133 / 190
第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第132話 ダンジョンに戻った翌朝にて
しおりを挟む
俺たちは秋月の車と、楓が運転する車に分乗して帰路についた。すでに夜も遅かったので、送ってもらえて本当に助かった。
帰宅後は秋月や紅葉に「お休み」を伝え、ダンジョンへ戻った途端、俺たちはあっという間に眠りに落ちた。やっぱり、昨日の事件で相当疲れていたんだろう。
外の鳥の声で目を覚ますと、朝の光が差し込むなか、モコ、ゴブ、マール、ラムが俺に抱きつくような形で寝ていた。なかでも新入りのゴブもすっかり馴染んでいて、その寝顔を見てると、本当にゴブリンか?って思うほど可愛い。
さて――昨日は帰ってすぐ寝たから、みんな腹が減ってるはず。朝メシの支度をするか。そう考え、起こさないようにそっと抜け出した。
「そうだ。畑も見ておかなきゃな」
水やりをする前に、軽く様子をチェックすることにした。ダンジョン内に作った畑は今のところ順調に育ってるけど、何があるかわからないからな。
ところが、パッと見には問題なさそうだった畑の近くで、土がモコモコと盛り上がって動き出し、そのまま畑へ近づいていった。かと思うと、育てていた芽のいくつかが土の中に引きずり込まれた。
おいおい、泥棒か? でも人間じゃなさそうだよなぁ。
近くにあった鍬を握りしめながら見守っていると、土の塊がそのまま離れようとする気配がある。やむを得ず、俺は昨日覚えたスキルを使った。
「天地返し!」
威力を抑え目にしつつ、土ごと相手を吹き飛ばす。すると土の中から一匹のモグラ――いや、モグラっぽいモンスターが空中に飛び出してきて、地面にゴロンと転がった。
「モグゥ!?」
地面に落ちたソイツは、目を回して気絶している。普通のモグラにしては大きいが、モンスターとしては小柄な部類かもしれない。少なくとも凶暴な感じではなさそうだ。
それにしてもこいつが畑泥棒の正体か……さて、どうするかな。
「ワン?」
「ゴブゥ?」
「ピキィ?」
「マァ?」
悩んでいると、起き出したモコたちが集まってきた。そろってモグラを覗きこんでる。
「こいつ、畑の芽を抜いて持っていこうとしてたんだ。それで捕まえたんだけど……」
俺が簡単に説明していると、モグラがうっすらと目を開け、びくっと身をすくませた。つぶらな瞳は愛嬌があるけど、こちらを見てすぐに逃げようとする。
「モグぅ~!?」
慌てて地面を掘りはじめたが、力が入らないのか、すぐにバタリと倒れ込んでしまった。
「お、おい大丈夫か!」
「ワン!」
「ゴブゥ!」
「ピキィ!」
「マァ!」
急いで駆け寄ると、モグラは苦しそうにお腹を押さえている。そして――
――グゥ~。
腹の音がはっきり聞こえた。なんだ、こいつ、腹が減っていただけなのか……。思わぬかたちで出会ったモグラだけど、さて、この先どうしたもんかな――。
帰宅後は秋月や紅葉に「お休み」を伝え、ダンジョンへ戻った途端、俺たちはあっという間に眠りに落ちた。やっぱり、昨日の事件で相当疲れていたんだろう。
外の鳥の声で目を覚ますと、朝の光が差し込むなか、モコ、ゴブ、マール、ラムが俺に抱きつくような形で寝ていた。なかでも新入りのゴブもすっかり馴染んでいて、その寝顔を見てると、本当にゴブリンか?って思うほど可愛い。
さて――昨日は帰ってすぐ寝たから、みんな腹が減ってるはず。朝メシの支度をするか。そう考え、起こさないようにそっと抜け出した。
「そうだ。畑も見ておかなきゃな」
水やりをする前に、軽く様子をチェックすることにした。ダンジョン内に作った畑は今のところ順調に育ってるけど、何があるかわからないからな。
ところが、パッと見には問題なさそうだった畑の近くで、土がモコモコと盛り上がって動き出し、そのまま畑へ近づいていった。かと思うと、育てていた芽のいくつかが土の中に引きずり込まれた。
おいおい、泥棒か? でも人間じゃなさそうだよなぁ。
近くにあった鍬を握りしめながら見守っていると、土の塊がそのまま離れようとする気配がある。やむを得ず、俺は昨日覚えたスキルを使った。
「天地返し!」
威力を抑え目にしつつ、土ごと相手を吹き飛ばす。すると土の中から一匹のモグラ――いや、モグラっぽいモンスターが空中に飛び出してきて、地面にゴロンと転がった。
「モグゥ!?」
地面に落ちたソイツは、目を回して気絶している。普通のモグラにしては大きいが、モンスターとしては小柄な部類かもしれない。少なくとも凶暴な感じではなさそうだ。
それにしてもこいつが畑泥棒の正体か……さて、どうするかな。
「ワン?」
「ゴブゥ?」
「ピキィ?」
「マァ?」
悩んでいると、起き出したモコたちが集まってきた。そろってモグラを覗きこんでる。
「こいつ、畑の芽を抜いて持っていこうとしてたんだ。それで捕まえたんだけど……」
俺が簡単に説明していると、モグラがうっすらと目を開け、びくっと身をすくませた。つぶらな瞳は愛嬌があるけど、こちらを見てすぐに逃げようとする。
「モグぅ~!?」
慌てて地面を掘りはじめたが、力が入らないのか、すぐにバタリと倒れ込んでしまった。
「お、おい大丈夫か!」
「ワン!」
「ゴブゥ!」
「ピキィ!」
「マァ!」
急いで駆け寄ると、モグラは苦しそうにお腹を押さえている。そして――
――グゥ~。
腹の音がはっきり聞こえた。なんだ、こいつ、腹が減っていただけなのか……。思わぬかたちで出会ったモグラだけど、さて、この先どうしたもんかな――。
227
あなたにおすすめの小説
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
おばさん冒険者、職場復帰する
神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。
子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。
ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。
さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。
生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。
-----
剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。
一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。
-----
※小説家になろう様にも掲載中。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~
わんた
ファンタジー
「今日中に出ていけ! 半年も家賃を滞納してるんだぞ!」
現代日本にダンジョンとスキルが存在する世界。
渋谷で錬金術師として働いていた裕真は、研究に没頭しすぎて店舗の家賃を払えず、ついに追い出されるハメになった。
私物と素材だけが残された彼に残された選択肢は――“現地販売”の行商スタイル!
「マスター、売ればいいんですよ。死にかけの探索者に、定価よりちょっと高めで」
提案したのは、裕真が自作した人工精霊・ユミだ。
家事万能、事務仕事完璧、なのにちょっとだけ辛辣だが、裕真にとっては何物にも代えがたい家族でありパートナーでもある。
裕真はギルドの後ろ盾、そして常識すらないけれど、素材とスキルとユミがいればきっと大丈夫。
錬金術のスキルだけで社会の荒波を乗り切る。
主人公無双×のんびり錬金スローライフ!
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界カードSHOP『リアのカード工房』本日開店です 〜女神に貰ったカード化スキルは皆を笑顔にさせるギフトでした〜
夢幻の翼
ファンタジー
自分のお店を経営したい!
そんな夢を持つアラサー女子・理愛(リア)はアルバイト中に気を失う。次に気がつけばそこでは平謝りする女神の姿。
死亡理由が故意か過失か分からないままに肉体が無い事を理由に異世界転生を薦められたリアは仕方なしに転生を選択する。
だが、その世界では悪事を働かなければ自由に暮らして良い世界。女神に貰ったスキルを駆使して生前の夢だった店舗経営に乗り出したリア。
少々チートなスキルだけれど皆を笑顔にさせる使い方でたちまち町の人気店に。
商業ギルドのマスターに気に入られていろんな依頼も引き受けながら今日も元気にお店を開く。
異世界カードSHOP『リアのカード工房』本日も開店しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる