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第三章 放置ダンジョンで冒険者暮らし編
第167話 皆でお祝い♪
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「ごめんね、皆待ったかな?」
「秋月――おめでとう!」
秋月がやってきたタイミングで、俺たちは一斉にクラッカーを鳴らした。パンッと乾いた音が響き、色とりどりの紙吹雪が舞う中で、秋月は呆けた顔を浮かべていた。
「え、と……」
「ハハッ。皆で秋月のこと祝えたらと思ってさ」
「ワンッ♪」
「ピキィ♪」
「マァ~♪」
「モグゥ♪」
「ゴブゥ♪」
俺の言葉に合わせるように、モコ、ラム、マール、モグ、ゴブが音楽に乗るかのように身体を揺らし、楽しげな雰囲気で秋月を歓迎する。
秋月の目が潤み、泣き笑いのような表情になった。
「皆ありがとう。でも、大変だったんじゃ?」
「そこはほら。ここにいる帝が手伝ってくれたんだよ」
少し距離を取っていた帝を引っ張ってきて、秋月に紹介する。
「そうなんだね。ありがとう帝くん!」
「別に、ついでにやっただけだ」
帝は照れ臭そうに頬をかきながら視線をそらした。その仕草に、今日の準備で少し距離が縮まった気がして嬉しくなる。
「この料理も皆で?」
「おう! 魚は帝が提供してくれたんだ。皆で協力して作ったんだぜ。ちょっとしたパーティーみたいだろ?」
「うん! でもゴブちゃん、フフッ似合ってるよ」
秋月に頭を撫でられ、ゴブは鼻眼鏡をかけたまま嬉しそうに目を細めた。三角帽子を被ったモコたちも誇らしげに胸を張っている。
テーブルの上には、焼き魚の香ばしい匂いが漂い、モグが一生懸命並べた野菜の付け合わせが彩りを添えていた。ラムは冷たいゼリー風のフルーツポンチの準備も手伝ってくれた。涼しげな見た目に秋月も驚いていた。
「これ、ラムちゃんも一緒に? すごく綺麗」
「ピキィ~♪」
ラムが得意げに揺れている。
和やかな空気の中、俺たちは秋月の冒険者登録完了を祝って、しばし賑やかに食事を楽しんだ。
「でも、今思えば楓師範もよく許してくれたよな」
「師範、あの強烈な親父さんか」
俺の言葉に帝が後頭部をさすりながら応じる。あのとき一緒に秋月の実家で食事したことを思い出しているらしい。
「そう。秋月が冒険者になるのを前は反対していたんだよな」
「……その気持ちはわからなくもない。女には危険な目にあってほしくないもんだろう」
帝がどこか遠い目をして呟く。彼の姉が冒険者であることも影響しているのかもしれない。
「最初はね、お父さん大反対だったんだ。でも、お母さんが私の気持ちも尊重しなさいって言ってくれてね。最終的には腕ひしぎ十字固めで説得してくれたの」
「そ、そうなんだな」
「――あの細身でそんなに強いのかよ、あの母親」
帝が驚きの声を上げる。俺は前に月見さんの強さを目にしたからな。その事がなければ、同じ反応をしたかもしれない。
「さて――」
食事が落ち着いてきた頃、帝が椅子から立ち上がった。
「どうしたんだ?」
「帰るんだよ」
「もうか? もっとゆっくりしていけばいいのに」
「ワン!」
「ピキィ!」
「マァ?」
「モグゥ?」
「ゴブッ!」
帝が帰ると言い出すと、モンスターたちも寂しそうな声を上げた。
「俺はそこまで野暮じゃねぇよ。姉貴にも邪魔すんなって言われてるしな」
「へ?」
帝の言葉に秋月が目を丸くする。頬がわずかに赤くなっているのは気のせいか?
「おい帝、別に俺たちはそんなんじゃ――」
「わかったわかった。じゃあな」
手をひらひらさせて帰っていく帝。残された俺と秋月の間には、何とも気まずい空気が流れた。
「ま、全く何を勘違いしてるんだろうなあいつは。ハハッ」
「あはは――そ、そうだ! 皆は今日は何していたの?」
俺が気まずさをごまかすように言うと、秋月も少し慌てて話題を変えてきた。
――だけど、今日といえば愛川と食事して、スポーツクラブに行って、流麗や嵐舞と出会って……
あれ、これって言って大丈夫なやつか? い、いやいや問題ないだろう! 何焦ってるんだ俺は! そうだ、なんてことはないんだから、素直に話せばいいだけなんだよ――
「秋月――おめでとう!」
秋月がやってきたタイミングで、俺たちは一斉にクラッカーを鳴らした。パンッと乾いた音が響き、色とりどりの紙吹雪が舞う中で、秋月は呆けた顔を浮かべていた。
「え、と……」
「ハハッ。皆で秋月のこと祝えたらと思ってさ」
「ワンッ♪」
「ピキィ♪」
「マァ~♪」
「モグゥ♪」
「ゴブゥ♪」
俺の言葉に合わせるように、モコ、ラム、マール、モグ、ゴブが音楽に乗るかのように身体を揺らし、楽しげな雰囲気で秋月を歓迎する。
秋月の目が潤み、泣き笑いのような表情になった。
「皆ありがとう。でも、大変だったんじゃ?」
「そこはほら。ここにいる帝が手伝ってくれたんだよ」
少し距離を取っていた帝を引っ張ってきて、秋月に紹介する。
「そうなんだね。ありがとう帝くん!」
「別に、ついでにやっただけだ」
帝は照れ臭そうに頬をかきながら視線をそらした。その仕草に、今日の準備で少し距離が縮まった気がして嬉しくなる。
「この料理も皆で?」
「おう! 魚は帝が提供してくれたんだ。皆で協力して作ったんだぜ。ちょっとしたパーティーみたいだろ?」
「うん! でもゴブちゃん、フフッ似合ってるよ」
秋月に頭を撫でられ、ゴブは鼻眼鏡をかけたまま嬉しそうに目を細めた。三角帽子を被ったモコたちも誇らしげに胸を張っている。
テーブルの上には、焼き魚の香ばしい匂いが漂い、モグが一生懸命並べた野菜の付け合わせが彩りを添えていた。ラムは冷たいゼリー風のフルーツポンチの準備も手伝ってくれた。涼しげな見た目に秋月も驚いていた。
「これ、ラムちゃんも一緒に? すごく綺麗」
「ピキィ~♪」
ラムが得意げに揺れている。
和やかな空気の中、俺たちは秋月の冒険者登録完了を祝って、しばし賑やかに食事を楽しんだ。
「でも、今思えば楓師範もよく許してくれたよな」
「師範、あの強烈な親父さんか」
俺の言葉に帝が後頭部をさすりながら応じる。あのとき一緒に秋月の実家で食事したことを思い出しているらしい。
「そう。秋月が冒険者になるのを前は反対していたんだよな」
「……その気持ちはわからなくもない。女には危険な目にあってほしくないもんだろう」
帝がどこか遠い目をして呟く。彼の姉が冒険者であることも影響しているのかもしれない。
「最初はね、お父さん大反対だったんだ。でも、お母さんが私の気持ちも尊重しなさいって言ってくれてね。最終的には腕ひしぎ十字固めで説得してくれたの」
「そ、そうなんだな」
「――あの細身でそんなに強いのかよ、あの母親」
帝が驚きの声を上げる。俺は前に月見さんの強さを目にしたからな。その事がなければ、同じ反応をしたかもしれない。
「さて――」
食事が落ち着いてきた頃、帝が椅子から立ち上がった。
「どうしたんだ?」
「帰るんだよ」
「もうか? もっとゆっくりしていけばいいのに」
「ワン!」
「ピキィ!」
「マァ?」
「モグゥ?」
「ゴブッ!」
帝が帰ると言い出すと、モンスターたちも寂しそうな声を上げた。
「俺はそこまで野暮じゃねぇよ。姉貴にも邪魔すんなって言われてるしな」
「へ?」
帝の言葉に秋月が目を丸くする。頬がわずかに赤くなっているのは気のせいか?
「おい帝、別に俺たちはそんなんじゃ――」
「わかったわかった。じゃあな」
手をひらひらさせて帰っていく帝。残された俺と秋月の間には、何とも気まずい空気が流れた。
「ま、全く何を勘違いしてるんだろうなあいつは。ハハッ」
「あはは――そ、そうだ! 皆は今日は何していたの?」
俺が気まずさをごまかすように言うと、秋月も少し慌てて話題を変えてきた。
――だけど、今日といえば愛川と食事して、スポーツクラブに行って、流麗や嵐舞と出会って……
あれ、これって言って大丈夫なやつか? い、いやいや問題ないだろう! 何焦ってるんだ俺は! そうだ、なんてことはないんだから、素直に話せばいいだけなんだよ――
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