親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編

第132話 ダンジョンに戻った翌朝にて

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 俺たちは秋月の車と、楓が運転する車に分乗して帰路についた。すでに夜も遅かったので、送ってもらえて本当に助かった。

 帰宅後は秋月や紅葉に「お休み」を伝え、ダンジョンへ戻った途端、俺たちはあっという間に眠りに落ちた。やっぱり、昨日の事件で相当疲れていたんだろう。

 外の鳥の声で目を覚ますと、朝の光が差し込むなか、モコ、ゴブ、マール、ラムが俺に抱きつくような形で寝ていた。なかでも新入りのゴブもすっかり馴染んでいて、その寝顔を見てると、本当にゴブリンか?って思うほど可愛い。

 さて――昨日は帰ってすぐ寝たから、みんな腹が減ってるはず。朝メシの支度をするか。そう考え、起こさないようにそっと抜け出した。

「そうだ。畑も見ておかなきゃな」

 水やりをする前に、軽く様子をチェックすることにした。ダンジョン内に作った畑は今のところ順調に育ってるけど、何があるかわからないからな。

 ところが、パッと見には問題なさそうだった畑の近くで、土がモコモコと盛り上がって動き出し、そのまま畑へ近づいていった。かと思うと、育てていた芽のいくつかが土の中に引きずり込まれた。

 おいおい、泥棒か? でも人間じゃなさそうだよなぁ。

 近くにあった鍬を握りしめながら見守っていると、土の塊がそのまま離れようとする気配がある。やむを得ず、俺は昨日覚えたスキルを使った。

「天地返し!」

 威力を抑え目にしつつ、土ごと相手を吹き飛ばす。すると土の中から一匹のモグラ――いや、モグラっぽいモンスターが空中に飛び出してきて、地面にゴロンと転がった。

「モグゥ!?」

 地面に落ちたソイツは、目を回して気絶している。普通のモグラにしては大きいが、モンスターとしては小柄な部類かもしれない。少なくとも凶暴な感じではなさそうだ。

 それにしてもこいつが畑泥棒の正体か……さて、どうするかな。

「ワン?」 
「ゴブゥ?」 
「ピキィ?」 
「マァ?」

 悩んでいると、起き出したモコたちが集まってきた。そろってモグラを覗きこんでる。

「こいつ、畑の芽を抜いて持っていこうとしてたんだ。それで捕まえたんだけど……」

 俺が簡単に説明していると、モグラがうっすらと目を開け、びくっと身をすくませた。つぶらな瞳は愛嬌があるけど、こちらを見てすぐに逃げようとする。

「モグぅ~!?」

 慌てて地面を掘りはじめたが、力が入らないのか、すぐにバタリと倒れ込んでしまった。

「お、おい大丈夫か!」 
「ワン!」 
「ゴブゥ!」 
「ピキィ!」 
「マァ!」

 急いで駆け寄ると、モグラは苦しそうにお腹を押さえている。そして――

――グゥ~。

 腹の音がはっきり聞こえた。なんだ、こいつ、腹が減っていただけなのか……。思わぬかたちで出会ったモグラだけど、さて、この先どうしたもんかな――。
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