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1G-酒精と層菓
1G-19 菓子の価値
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午後になり、パラケルのところへ向かった。両親が外出しているので店を開け続けられず、午後のベルナル商店は閉めても良いとのことだった。パラケルは上機嫌で、妖精の二人は疲れたのかソファに身を預けて眠っていた。
「おお、レッドか。妖精達から聞いたか?三日後に主に会いに行くぞ」
「大丈夫なんですか?あんなことをして」
「なあに、いつものおふざけだ。ちょいと刺激をした方が彼女らも楽しめると思ってな」
パラケルはニヤリと笑う。まるで前科持ちの常習犯そのものだ。
「知りませんよ、怒られても」
「今回は念のためエリスも同伴だ。どうにでもなるだろう。保険付きだ」
「……で、作ったものはあれで足りますか?」
「ポーション類は不要だ。ハイポーションは城郭都市の魔導師ギルドで量産体制が整いつつある。領主一族も期待しているし、食品はエリス経由で領主から出される。交易品もあるだろう。この間作ったアクアヴィーテも十分だ。足りないのは菓子だな」
「昨日作った分はホールの四分の三しか残ってませんよ。食べましたからね。どのくらい必要なんです?」
「エルフの里は総勢百人ほどだ。氾濫の対策はエルフ全体の働きがあったからこそ成し遂げられた。ホーミィー村として感謝を伝えたい。村長もそう言っている。クリスプスは一人一つ。ストラタムはホール1個で8人分だろう?10等分にすれば10個も作れば足りるのではないか?」
「簡単に言いますね……ちょっと計算してみます」
#####
――材料の目算――
・ 目標
a)クリスプス用生地:100枚
b)ストラタム用生地:12層×10ホール=120枚
合計220枚
・ 必要材料(概算)
a)小麦粉:約6kg
b)砂糖:約1kg
c) 卵:約60個
d) 羊乳:約20L
e) バニラチンキ:約3mL
#####
律速は羊乳と卵だ。羊乳は日に10L取れると母から聞いているので確保可能だが、卵60個は産卵期を外れており入手が難しい。
「全然足りないじゃないか!また卵と羊乳を馬鹿みたいに使うな。羊乳はなんとかなるが、卵60個は到底無理だ」
「産卵期から外れてますからね。貴重品なんです」
「計画変更だな。どうすればいい?」
「全員に渡すなら、ストラタムを一口大に切って数を増やすしかありません。クリスプスも型を使って小さめに均一化しましょう。無駄を省くしかないです」
「そうだな。生産者のところに直接抑えに行くしかない」
パラケルは村の相談役として農家へ向かい、思いのほか早く戻ってきた。両親を伴って。
「レッド。お前の両親は流石だな。もう交渉まで済んでいたぞ」
「売れそうなものは抑えて確保。商人の基本ですから」
「全量買い取りの合意をもらったわ。前金も払ってね。卵も拾えるだけ確保してきたの」
さすが父と母。30個ほどの卵を確保してきた。今シーズンはこれで最後らしいが、しばらく大丈夫だ。
「これで半量は確保できたな。ストラタムを減らせばなんとかなる」
父は商人の顔でパラケルに問う。
「エルフの里に持っていくのだろう?領主には請求するよな」
「ああ、村長経由でな。小僧、クリスプスストラタムにはいくらの値をつける?」
商人のOJTが始まった。ポーションは銀貨30枚、ハイポーションは金貨30枚で売れた。原料から考えてホールで銀貨50枚かと思ったが――
「ホールで銀貨50枚でしょうか?」
「「「甘いな(わよ)!」」」
三人から同時にツッコミが飛ぶ。
「[界上]のレシピを使い、錬金素材を特殊な蒸留酒で香り付けしている。さらに体力・強精の効能を持つ菓子だぞ?1/8ピースで銀貨100枚は固い」
つまりホールで銀貨800枚。父も母も同意見だった。
「体力・強精がつく菓子など聞いたことがない。市場に出すなら考えた方がいい」
「錬金素材を食品に掛け合わせるなんて普通はやらないわ」
「毒性が強くなるからな。食べられなくなる」
「これは貴族案件だな。錬金素材でないバニラエッセンスでお願いしたい」
「通常のバニラで作ったものが1ピース銀貨50枚。ブラックバニラ入りなら銀貨100枚だろう」
――なるほど。こちらの菓子は高級品。食品と錬金素材を合わせないのは、毒性が生じる危険があるからだったのか。
*****
OJT:On-the-Job Training 実際の業務を通じて、必要な知識やスキルを指導する育成手法を言います。
「おお、レッドか。妖精達から聞いたか?三日後に主に会いに行くぞ」
「大丈夫なんですか?あんなことをして」
「なあに、いつものおふざけだ。ちょいと刺激をした方が彼女らも楽しめると思ってな」
パラケルはニヤリと笑う。まるで前科持ちの常習犯そのものだ。
「知りませんよ、怒られても」
「今回は念のためエリスも同伴だ。どうにでもなるだろう。保険付きだ」
「……で、作ったものはあれで足りますか?」
「ポーション類は不要だ。ハイポーションは城郭都市の魔導師ギルドで量産体制が整いつつある。領主一族も期待しているし、食品はエリス経由で領主から出される。交易品もあるだろう。この間作ったアクアヴィーテも十分だ。足りないのは菓子だな」
「昨日作った分はホールの四分の三しか残ってませんよ。食べましたからね。どのくらい必要なんです?」
「エルフの里は総勢百人ほどだ。氾濫の対策はエルフ全体の働きがあったからこそ成し遂げられた。ホーミィー村として感謝を伝えたい。村長もそう言っている。クリスプスは一人一つ。ストラタムはホール1個で8人分だろう?10等分にすれば10個も作れば足りるのではないか?」
「簡単に言いますね……ちょっと計算してみます」
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――材料の目算――
・ 目標
a)クリスプス用生地:100枚
b)ストラタム用生地:12層×10ホール=120枚
合計220枚
・ 必要材料(概算)
a)小麦粉:約6kg
b)砂糖:約1kg
c) 卵:約60個
d) 羊乳:約20L
e) バニラチンキ:約3mL
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律速は羊乳と卵だ。羊乳は日に10L取れると母から聞いているので確保可能だが、卵60個は産卵期を外れており入手が難しい。
「全然足りないじゃないか!また卵と羊乳を馬鹿みたいに使うな。羊乳はなんとかなるが、卵60個は到底無理だ」
「産卵期から外れてますからね。貴重品なんです」
「計画変更だな。どうすればいい?」
「全員に渡すなら、ストラタムを一口大に切って数を増やすしかありません。クリスプスも型を使って小さめに均一化しましょう。無駄を省くしかないです」
「そうだな。生産者のところに直接抑えに行くしかない」
パラケルは村の相談役として農家へ向かい、思いのほか早く戻ってきた。両親を伴って。
「レッド。お前の両親は流石だな。もう交渉まで済んでいたぞ」
「売れそうなものは抑えて確保。商人の基本ですから」
「全量買い取りの合意をもらったわ。前金も払ってね。卵も拾えるだけ確保してきたの」
さすが父と母。30個ほどの卵を確保してきた。今シーズンはこれで最後らしいが、しばらく大丈夫だ。
「これで半量は確保できたな。ストラタムを減らせばなんとかなる」
父は商人の顔でパラケルに問う。
「エルフの里に持っていくのだろう?領主には請求するよな」
「ああ、村長経由でな。小僧、クリスプスストラタムにはいくらの値をつける?」
商人のOJTが始まった。ポーションは銀貨30枚、ハイポーションは金貨30枚で売れた。原料から考えてホールで銀貨50枚かと思ったが――
「ホールで銀貨50枚でしょうか?」
「「「甘いな(わよ)!」」」
三人から同時にツッコミが飛ぶ。
「[界上]のレシピを使い、錬金素材を特殊な蒸留酒で香り付けしている。さらに体力・強精の効能を持つ菓子だぞ?1/8ピースで銀貨100枚は固い」
つまりホールで銀貨800枚。父も母も同意見だった。
「体力・強精がつく菓子など聞いたことがない。市場に出すなら考えた方がいい」
「錬金素材を食品に掛け合わせるなんて普通はやらないわ」
「毒性が強くなるからな。食べられなくなる」
「これは貴族案件だな。錬金素材でないバニラエッセンスでお願いしたい」
「通常のバニラで作ったものが1ピース銀貨50枚。ブラックバニラ入りなら銀貨100枚だろう」
――なるほど。こちらの菓子は高級品。食品と錬金素材を合わせないのは、毒性が生じる危険があるからだったのか。
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OJT:On-the-Job Training 実際の業務を通じて、必要な知識やスキルを指導する育成手法を言います。
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