親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編

第157話 モンスターとモンスター

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「ス~……ス~……」

 プールでモンスターや愛川とたっぷり遊んだ風間は、プールサイドのリクライニングチェアに身を預け、心地よい疲労感とともに寝息を立てていた。

「ハルさん、疲れちゃったんだね」

 愛川はそっと風間の髪に触れ、微笑むと立ち上がった。

「そうだ。私、飲み物買ってくるね。皆は何がいいかな?」

 モコ、ラム、マール、モグ、ゴブたちは一斉に愛川の方へ顔を向けた。

『僕ジュースがいいな!』
『お水~お水~』
『紅茶がいいの!』
『スポーツドリンクがあれば――』
『シュワシュワしたのがいいモグ~』

 それぞれの希望が飛び交うが、当然ながら愛川には鳴き声にしか聞こえない。

「あはは、やっぱり言葉はわからないよね」

 そう言いながらも、モンスターたちのジェスチャーを見て愛川は飲み物をなんとなく理解する。

「モコちゃんがジュースで、ラムちゃんがお水。マールちゃんは紅茶、ゴブちゃんはスポーツドリンク、モグちゃんが炭酸ね。ふふっ、皆ほんと賢いね。で、ハルさんは……」

『お茶をよく飲んでるよ~』

 モコが補足するように鳴き、愛川は「うん、了解」と微笑みながらその場を後にした。

『さて、どうする?』

 風間が寝ている中、モンスターたちだけが残された。

『あんまり遠くに行くのは良くないと思うよ』
『僕はまたプールに入りたいな~』

 ラムがプールを見つめ、ぴょんぴょんと跳ねて気持ちを伝える。

『目の届く範囲なら大丈夫だと思うの』
『やった~♪』

 マールの判断に喜んだラムは水に飛び込み、気持ちよさそうにぷかぷかと浮かびながら水面をたゆたった。

『モグはちょっとお昼寝モグ~……』

 遊び疲れたのか、モグは風間の隣にちょこんと座り、彼の腕に寄りかかるように目を閉じていった。

「きゃ~、可愛い~!」
「見て、あのモンスターたち、超キュート!」
「本当、マスコットみたい~!」

 そこへやってきたのは、数人の若い女の子たち。モコたちを囲み、撫でたり、話しかけたりしてキャッキャとはしゃいでいた。モンスターたちも悪い気はせず、愛嬌を振りまいていた。

 だが、その和やかな雰囲気に水を差すように、聞き慣れない言葉が割って入る。

『なんだよこいつら、随分とチビなモンスターばっかじゃねぇか』
『弱っちそうだな。どこの貧弱に飼われたんだ?』
『喰っても不味そうだぜ、ブヒヒヒヒッ』

 その声に振り向くと、そこにはコボルト、ゴブリン、オークの三体が立っていた。明らかに敵意を隠さぬ目で、モコたちを見下ろしている。

「え、なにこいつら……」
「ちょっと雰囲気、やばくない?」

 人間の少女たちは意味こそ分からずとも、不気味な気配を察して顔を曇らせる。

『ギヒッ、そっちのメスも中々いけるじゃねぇか。なぁ、ちょっと俺らと子作りしない?』

 ゴブリンが女の子たちに声をかけ、卑しげな笑みを浮かべた。言葉は通じていないが、露骨なその目つきに彼女たちは怯み、そそくさとその場を離れていく。

「ごめんね、皆」

 離れ際に謝罪を口にする女の子。その姿を見ながらゴブリンが舌打ちする。

『チッ、せっかく孕ませてやろうと思ったのによ』
『下品なこと言うなっ!』

 モコが怒鳴ると、コボルトが鼻を鳴らしてその頭を押さえつけた。

『ちびが調子乗ってんじゃねぇぞ』
『うがーっ!』

 モコが手足をばたつかせて抗議するも、体格差はいかんともし難い。ゲラゲラと笑う三匹。

『その手を離せよ』

 ゴブが冷静にコボルトの腕をはたき落とした。

『モコは俺の大事な仲間だ。ふざけた真似はやめろ』
『何が仲間だよ。ゴブリン崩れのクセに生意気な!』

 もう一体のゴブリンが拳を振るうが、ゴブはそれを軽く受け止める。

『確かに俺はお前らと違うようだが、下品なお前らに似なくて良かったと思ってるよ』
『このっ……!』

 激昂するゴブリンに、突然水がばしゃっと飛んだ。

『ギャッ!? 目に水が!』
『僕の友達をいじめるのは許さないぞ!』

 ラムが水を飛ばして怒っていた。ぷるぷると全身を震わせながら、憤る様が滑稽でもあり、頼もしくもある。

『いや……いじめられたつもりはないけどな……』

 ゴブが苦笑しながらも、嬉しそうに仲間たちを見渡す。

 そんな様子を、オークとコボルトが憎々しげに見つめていた――
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