁護で笑顔を取り戻してくれたようだ。
「ゴブちゃん、紅葉や子どもたちを助けてくれたいい子なんだね。本当にありがとうね」
「ゴブゥ~」
秋月もゴブのことを理解できたようだ。頭を撫でて優しい笑みを浮かべている。
「み、みんなどうかしてるザマス! こんなモンスターを庇うなんて頭がおかしいザマス!」
「全く随分な言い草なおい」
叫ぶ大黒だが、そこに声が割り込んだ。見ると屈強な男性がこちらに近づいてきていた。
「ギルドマスター――」
「よっ、相変わらず大変な目にあってるみたいだな」
俺が呟くと、二カッと笑ってギルドマスターの小澤が近づいてきた。ここでの登場はすごくありがたい気がするぞ――
ゴブを指さして怒鳴り散らしているのは健太の母親の大黒だった。相変わらず自己主張の強い格好と声だな――
「ママ、どうして?」
健太が目を丸くさせて呟いた。母親の言動に戸惑っているようだ。
「ダンジョン災害に巻き込まれたと聞いて心配で来たザマス! それなのにこんなモンスターと一緒だなんて、冒険者は何を考えているザマスか!」
「落ち着いて下さいお母様」
荒ぶる大黒相手に香川が静かな口調で話しかけた。興奮状態の大黒を落ち着かせようとしてくれている。
「これが落ち着いていられるザマスか! こんな危険な目に合わせて責任は追求するザマスよ! 慰謝料を請求するザマス!」
香川を指差し大黒が叫んだ。い、慰謝料と来たか。たしかにダンジョン災害で一般人が巻き込まれてはいるけどさ――
「とにかくさっさとその汚らしいモンスターを駆除するザマス! 冒険者はそのためにいるザマス! そこのお前もぼ~っと見てないでさっさと動くザマス!」
「あん? 俺に言ってんのか?」
大黒が命じた相手は熊谷だった。しかし熊谷はゴブが敵ではないことを知っている。何より大黒な傲慢な態度に苛ついている様子だ。
「お前以外に誰がいるザマス! 全く見た目は悪人みたいな面してる癖に、まさかこんなモンスターにビビってるザマスか! これだから冒険者なんていう底辺は! お前らは礼儀も何もなってない野蛮人なんザマスからせめてモンスターでも駆除して人々に貢献するザマス! さぁさっさと動けザマス!」
「てめぇ言わせておけば!」
「お、落ち着け!」
「腹立つおばさんだけど手を出したらダメだよ!」
飛び出そうとした熊谷を中山と愛川が止めていた。今の熊谷からみたらゴブリンよりも大黒の方が駆除すべき相手に見えていることだろう。
それにしてもこいつは、自分の子どもが見ている前でよくこんな醜態を晒せるものだな。
「いい加減にしたらどうだ? 状況も何もわかっていない癖に決めつけが過ぎだろう」
「うるさい! て、お前、前に公園にいた男ザマスね! そうか、お前が健太を危険な目に合わせたザマスね!」
俺が口を挟むと、大黒が唾を飛ばしながらまくし立ててきた。俺のこと覚えられていたか。
「お母様は勘違いされているようですが、彼らは子どもたちを助けてくれた功労者ですよ。そのゴブリンにしてもそうです」
やれやらといった表情で香川が説明してくれた。俺たちのことを功労者だと認めてくれていたんだな。
「そ、そうですよ大黒さん。私もそのゴブリンに助けられたんです。そのゴブリンは良いゴブリンなんです」
更に女性の先生も擁護してくれた。だが大黒の表情は険しい。
「は? 何言ってるザマスか! そんな汚らしいモンスターが良いゴブリンなわけないザマス!」
「ゴブゥ……」
大黒の言葉でゴブが目を伏せて悲しそうな声を上げた。ゴブは大黒の言っている意味を理解しているのかも知れない。
「ワン!」
「ピキィ!」
「マァ!」
そんなゴブを励ますようにモコ、ラム、マールの三匹が寄り添っていた。こんな心優しい仲間が誇らしく思えるよ。
「もうやめてよママ! ゴブは僕たちを助けてくれたんだ! 酷いこと言わないで!」
「け、健太? 貴方まで何を言ってるザマスか?」
「健太くんの言う通りだよ! ゴブちゃんは良いゴブリンなんだからね!」
「悪く言わないでよ!」
「ゴブをイジメたら許さないぞ!」
健太の声を皮切りに子どもたちが一斉に大黒を糾弾した。これは当然だろう。みんなゴブの頑張りを見てくれているんだからな。
「良かったなゴブ。子どもたちはゴブがどれだけ頑張ったかわかってくれているぞ」
「ゴブゥ~♪」
大黒に酷いことを言われ落ち込んでいたゴブも、子どもたちの擁護で笑顔を取り戻してくれたようだ。
「ゴブちゃん、紅葉や子どもたちを助けてくれたいい子なんだね。本当にありがとうね」
「ゴブゥ~」
秋月もゴブのことを理解できたようだ。頭を撫でて優しい笑みを浮かべている。
「み、みんなどうかしてるザマス! こんなモンスターを庇うなんて頭がおかしいザマス!」
「全く随分な言い草なおい」
叫ぶ大黒だが、そこに声が割り込んだ。見ると屈強な男性がこちらに近づいてきていた。
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