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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第165話 噂の真相
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嵐舞の表情がさっと険しくなり、隣にいた流麗も目を伏せた。あきらかに「獅王」の名に反応している。
「やっぱり、知ってるんだな。獅王って男のこと」
俺が口を開くと、嵐舞がふうっと小さく息を吐いてから頷いた。
「ああ。モンスターバトルの界隈じゃ、知らない方が珍しいさ。あの男の噂は──悪い意味で有名だよ」
「やっぱり……あの時の態度も、どうにも普通じゃなかったから」
愛川が眉を寄せ、膝に乗せていたマールの頭をそっと撫でる。モンスターたちも空気を察してか、大人しくなっていた。
「獅王は実力そのものは間違いない。普通にやればダイヤモンドランクには余裕で上がれるくらいの腕前がある……らしい」
そう口にしたのは流麗だった。言葉を選ぶように、慎重に話す。
「でも実際にはプラチナランクに留まってるんだ。八百長だとか、わざと負けてるとか、そういう噂が絶えない」
「何でそんなこと……」
俺の疑問に、今度は嵐舞が肩をすくめた。
「さあね。ただ、プラチナランクのままだと『下の奴ら』を相手にできるからな。圧倒的な力で潰すって構図を保ちやすいって話もある」
「要するに、自分を持ち上げるために弱い相手を選んで叩くってことか」
「そう。しかも悪いことに、そういう試合ばかり好む観客層もいるんだよ。派手な演出で圧勝する姿が“ショー”として受けてる。特にネット配信だとね」
「最低ですね……」
愛川が呟き、手元のスポーツドリンクをぎゅっと握る。
「オレが観た試合だと、もう勝ちが決まった相手にモンスターを何度も叩きつけたりしてた。実況も苦笑いして、止めが入るのを待ってる感じだったな」
「サラちゃんも怖がってたもんね。獅王の使役モンスターが勝手に暴れてるように見える時もあったし」
「それって……使役モンスターとの信頼関係も築けてないってことか?」
「かもしれない。あるいは、そういう風にテイムしてるのかも。力でねじ伏せて従わせるタイプだな。特にあいつのメインモンスターは、凶暴で有名だ」
話を聞きながら、モコやラム、ゴブたちを見やった。皆、俺の膝元やソファに並んで大人しく話を聞いている。言葉は通じなくても、雰囲気でわかってるのかもしれない。
「でも、こういう話ってあくまで“噂”だし、確証はない。あいつは巧妙だから、外から見える範囲ではギリギリのラインを越えないようにしてる」
「だからこそ厄介なんだよね……僕たちが直接何かされたわけじゃないし、強く言えないのももどかしい」
流麗が切なそうにサラの背を撫でると、サラマンダーは小さく「クワァ」と鳴いた。
「……貴重な話、ありがとう。あいつのことは、俺もちゃんと心に留めておくよ」
「気をつけな。あいつは、気に入らない相手には本当に執拗だ」
「はいっ。私も気をつけます!」
愛川が強く頷く。その表情にさっきまでの曇りはなく、まっすぐ前を見据えていた。
その後は話題を少し切り替えつつ、流麗と嵐舞が紹介してくれたモンスターバトルのパンフレットを見せてもらったり、他の競技場の話を聞かせてもらった。
最後に冒険者アプリを立ち上げて、連絡先を交換することになった。
「これで何かあったらすぐに連絡できるね」
「うん。また会えると嬉しいな」
「今度は一緒にモンスターバトルの観戦とかも行きたいな!」
「それ、面白そうだな。皆も一緒に行けたら最高だ」
「ワンワン!」
「ピキィ!」
「ゴブゥ♪」
「モグゥ~」
「マァ!」
俺たちはスポーツクラブを後にした。外に出ると夕暮れが差し始めていて、空の端がうっすらと茜に染まりつつあった。
色々あったけど、いい一日だった――そう思いながら、俺は皆の頭を撫でて、帰路についた。
「やっぱり、知ってるんだな。獅王って男のこと」
俺が口を開くと、嵐舞がふうっと小さく息を吐いてから頷いた。
「ああ。モンスターバトルの界隈じゃ、知らない方が珍しいさ。あの男の噂は──悪い意味で有名だよ」
「やっぱり……あの時の態度も、どうにも普通じゃなかったから」
愛川が眉を寄せ、膝に乗せていたマールの頭をそっと撫でる。モンスターたちも空気を察してか、大人しくなっていた。
「獅王は実力そのものは間違いない。普通にやればダイヤモンドランクには余裕で上がれるくらいの腕前がある……らしい」
そう口にしたのは流麗だった。言葉を選ぶように、慎重に話す。
「でも実際にはプラチナランクに留まってるんだ。八百長だとか、わざと負けてるとか、そういう噂が絶えない」
「何でそんなこと……」
俺の疑問に、今度は嵐舞が肩をすくめた。
「さあね。ただ、プラチナランクのままだと『下の奴ら』を相手にできるからな。圧倒的な力で潰すって構図を保ちやすいって話もある」
「要するに、自分を持ち上げるために弱い相手を選んで叩くってことか」
「そう。しかも悪いことに、そういう試合ばかり好む観客層もいるんだよ。派手な演出で圧勝する姿が“ショー”として受けてる。特にネット配信だとね」
「最低ですね……」
愛川が呟き、手元のスポーツドリンクをぎゅっと握る。
「オレが観た試合だと、もう勝ちが決まった相手にモンスターを何度も叩きつけたりしてた。実況も苦笑いして、止めが入るのを待ってる感じだったな」
「サラちゃんも怖がってたもんね。獅王の使役モンスターが勝手に暴れてるように見える時もあったし」
「それって……使役モンスターとの信頼関係も築けてないってことか?」
「かもしれない。あるいは、そういう風にテイムしてるのかも。力でねじ伏せて従わせるタイプだな。特にあいつのメインモンスターは、凶暴で有名だ」
話を聞きながら、モコやラム、ゴブたちを見やった。皆、俺の膝元やソファに並んで大人しく話を聞いている。言葉は通じなくても、雰囲気でわかってるのかもしれない。
「でも、こういう話ってあくまで“噂”だし、確証はない。あいつは巧妙だから、外から見える範囲ではギリギリのラインを越えないようにしてる」
「だからこそ厄介なんだよね……僕たちが直接何かされたわけじゃないし、強く言えないのももどかしい」
流麗が切なそうにサラの背を撫でると、サラマンダーは小さく「クワァ」と鳴いた。
「……貴重な話、ありがとう。あいつのことは、俺もちゃんと心に留めておくよ」
「気をつけな。あいつは、気に入らない相手には本当に執拗だ」
「はいっ。私も気をつけます!」
愛川が強く頷く。その表情にさっきまでの曇りはなく、まっすぐ前を見据えていた。
その後は話題を少し切り替えつつ、流麗と嵐舞が紹介してくれたモンスターバトルのパンフレットを見せてもらったり、他の競技場の話を聞かせてもらった。
最後に冒険者アプリを立ち上げて、連絡先を交換することになった。
「これで何かあったらすぐに連絡できるね」
「うん。また会えると嬉しいな」
「今度は一緒にモンスターバトルの観戦とかも行きたいな!」
「それ、面白そうだな。皆も一緒に行けたら最高だ」
「ワンワン!」
「ピキィ!」
「ゴブゥ♪」
「モグゥ~」
「マァ!」
俺たちはスポーツクラブを後にした。外に出ると夕暮れが差し始めていて、空の端がうっすらと茜に染まりつつあった。
色々あったけど、いい一日だった――そう思いながら、俺は皆の頭を撫でて、帰路についた。
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