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1C-試行と結果
1C-06 家族の期待
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午前中は実家の店の手伝い。
午後は魔導具店で店番をしながら、ポーション作りと保存・劣化の改善に取り組む日々。
気づけば生活の半分以上が魔術と薬草に染まっていた
夕食時、家族が揃った食卓で、両親から陶器材料の調達の報告があった。
「レッド。ここ二週間の間に近隣の商人に声をかけて、粘土やきめ細かい石、釉薬に使えそうなものを集めてもらった。試してみてくれ」
「早かったですね。もう少し時間がかかると思ってました」
正直、ポーション作りと魔力操作に集中しすぎて、陶器の件はすっかり忘れていた。
魔導具店の仕事に全振りしていたのは、黙っておこう。
「領内だからな。商人ギルドの連中に声をかけて、ピレネ村とマーロ村の石を入手してもらった。パール領の産物だ。西の山の方で採れる」
父が現物を出してくれたので、品定めをする。
「ピレネ村の石は灰色~白色に近いですね。マーロ村はより灰色。どちらも砕けば細かくなりそうです」
ハンマーで軽く叩き、物性を確認する。
確かに、陶器の原料としては悪くない。
「原料の入手まではギルドの伝手でできる。問題は、そこからの作成だよ」
「形が悪かったり、歩留まりが悪かったりして、家庭用にしかならないわね。あれでは」
以前にも、領主付きの職人や商人ギルドが商品化を検討していたらしい。
母も商人の目で見て、現状の品は売り物にはならないと判断しているようだ。
「実は、あそこに飾ってある皿は、他領で製造された貴族用の陶器だな。親父から昔に譲ってもらった」
父が壁から皿を取り、眺める。
灰色がかった素地に、緻密な幾何学文様が青の色調で丁寧に描かれている。
職人技が光る一品。
持つと重量があり、素地は厚い。
持ち上げて食べる文化がないため、これで問題ないらしい。
裏には、領と職人の名前が刻まれていた。
そうだ、【物質鑑定】が使えるのを思い出す。
【陶器。緻密な絵柄が特徴的】
…参考にならなかった。
仕方がない。観察して絞っていくしかない。
これは陶器。
低温で焼いて素焼きとし、絵付けと釉薬を施して本焼きする。
八百~千度くらいだったか
ろくろで作ったような精度だが、魔術でも可能かもしれない。
「特に絵付けに技術を感じますね。見せつけているような印象です」
「貴族は職人を囲い込んで援助している。技術の流出は非常に少ない。我々商人が知っているのは、原材料と大まかな作り方くらいだ」
「確か、パール家が他領から流れてきた絵付け職人を確保したと聞いたわ。ギルド経由だったかしら。専門が絵付けだから、あまり進展しないってお義父さんがぼやいていたわね」
その後は、両親が流行の装飾や売れ筋の話で盛り上がっていた。
このあたりは、任せておこう。
「いただいた材料で、明日いくつか試作品を作ってみます。既存品と競合しないように考えてみますね」
この家族と村社会に溶け込むには、まずは両親の信頼を得ること。
期待に応えて居場所を確保しなければ、今後が危うい。
せっかく頂いた材料。無駄にはできない。
魔力訓練にもなる。
一石二鳥の手伝いとして、陶器作りに再び向き合うことにした。
午後は魔導具店で店番をしながら、ポーション作りと保存・劣化の改善に取り組む日々。
気づけば生活の半分以上が魔術と薬草に染まっていた
夕食時、家族が揃った食卓で、両親から陶器材料の調達の報告があった。
「レッド。ここ二週間の間に近隣の商人に声をかけて、粘土やきめ細かい石、釉薬に使えそうなものを集めてもらった。試してみてくれ」
「早かったですね。もう少し時間がかかると思ってました」
正直、ポーション作りと魔力操作に集中しすぎて、陶器の件はすっかり忘れていた。
魔導具店の仕事に全振りしていたのは、黙っておこう。
「領内だからな。商人ギルドの連中に声をかけて、ピレネ村とマーロ村の石を入手してもらった。パール領の産物だ。西の山の方で採れる」
父が現物を出してくれたので、品定めをする。
「ピレネ村の石は灰色~白色に近いですね。マーロ村はより灰色。どちらも砕けば細かくなりそうです」
ハンマーで軽く叩き、物性を確認する。
確かに、陶器の原料としては悪くない。
「原料の入手まではギルドの伝手でできる。問題は、そこからの作成だよ」
「形が悪かったり、歩留まりが悪かったりして、家庭用にしかならないわね。あれでは」
以前にも、領主付きの職人や商人ギルドが商品化を検討していたらしい。
母も商人の目で見て、現状の品は売り物にはならないと判断しているようだ。
「実は、あそこに飾ってある皿は、他領で製造された貴族用の陶器だな。親父から昔に譲ってもらった」
父が壁から皿を取り、眺める。
灰色がかった素地に、緻密な幾何学文様が青の色調で丁寧に描かれている。
職人技が光る一品。
持つと重量があり、素地は厚い。
持ち上げて食べる文化がないため、これで問題ないらしい。
裏には、領と職人の名前が刻まれていた。
そうだ、【物質鑑定】が使えるのを思い出す。
【陶器。緻密な絵柄が特徴的】
…参考にならなかった。
仕方がない。観察して絞っていくしかない。
これは陶器。
低温で焼いて素焼きとし、絵付けと釉薬を施して本焼きする。
八百~千度くらいだったか
ろくろで作ったような精度だが、魔術でも可能かもしれない。
「特に絵付けに技術を感じますね。見せつけているような印象です」
「貴族は職人を囲い込んで援助している。技術の流出は非常に少ない。我々商人が知っているのは、原材料と大まかな作り方くらいだ」
「確か、パール家が他領から流れてきた絵付け職人を確保したと聞いたわ。ギルド経由だったかしら。専門が絵付けだから、あまり進展しないってお義父さんがぼやいていたわね」
その後は、両親が流行の装飾や売れ筋の話で盛り上がっていた。
このあたりは、任せておこう。
「いただいた材料で、明日いくつか試作品を作ってみます。既存品と競合しないように考えてみますね」
この家族と村社会に溶け込むには、まずは両親の信頼を得ること。
期待に応えて居場所を確保しなければ、今後が危うい。
せっかく頂いた材料。無駄にはできない。
魔力訓練にもなる。
一石二鳥の手伝いとして、陶器作りに再び向き合うことにした。
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