134 / 190
第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第133話 放置ダンジョンにいたモグラ
しおりを挟む
「お前、お腹が減ってるのか?」
「モグゥ……」
モグラらしき小さなモンスターが、元気のない声で答える。するとモコたちが俺のズボンを引っ張ってきた。
「クゥ~ン……」
「マァ……」
「ゴブゥ……」
「ピキィ……」
みんなウルウルとした瞳でこちらを見上げてる。どうやら、「このモグラを助けてあげてほしい」と言いたいらしい。本当に、弱っている者を見ると放っておけないんだなぁ。
「わかった。ちょうど今から朝食を作るところだったし、ついでにコイツにも食べさせてやろう。少し待っててくれ」
俺の返事に、モコ、ラム、ゴブ、マールが「がんばれ、もうちょっと!」とでも言うようにモグラのまわりで励ましている。モグラは不思議そうに首をかしげてるな。
問題は、モグラが何を食べられるかだ。普通のモグラは肉食らしいが、こいつは俺の畑の芽を食べていたようだし――雑食かもしれない。とりあえず、残っているハムを試してみるか。
「これ、食べられそうか?」
ハムを取り出し、モグラの前へ差し出す。するとモグラは鼻先でクンクンと匂いを嗅ぎ、目でハムをじっと見ている。普通のモグラって視力が弱いって聞くけど、こいつはちゃんと目が見えてるっぽい。
「モグゥ~」
よだれを垂らしながらハムを見ているところを見ると、どうやらいけそうだな。ひと切れ与えてみると――
「よし、食べていいぞ」
「モグゥ!」
俺が言うやいなや、モグラはハムにかぶりついて「ハムハム」と嬉しそうに平らげる。表情からして、相当腹が減ってたんだろうな。
「ワンワン♪」
「ピキィ♪」
「マァ♪」
「ゴブゥ♪」
「モグゥ♪」
モグラがハムを食べられるとわかった途端、みんなが「よかった、よかった」とはしゃぎだす。モグラも楽しそうに応じていて、すでにうちのメンバーに溶け込みつつある気がする。
さて、そろそろ本格的に朝食を作るか。ハムと野菜とパンがあるなら、サンドイッチにするのが簡単だしボリュームも出せる。
まずはダンジョンの簡易キッチン(といっても調理スペースと器具が少しあるだけだが)へ向かう。
洗い桶に溜めた水でレタスを丁寧に洗い、トマトをスライス。塩コショウで軽く下味をつけておく。パンは薄く切ったハムとチーズを合わせるために、軽く焼くのもアリだな。トースター代わりにバーナーで火加減を調整しながら鉄板の上で両面をサッと温める。香ばしい匂いが漂ってきて、俺も腹が減ってきた。
試しに一つ、野菜入りサンドイッチを作ってモグラに渡してみた。
「食べられそうか?」
「モグゥ♪」
器用な前足でサンドイッチをつかみ、もぐもぐと嬉しそうに食べ始める。どうやら野菜もパンも問題なく平気みたいだ。
「よし、なら一気に作るか!」
そう呟くと、俺は大量のパンを切り分け、ハムや野菜を挟んで次々とサンドイッチを仕上げていく。味気ないかなと思いつつ、軽くマヨネーズやバターも使ってみたり。短時間で十数個作ったところで、みんなに配る。
モグラはもちろん、モコ、ラム、マール、ゴブたちも美味しそうにサンドイッチをほおばっている。なかでもモグラが幸せそうに頬をふくらませて食べている姿を見ると、さっきまで腹をすかせて倒れてたとは思えないくらい元気そうだ。
うん、こうして見てると、コイツも昔からいたみたいに馴染んでるな。
そんなことを考えていると、入り口のほうから秋月の声がした。
「ハルさん、起きてますか~?」
「ああ、こっちだよ」
声をかけると、秋月がバタバタとこっちに駆け寄ってきて――
「みんな、おはよ……って、モグラ!?」
「モグゥ?」
秋月はモグラを目にして思わず驚きの声を上げる。逆にモグラのほうも、「誰だろう?」とばかりにきょとんとしている。
まぁ秋月も驚くよな。見たこともないモグラが、俺達と朝食を共にしてるんだから。
とにかく秋月にはきちんと経緯を説明しなきゃいけない。そう思い、俺は手をサッと拭いてから秋月のほうに向き直る――。
「モグゥ……」
モグラらしき小さなモンスターが、元気のない声で答える。するとモコたちが俺のズボンを引っ張ってきた。
「クゥ~ン……」
「マァ……」
「ゴブゥ……」
「ピキィ……」
みんなウルウルとした瞳でこちらを見上げてる。どうやら、「このモグラを助けてあげてほしい」と言いたいらしい。本当に、弱っている者を見ると放っておけないんだなぁ。
「わかった。ちょうど今から朝食を作るところだったし、ついでにコイツにも食べさせてやろう。少し待っててくれ」
俺の返事に、モコ、ラム、ゴブ、マールが「がんばれ、もうちょっと!」とでも言うようにモグラのまわりで励ましている。モグラは不思議そうに首をかしげてるな。
問題は、モグラが何を食べられるかだ。普通のモグラは肉食らしいが、こいつは俺の畑の芽を食べていたようだし――雑食かもしれない。とりあえず、残っているハムを試してみるか。
「これ、食べられそうか?」
ハムを取り出し、モグラの前へ差し出す。するとモグラは鼻先でクンクンと匂いを嗅ぎ、目でハムをじっと見ている。普通のモグラって視力が弱いって聞くけど、こいつはちゃんと目が見えてるっぽい。
「モグゥ~」
よだれを垂らしながらハムを見ているところを見ると、どうやらいけそうだな。ひと切れ与えてみると――
「よし、食べていいぞ」
「モグゥ!」
俺が言うやいなや、モグラはハムにかぶりついて「ハムハム」と嬉しそうに平らげる。表情からして、相当腹が減ってたんだろうな。
「ワンワン♪」
「ピキィ♪」
「マァ♪」
「ゴブゥ♪」
「モグゥ♪」
モグラがハムを食べられるとわかった途端、みんなが「よかった、よかった」とはしゃぎだす。モグラも楽しそうに応じていて、すでにうちのメンバーに溶け込みつつある気がする。
さて、そろそろ本格的に朝食を作るか。ハムと野菜とパンがあるなら、サンドイッチにするのが簡単だしボリュームも出せる。
まずはダンジョンの簡易キッチン(といっても調理スペースと器具が少しあるだけだが)へ向かう。
洗い桶に溜めた水でレタスを丁寧に洗い、トマトをスライス。塩コショウで軽く下味をつけておく。パンは薄く切ったハムとチーズを合わせるために、軽く焼くのもアリだな。トースター代わりにバーナーで火加減を調整しながら鉄板の上で両面をサッと温める。香ばしい匂いが漂ってきて、俺も腹が減ってきた。
試しに一つ、野菜入りサンドイッチを作ってモグラに渡してみた。
「食べられそうか?」
「モグゥ♪」
器用な前足でサンドイッチをつかみ、もぐもぐと嬉しそうに食べ始める。どうやら野菜もパンも問題なく平気みたいだ。
「よし、なら一気に作るか!」
そう呟くと、俺は大量のパンを切り分け、ハムや野菜を挟んで次々とサンドイッチを仕上げていく。味気ないかなと思いつつ、軽くマヨネーズやバターも使ってみたり。短時間で十数個作ったところで、みんなに配る。
モグラはもちろん、モコ、ラム、マール、ゴブたちも美味しそうにサンドイッチをほおばっている。なかでもモグラが幸せそうに頬をふくらませて食べている姿を見ると、さっきまで腹をすかせて倒れてたとは思えないくらい元気そうだ。
うん、こうして見てると、コイツも昔からいたみたいに馴染んでるな。
そんなことを考えていると、入り口のほうから秋月の声がした。
「ハルさん、起きてますか~?」
「ああ、こっちだよ」
声をかけると、秋月がバタバタとこっちに駆け寄ってきて――
「みんな、おはよ……って、モグラ!?」
「モグゥ?」
秋月はモグラを目にして思わず驚きの声を上げる。逆にモグラのほうも、「誰だろう?」とばかりにきょとんとしている。
まぁ秋月も驚くよな。見たこともないモグラが、俺達と朝食を共にしてるんだから。
とにかく秋月にはきちんと経緯を説明しなきゃいけない。そう思い、俺は手をサッと拭いてから秋月のほうに向き直る――。
235
あなたにおすすめの小説
おばさん冒険者、職場復帰する
神田柊子
ファンタジー
アリス(43)は『完全防御の魔女』と呼ばれたA級冒険者。
子育て(子どもの修行)のために母子ふたりで旅をしていたけれど、子どもが父親の元で暮らすことになった。
ひとりになったアリスは、拠点にしていた街に五年ぶりに帰ってくる。
さっそくギルドに顔を出すと昔馴染みのギルドマスターから、ギルド職員のリーナを弟子にしてほしいと頼まれる……。
生活力は低め、戦闘力は高めなアリスおばさんの冒険譚。
-----
剣と魔法の西洋風異世界。転移・転生なし。三人称。
一話ごとで一区切りの、連作短編(の予定)。
-----
※小説家になろう様にも掲載中。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
ダンジョン配信ですよ、我が主 ~いや、貴女が配信したほうが良いような~
志位斗 茂家波
ファンタジー
…ある日突然、世界中にダンジョンと呼ばれる謎のものが出現した。
迷宮、塔、地下世界…そして未知のモンスターに、魔法の道具等、内包する可能性は未知数であり、世界は求めていく。
とはいえ、その情報がどんどん出てくれば、価値も少しづつ薄れるもので…気が付けば、一般向けに配信者が出てきたりと、気軽な存在になっていた。
そんな中である日、小遣い稼ぎとして配信を始めて行おうとしたとある少年が、ダンジョン内で巡り合ってしまった…魔法の道具…もとい、何故かメイドの彼女との運命が、世界を混沌へ堕としこむのだが…
異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました
まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。
ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。
変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。
その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。
恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる